2025年8月27日水曜日

東京駅にツバメの巣があったとは!

今年は、1985(昭和60)年から5年ごとに続けている「東京駅を中心とした3㎞四方におけるツバメの繁殖状況調査」の実施年でした。地区ごとに担当者が歩き回り、ツバメの巣の有無を調べるという調査です。

私も担当地区を回り、当ブログでその様子を報告しました。ただ、「もしかしたら見落としがあるかも」と気になって、7月2日にSNS検索をしてみることにしました。最近はネット検索よりもSNSの方が、新しい情報に出会えることが多いからです。

まず「ツバメ・小伝馬町」など、地名を組み合わせて検索しましたが何もヒットせず。安心しかけたところで、ふと「ツバメ・東京駅」と検索してみたら――びっくりする投稿が飛び込んできたのです。

「東京駅にツバメの巣があった。もうずいぶん雛が大きい。今まで気づかなかった。子育て頑張れ!」(7月2日の投稿)

「えええ! なにこれ!」と思わず声が出てしまいました。写真を見ると、東京駅丸の内口改札ドームの高い場所に営巣していて、ヒナがまだ残っているのです。

さらに調べると、5月23日に「テクテクさん」が「東京駅にツバメの巣が!無事巣立つことを願うばかりです^^」と投稿していて、どうやらこの頃から営巣していたらしいことも判明しました。驚いた私は、すぐに調査メンバー全員にメールで知らせました。結果、誰も知らなかった事例だったのです。

そして7月4日、私も現場へ。すぐに巣が見つかり、4羽のヒナが巣立ち寸前の姿で並んでいました。巣はフロアから15mほどもある梁の上。こんな高い場所にあるツバメの巣はあまり記憶にありません。しかも券売機の前という位置も印象的。駅のツバメは、人がよく立ち止まる場所を営巣場所に選ぶことが多いのです。

美しいドームの下を親ツバメが飛び交う光景は、息をのむほど見事でした。こんな姿を目にした人は、これまで誰もいなかったのではないでしょうか。しかも撤去されずに残っていたのも驚きです。券売機前という環境にもかかわらず、JRが糞害を防ぐ柵を設置して、ツバメを見守っていたことに温かさを感じました。

その後、友人からの情報によると、7月5日の朝にはヒナが2羽に減り、7月6日の夜には巣が空になっていたとのこと。無事に巣立ったのだと思います。

思い返すと、この営巣のヒントはすでにあったのです。東京駅丸の内南口前のビルに勤める友人が「オフィスの外をツバメ2羽が旋回。ここまで来るのは珍しい」とフェイスブックに投稿していて、私は「皇居あたりに巣があるんじゃないの」と軽く返してしまいました。まさか東京駅そのものに巣があったとは!

40年間続いているこの調査」では、東京駅構内での営巣記録は今回が初めて。来年以降もツバメがやってくるのか、注目して見守りたいと思います。(柴田佳秀)

巣があった東京駅丸の内南口

4羽のヒナと給餌する親鳥

JRが設置したバリケード

ドームの下を飛ぶ親鳥


2025年8月9日土曜日

親水型調整池でバンが繁殖

東京・秋葉原と茨城県つくば市を結ぶ鉄道のつくばエクスプレス。そのほぼ中間にある柏の葉キャンパス駅周辺は、タワーマンションや大型ショッピングセンターが立ち並ぶ新しい街です。街の中心には、水辺を生かした調整池が整備され、「柏の葉アクアテラス」の愛称で親しまれています。

このアクアテラスは、集中豪雨による急激な雨水流出を抑えるという防災機能が第一の役割ですが、同時に、人々が水辺に親しめる憩いの場としての顔も持っています。岸辺にはヨシやヤナギが茂り、水面にはヒシが浮かぶなど、都市の中では貴重な自然環境が残されており、多様な生きものたちのすみかにもなっています。

私も、この良好な環境に魅かれて、定期的に生物観察を行ってきました。そして今年、2024年7月11日、ついにこの池でバンの繁殖を確認しました。

バンはかつては身近な鳥でしたが、近年は全国的に激減。全国鳥類繁殖分布調査によると、1990年代と2010年代を比較した増減率は-51.7%で、日本で繁殖する鳥の中ではワースト7位の減少幅です。そのため、狩猟対象からも外されました。

そんなバンが、柏の葉アクアテラスでは一年を通して普通に見られ、さらに今年は5羽のヒナを連れたペアと、2羽のヒナを連れたペア、計2組の繁殖を確認しました。この場所が、都市の中に残された貴重な繁殖地であることがはっきりと分かったのです。

この環境が守られる限り、バンはきっと今後もここで命をつないでいくでしょう。人の利用も多い場所だけに、管理者と連携しながら、この大切な繁殖地を未来へ守っていきたいと思います。(柴田佳秀)

確認したバンの親子