2020年3月28日土曜日

新書紹介 『カラー版 身近な鳥のすごい食生活』 唐沢孝一著

  サブタイトルは“「食」でひもとく驚異の生存戦略” 目次を見たところ、都会の鳥 スズメ 以下8種、郊外の鳥 メジロ以下9種、秋・冬の鳥 モズ以下5種、水域の鳥 カワセミ以下9種の計31種。それぞれの鳥にサブタイトルがついていて、興味あるタイトルが付けられています。

  まず目を引いたのは“ムクドリはミカンを食べないって、本当?”。さっそくページを開いたところ、ムクドリの群れのカラー写真とともに、「ムクドリの語源は、ムクノキの実を食べるから。あるいは群れることから群来鳥(むれきどり)が転じたなど諸説ある」と初心者向けに簡潔に名前の由来が記されていました。さて目についた“柑橘類を食べない”の説明は、「実は、ムクドリには柑橘類に多く含まれているショ糖(スクロース、砂糖の主成分でもある)をブドウ糖と果糖(フルクトース)に加水分解する酵素(スクラーゼ)がなく、ショ糖を分解できず、小腸から吸収できない」という説明がされています。外国文献が元のようですが、日ごろ疑問に思っていたので参考になりました。

  また、“日本で繁殖が急増中”のジョウビタキ。従来「冬鳥」だったのが、本州中部や山陰などの山地で繁殖し、留鳥化しているという最新の話題が取り上げられていました。この鳥は人工的な建物に営巣することや食性的にも、当会が現在調査・研究しているイソヒヨドリに似た面があり、その動向が気になるところです。

  目を引いたといえば、最後に登場するカツオドリ。小笠原航路の船などで見かける海鳥ですが“「襲う鳥、逃げる魚」の大ドラマ”というサブタイトルのもと、海面を飛ぶトビウオを追うカツオドリの写真は“驚異の生存戦略”の本書のサブタイトル通り、生死をかけた迫力が感じられました。

  カラー写真が豊富に使われ、わかりやすく楽しめる本となっています。〔川内 博〕
  新書版・191ページ・定価1000円+税 (2020年3月、イースト・プレス刊)