2020年1月31日金曜日

スリランカのスズメとツバメ・都市鳥を見直す旅


  この1月のなかば、“インド洋の真珠”と呼ばれているスリランカを、8日間のバードウオッチングツアーに参加して周ってきました。今回は“鳥の多い環境を見る”というのが主目的で、セイロン島の約3分の2、標高2000m級の雲霧林から海岸近くの塩田、民家の裏庭などで、スリランカのさまざまな自然を見てきました。

  スリランカについての場所も鳥も事前の予備知識はほとんどなく、図鑑1冊での旅でしたが、鳥好きの担当者と日本で3年働いていたことがあるという、日本語のうまい現地ツアーガイドのおかげで、160種の鳥と20種以上の動物を見ることができました。
  国情は、日本の1955(昭和30)年ごろを思わせる状況で、コンクリート建造物は少なく、低層の住宅・商店の屋根は波型トタンが主流。メインの道路は舗装され、大型の路線バスが頻繁に通り、小型の三輪自動車(いわゆるtuk-tuk)が走り回っていました。そんななかで、何より驚いたのは“道路や家の周り、山の中にゴミが落ちていない”ということでした。そのレベルは日本並みで、現政権が誕生したここ10年くらいのこととのこと。
 
  訪れた地はおもに野鳥の多い場所でしたが、途中の街並み・宿泊地付近などでは、「万国共通の都市鳥」のスズメ・ツバメ・カラスなどのようすを観察してきました。その結果、”街なかにはスズメはいず、ツバメの巣も見かけない。カラスは人出の多いところでは群れている”といった状況でした。なかでも興味があったのは「スズメの巣」で、山間の村の商店で「段ボールの巣箱」を見かけました【写真1】。また、昼食をとったホテルのレストランでは、テラスの端に吊るされた籠状のもののなかに巣造り中【写真2】。どちらもイエスズメ夫婦がせっせと巣造りに励んでいました。現地ツアーガイドは“スズメはどこにでもいるよ”というだけで、あまり興味がなく、それ以上の情報は得られませんでした。

  ツバメの方は、日本と同じツバメ〔Hirundo rustica〕の群れを何度か見かけましたが、冬鳥。ホテルの入り口で見たのは固有種スリランカコシアカツバメ〔Cecropis hyperythra〕の巣と思われるもので、巣中に2羽のヒナが見えたとのことです【写真3】。また、標高2000mあまりの国立公園内の鉄塔には何羽もの南インド・スリランカ固有種のインドツバメ(Hirundo domicola)が止まっていて、頻繁に使われている公衆トイレの天井では抱卵している巣を見かけました【写真4】。
 今世紀にはいり、東京付近の野鳥の状況を見ていると、鳥影は明らかに少なくなり、ヒヨドリ・メジロなど10種程度での寡占状態が進行しているようで寂しい限りです。今回は鳥についても国についても予備知識なしで、まっさらな状態での「人と自然・鳥との関係」を見直す旅として意義のあるものでした。くわしくは会報かニュースで報告する予定です。〔川内 博・桂子〕

【写真1】道端の個人商店の軒下につけられた段ボールの巣箱:2羽のイエスズメがさかんに出入りしていた

【写真2】レストランのテラスの端に取り付けられた籠:2羽のイエスズメ夫婦が一所懸命巣材を運び込んでいた

【写真3】スリランカコシアカツバメと思われる巣:親鳥は見かけなかったが同行者が巣中にいるヒナを見たとのこと

【写真4】抱卵中のミナミツバメ:営巣場所は公園内に数少ない公衆トイレで、人の出入りは多かった

写真1

写真2

写真3

写真4