2016年11月10日木曜日

千葉県でのイソヒヨドリの内陸進出・中間報告

イソヒヨドリは名前のとおり、日本では海岸でよく見られる鳥ですが、アフリカからユーラシア大陸などでは山岳地帯の岩場などで生活しています。海岸でしか繁殖していなかった日本の方が特殊だったのではないでしょうか。近年関西を中心に内陸部の繁殖が増加し、関東にも内陸部の繁殖や目撃が増加してきていますが、千葉県でのようすをご紹介します。
2011年改訂の千葉県レッドデータブックでは、イソヒヨドリは要保護生物(絶滅危惧Ⅱ類に相当)になっていて、比較的個体数が少ない鳥類ですが、内陸への分布拡大を通じて個体数も増加傾向にあると思われます。
イソヒヨドリがどのように関東圏で生活域を拡大していくのかを追跡するため、千葉県での記録を文献および鳥仲間を通じて集めています。県内での内陸進出は、記録を辿ると古くは1970年台にいすみ市と勝浦市での記録があります。このうち勝浦市のものは、勝浦ダムのものです。
201610月までの集計では、内陸部での目撃例は佐倉市で9例、柏市で7例、流山市・市川市で4例、印西市・我孫子市で3例、いすみ市・鴨川市・君津市・勝浦市・松戸市でそれぞれ1例ずつあり、県内のほぼ全域で見られています。また、変わったところでは、鴨川市の東京大学演習林天津事務所付近では、ほぼ毎年のように見られています。この場所は房総半島の森林の中の管理事務所で、海岸でイソヒヨドリを見慣れた者にとって信じ難い場所です。ビル街のイソヒヨドリと同じく、イソヒヨドリは海岸の鳥というイメージはこれから捨てたほうがよさそうです。

県内の内陸部での記録が増加し始めたのは2013年ごろからで、2015年には我孫子駅前で巣立ち雛が見られていますので、このころから内陸部での繁殖がはじまったと考えられます。文献および観察記録の詳細な分析がまだ終わっていないので、引き続き集めています。情報をHP「掲示板」に書き込みお願いします。(越川重治)

船橋市の住宅街にあらわれたイソヒヨドリ 2015.5.14