2025年6月9日月曜日

自然教育園でトークイベント『オオタカの子育て~8年間の変遷を振り返る』

東京・港区の国立科学博物館附属自然教育園(通称・自然教育園)は、かつては「カワセミの子育てライブ」が有名でしたが、このところは「オオタカの子育てライブ」が園内で放映されています。この地では、皇居や赤坂御用地、明治神宮に続いて、2017(平成29)年、園路の真上で営巣を始めて以来、昨年(2024年)まで、園内で営巣し、19羽の若鳥が巣立っていきました。

今年は原因不明で営巣をしませんでしたが、その間8年間の子育てのようすは、ビデオカメラで記録され、来園の皆さんが大型のモニターで観ることができるようになっています。

ビデオの性能はだんだん高機能となり、夜間をふくめてそのようすが終日記録され、真夜中にアオダイショウやハクビシンの襲来をうけて、親鳥が戦うシーンなども見られます。このたび、自然教育園でのオオタカの子育ての全貌を知る遠藤拓洋さんのトークイベントが、いま開催されている企画展『自然教育園のオオタカ~都会に生きる空のハンター』の一環として開かれることになりました。【ポスター参照】

日時は6月28日(土)10時~11時30分。会場の定員は30名ですが、オンラインで100名(小学4年生以上が対象)が無料で参加できます。ただし、6月21日までにWebで申し込む必要があります。受付けはすでに始まっていますので興味ある方はお急ぎください。なお、入園の場合は一般320円、高校生以下・65歳以上は無料です。





2025年5月18日日曜日

日本橋小伝馬町エリアでツバメの調査

前回のブログで、東京駅を中心とした3km四方におけるツバメの繁殖調査を始めると紹介しました。その調査の一環で、5月1日に私が担当するエリアである日本橋小伝馬町や人形町をまわってきました。

このエリアは5年前にも私が担当したのですが、道路が碁盤の目のようになっていて、すべてを徒歩で回るのはなかなか大変でした。そこで今回はレンタサイクルを利用。現在、都心部にはレンタサイクルがあちこちにあり、アプリで簡単に借りることができます。これで調査エリアをくまなく回ることが可能になりました。

ちなみに、調査エリアは、ほぼビル街で大小の雑居ビルがびっしりと埋め尽くしています。そのところどころに木々が植えられている小規模な公園があります。

調査担当エリア

さて、エリアをくまなく回った結果。巣があったのはわずか一カ所のみ。ここは5年前にも営巣していて、どうやら毎年営巣を続けていた感じでした。ちょうど、巣を作っている最中で、気になるのはその巣材となる土をどこから持ってくるのか。少し追跡してみましたが、すぐに見失ってしまいわかりませんでした。また、近くに小規模な公園があり、そこにある樹木の上を飛んで食物を取っているように見えました。巣材をとる場所と採食する場所あることでこの場所での営巣が可能なのかもしれません。そして、一番大事なのが営巣を人が許していることです。管理人さんと少しお話することができ、飛来した時期をきちんとメモにとっていらっしゃったので、ここのツバメは愛されているんだなと感じました。

巣から出るツバメのメス

ツバメ以外の鳥もこの調査では気をつけているようにしています。最近、数が減ったと話題のスズメは、街中にある小規模な公園があると必ず見かけました。どうやらスズメにとって、公園が採食環境で重要な場所であることが伺えました。ここで食べものをとり、電柱の部材で営巣している。そんな姿がありました。

このような緑がある公園にはスズメがいました

その他、イソヒヨドリなども注意をしましたが、他に見たのはハクセキレイ、ハシブトガラス、ヒヨドリ、ドバト。また、日本橋川にはウミネコとイソシギがいたのが印象的でした。調査からそろそろひと月が過ぎようとしていますので、また、出かけて追加の調査を行いたいと思っています。(柴田佳秀)

日本橋川にいたウミネコ





2025年4月24日木曜日

第9回・東京駅を中心としたツバメの繁殖調査を始めます

今から40年前の1985(昭和60)年から5年ごとに実施している「東京駅を中心とした3㎞四方におけるツバメの繁殖状況」調査。前回2020年の第8回はコロナ禍で、全域の調査は中止し、有志による状況調査を行いました〔『URBAN BIRDS』Vol.39 2022年〕。今回は、従来通り会員による共同調査を4月末~7月中旬にかけて行います。 

第1回の調査では44か所という予想以上の営巣地を発見しましたが、2回目の1990年には半分以下になり、その後は回を追うごとに右肩下がりでしたが、7回目の2015年には5か所増の19か所での営巣を確認しました〔『URBAN BIRDS』Vol.32 2015年〕。  

全国各地でツバメの繁殖調査は行われていますが、いずれも同じように減少傾向にあるようです。その主因は餌である「空中の虫たちの減少」と彼らの好む「営巣場所の不足」ですが、それとともに人がその存在に“無関心”になったことも挙げられます。

“ツバメは人好き”とよくいわれますが、これは人の近くだと天敵のカラスやスズメが近づかないという彼らなりの“戦略”と考えられますが、目も向けてくれない状況だと事情が違います。さらに、建物の構造や材質が巣を造りにくくなったり、新築の壁に泥と枯草で作る巣を嫌う傾向もあったり、ピンチが続いています。  

写真上は第1回の調査時に見つけた「ブリキの巣」です。もちろんツバメが作ったものではありません?  軒先に造った巣が壊れて、その家の住人が身近にあったブリキ缶で巣の代用にしたものです。写真下は、老舗のデパート松屋銀座・東館につけられた軽量の人工巣です。今年も“愛されるツバメ”がたくさん戻ってくることを願っています。〔都市鳥研究会・事務局〕




2025年3月22日土曜日

エナガの営巣条件とは

エナガの繁殖シーズンになりました。

彼らは、早春の2月中頃から苔や地衣類をクモの糸を絡めて直径20㎝ほどの丸い袋状の巣を作ります。そして、中には大量の鳥の羽毛が入っています。ある調査では2,900枚も入っていたそうですから驚いてしまいます。

巣を作るエナガ

ちなみに羽毛の枚数は寒い時期に作られた巣ほど多く、暖かくなると減る傾向があるそうです。そういったことから考えると、巣の中の羽毛は寒さ対策である可能性が示唆されています。

ところで、この大量の羽毛をエナガはどこから調達するのでしょうか。よく言われるのは、オオタカなどが獲物を捕らえ、食べるために羽毛を抜いたあとから持ってくるというものです。確かにオオタカがいると、地面にドバトなどの羽毛が大量に落ちていることがあります。そこからどんどん持ってくるのでしょう。巣の中に同じ種の羽毛が大量にあることから、猛禽類の存在がエナガの営巣には重要ではなないかとする論文があります。

今、エナガは東京都心部の緑が多い公園でも繁殖をしています。かつてはエナガの存在すらほとんど感じなかったのですが、現在は繁殖するようにまでなっているのです。そして、その繁殖開始の背景には、オオタカの存在が指摘されています。オオタカが棲むようになったことで羽毛が手に入り、エナガも巣造りが可能になったのではないかという仮説です。

ただ、私が観察している場所ではエナガが営巣していますが、オオタカはいません。そこでエナガを追跡して、羽毛を調達している現場を突き止めることにしました。すると彼らは必ず池の畔へ向かっていることがわかりました。岸辺にはカモ類が羽づくろいして抜け落ちた羽毛がたくさん落ちていて、そこから羽毛を調達していたのです。

カモの羽毛を運ぶエナガ

このことから、エナガの繁殖には必ずしもオオタカなどの猛禽類がいる必要はなく、カモがいる池があれば営巣可能であるように思えるのです。これからはもっと詳細にデータをとっていきたいと思っています。(柴田佳秀)







2025年2月21日金曜日

「科博の「鳥・特別展」3日後に終了

開催期間はまだたっぷりあると思っているうちに、2月24日の終了日まであと1週間という2月18日、東京・上野の国立科学博物館で開催されている「特別展・鳥~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統」をみにいきました。

まず驚いたことは、チケットを買うのに10分並んだこと。会場内もごった返すほどの人の波。客層は老若男女、小さな子どもも混じっていました。みなさん熱心に展示されている“鳥の群れ”を見ていました。会場内の係員に“いつもこんなに人がいるの?”と聞いたところ、ここのところとのこと。皆さん私と同じで、“まだ時間的な余裕がある!”と後回しにしていたようです。

キャッチフレーズは「新しい鳥類の系統」ということで、会場いっぱいに新系統樹にそって本剥製が展示されていていました。羽の色や姿かたちのさまざまを目のあたりにでき、その多様性をあらためて知ることができました。

そんな中で、「オガサワラカワラヒワ」が仮剥製のまま、何の説明もなく置かれていました。通りすがりの年配のご夫婦が“なんであの鳥だけがよこたわっている?”と不思議がっていました。会場内、動画以外は撮影OKでしたので、その寝姿をパチリ【写真・上】。

初めて見るもののなかで、天井から吊り下げられている「ペラゴルニス・サンデルシ」の復元モデルは一見の価値あり。飛ぶ鳥としては史上最大で、嘴にトゲ状の突起がある「骨質歯鳥類」とのこと。迫力ある姿に見入りました。【写真・下】

約2時間、全展示物を見てまわりましたが、そのボリュームは一見の価値あり! 混雑の中、音声ガイド(有料)は役立ちました。2月24日(月・日)が最終日。まだの方は混雑覚悟でお出かけください。

オガサワラカワラヒワ

ペラゴルニス・サンデルシ


2025年1月19日日曜日

都市の変化に翻弄される都会の鳥たち

私の都市鳥観察のメインフィールドの一つは千葉県柏市にあるJR柏駅周辺です。たいてい毎日、買い物で利用するのですが、そのついでに鳥を見ています。
駅近くにはイトーヨーカドーがあって、その壁面にある排気口でチョウゲンボウが繁殖しており、毎年、ヒナが巣立つのを楽しみにしていました。

イトーヨーカドー柏店の排気口にいるチョウゲンボウのヒナ

ところが昨年10月、このイトーヨーカドーが閉店してしまい、築50年以上のこのビルが今後どうなるのかわかっていません。おそらく取り壊すことになると思いますが、そうなるとこのチョウゲンボウの動向が気になります。新しい営巣場所を見つけて棲み続けるのか、それとも姿を消してしまうのか。

また、駅に隣接するデパート「そごう柏店」には、冬期を中心にハヤブサがとまっていることがあり、それを観察するのも楽しみでした。

展望レストランの梁にとまるハヤブサ

このデパートには特徴的な展望レストランがあり、その下がハヤブサのお気に入りとまりばで、ハヤブサ特有の下にたれる糞がたくさん建物のひさしについていることから、そうとう頻繁に利用していることがうかがえます。

青いひさしには無数の糞が

また、2022年の春にはオスとメスのペアが滞在していたので、もしかしたら繁殖?と期待したのですが、確認には至りませんでした。
そのそごうも2016年に経営不振で閉店。2024年まで取り壊されずに残っていたのですが、現在は解体工事の進められています。その結果、現在、ハヤブサの姿はありません。

チョウゲンボウやハヤブサは、都市環境に新たな生息地を見いだし、アーバンライフをするようになりました。しかし、都市は人の都合で変化するものでもあります。彼らはこれからどうするのかその動向を見つめていきたいと思っています。(柴田佳秀)





2024年12月25日水曜日

『都市鳥ニュース』№37を発行しました

都市鳥研究会の広報誌『都市鳥ニュース』№37を発行しました。

特集は「私の街の猛禽類」で、武蔵野市・三鷹市における猛禽類の生息状況、那覇市の緑地で観察されたリュウキュウツミ Accipiter gularis iwasakii、名古屋市における猛禽類の繁殖状況、都市公園で営巣するオオタカの鳴声の推移など、東京・沖縄・愛知からの報告を収録。また、イギリス鳥学会 #BOU2024『Urban birds』の紹介、最近の都市鳥に関わる研究論文からなどのお知らせが載っています。〔表紙図〕

本ニュース誌は当会の活動の一端をお知らせする「広報誌」となっていますので、興味を持たれた方は事務局あてにご連絡ください。PDF版をメールでお贈りします。

都市鳥研究会(としちょうけんきゅうかい)
mail:hkawachi2dream@yahoo.co.jp
                                        

2024年11月24日日曜日

東武東上線沿線のムクドリの「駅前ねぐら」・第10回

  2015年からほぼ毎年アップしている、東武東上線池袋駅(東京都豊島区)~川越市駅間の「駅前」のムクドリねぐらの状況をお知らせします。今秋は9月~11月の間で単発的な調査と11月14日(以下14日と表記)に実施した各駅前の集中調査の結果です。

  本調査は、東京23区北部と埼玉県南部の状況を知るために実施しているもので、池袋駅を起点とし、埼玉県へと北上する東武東上線の各駅を対象としていますが、これまで東京都内(豊島区・板橋区・練馬区)の駅前での事例がありません。埼玉県に入ると和光市(和光市)・朝霞・朝霞台(朝霞市)・志木(新座市・志木市)・柳瀬川(志木市)・みずほ台・鶴瀬・ふじみ野(富士見市)・上福岡(ふじみ野市)・新河岸・川越・川越市(川越市)の各駅へと続きます(下線部のある駅は急行停車駅・赤字は今秋ムクドリのねぐらを記録した駅・青字はこれまで記録のある駅)。

  今秋は全駅を対象とした調査が進まず、11月14日(以下14日と表示)に1回だけ実施しました。単発的調査では、志木で9・10月に最大4000羽程度【写真:ムクドリの群れの中を飛ぶチョウゲンボウ・9月17日】を確認していました。ふじみ野は9月には1000羽以上を見かけましたが14日にはゼロ。駅前で「放置自転車監視員」の方2名に聞いたところ8月ごろは多数飛来していたが秋にはいなくなったとのこと。一方、隣駅の上福岡で9月に5000羽程度見かけましたので移動したとも思われます。なお、ふじみ野駅の西側の通りには、これまで “バードプロテクター”が20台程度設置され、ムクドリの騒音レベルと同じくらいの音量で鳴り響いていましたが、14日には取り外されていました。川越は2021年から駅の東西のロータリーでのねぐらはなくなっていましたが、今年は、14日に東口で数十羽のねぐらを確認しました。

  興味深かったのは上福岡駅前の通り(サンロード通り)での状況で、ねぐら入りして時間があまりたっていないにもかかわらず、“騒ぎ声”がなかったこと。今後その原因を探りたいと思っています。〔川内 博〕



2024年10月19日土曜日

秋はイソヒヨドリの移動の時期?!

先日、自宅で窓を開けて仕事をしていたら、外から聞き覚えのある鳥の囀りが聞こえてきました。イソヒヨドリの声です。自宅は千葉県北西部の住宅地にあるマンションなのですが、3年ほど前から10月になると、決まってイソヒヨドリがあらわれるようになりました。たいていは1羽ですが、同時に3羽のオスが鉢合わせしたこともあります。このときは、1羽が背中をふくらませ、頭を低くして威嚇のようなポーズをつくり、もう1羽は小声で囀っていました。

また、秋にあらわれるのはオスばかりではなく、メスも姿を見せます。そして、雌雄共に成鳥で幼鳥や若鳥は姿をみせません。これまでも9月から11月にかけて、思いがけない場所でイソヒヨドリを目撃したこともあるので、この時期が彼らにとって移動シーズンであるのは間違いなさそうです。ただ、若鳥ならば新天地を求めて移動するのはわかりますが、成鳥がなぜ移動するのか、いまひとつ理由がわかりません。近所の繁殖地では、繁殖が終わると鳥の姿がなくなるので、こういった鳥が冬の生活の場を求めて移動している可能性もあります。

我が家に立ち寄るイソヒヨドリは、翌日にはいなくなるので一時利用なのでしょう。当地は戸建てやマンションがびっしりと建ち並ぶ住宅街なので、暮らす条件が整っていないのでしょうか。もし、定着して繁殖してくれれば、イソヒヨドリの研究が進むのですが、そううまくいかないようです。(柴田佳秀)

背中をふくらませたオス








2024年9月27日金曜日

「日本鳥学会2024度大会」に参加して・とくに「鳥インフルエン ザ」の公開シンポ

日本鳥学会の2024年度の大会が、東京大学農学部(東京都文京区)を中心に、9月13日(木)から17日(火)まで開かれ、1200名の参加者で盛況に終わりました。

内容は口頭・ポスター発表、自由集会、シンポジウムなど多彩で、天候も月曜日に小雨だった以外問題なく、朝から夜まで人波が絶えませんでした。なかでも“若い人と女性”が目立ち、高校生以下の参加者が200名を超えるという状況でした。

【シンプルな大会看板を撮る参加者】


今回の大会でとくに興味深かったのは16日に中央大学後楽園キャンパスで開かれた「野生鳥類と高病原性鳥インフルエンザ:大規模感染に立ち向かう」という公開シンポジウム。

世界中に蔓延し、猛威をふるっている「鳥インフルエンザ」。日本でも今世紀に入り断続的に発生し、その勢いは衰えを知らずといった病気です。今回はこの問題に関係している方々が一堂に会し、どのように立ち向かっているかを多面的に報告されるという内容で、野生鳥類・家禽だけでなく、ヒトを含む哺乳類への感染も報告されているこの難問の現状を知るいい機会でした。ただ、この大問題を討議するには3時間は少なく、やや消化不良の結末だったのは残念でした。〔川内 博〕

配布されたパンフレットの表紙


2024年8月26日月曜日

千葉県北西部にガビチョウが進出

ガビチョウは、本来は中国南部や台湾、ベトナム北部などに分布する鳥ですが、飼い鳥が逃げ出す、あるいは放鳥によって、1980年代に北九州、1990年に山梨県で定着した外来種です(国立環境研究所)。そして、生態系に大きな影響を与えるとして特定外来生物に指定されている鳥でもあります。

ガビチョウが確認されている地域は、東北南部、関東甲信越、東海、四国、九州などで、その分布は拡大傾向にあるとされています。そして、関東地方では千葉県だけが分布の空白地帯とされていたのですが、2021年頃から千葉県成田市やいすみ市などで確認されるようになり、次第に空白地帯が埋められるようになってきています。

私が住む千葉県北西部、いわゆる東葛地区には、まだガビチョウが進入していなかったのですが、2024年4月に千葉県流山市でついに囀っている個体を確認(写真)。いよいよガビチョウが現れはじめました。その後、この地で継続的に観察している人の情報では、2023年11月には既にガビチョウの声を確認しているとのことなので、すでに昨年から進入してきていたのでしょう。

その後、注意深く観察をしていると、千葉県柏市こんぶくろ池の森でも囀っている個体が確認され、急速に分布を拡大している可能性が見られました。

ガビチョウは下草が良く茂る樹林地を好み、開けた場所には出てこない習性の鳥であるので、おそらく利根川の河畔林を伝って栃木県や茨城県から進入し、利根川と接続している利根運河の河畔林を通って東葛地区に入ったのではないかと考えています。なお、利根川河畔林では、2023年に我孫子市で観察したという情報があります。

最新の研究では、ガビチョウが鳥の卵を捕食することが明らかになっているので、在来種への影響が心配されます。今後の動向を注意深く観察する必要がありそうです。(柴田佳秀)





2024年7月30日火曜日

2年続けてツミが繁殖・マンション団地にて

昨年7月18日付で「マンション団地でのツミの繁殖」という紹介を本ブログにアップしましたが、同じ敷地内で今年も営巣し、3羽のヒナが巣立ちました。同地は埼玉県和光市駅から5分程度の場所で、11棟のマンションが建ち並び、敷地内にはケヤキなどの木々が生い茂る緑地となっています。昨年はテニスコートに隣接した広場のケヤキに営巣し、今年もその木から50mほど離れた通路わきのケヤキに営巣。【写真上】 

5~6月にかけてテニスコート付近でオナガが大騒ぎしているのは気づいていましたが、他の調査に忙しく、巣捜しは後回しにしていたところ、6月26日に偶然発見。巣は周りのマンションの窓や階段から見えない位置。ただし、人通りの多い通路からは丸見え。【写真下】  その通路はいつも通っていたところなので、それまでまったく気づかなかったのにはショックを受けました。発見時には巣内のヒナは大きくなっていて、7月初めには巣立ちました。

その後、敷地内を4羽のツミが鳴きあい・飛び交う姿を見かけましたが、7月20日過ぎには姿も声もなくなりました。〔川内桂子・博〕



2024年6月22日土曜日

ヤマガラとガビチョウで蟻浴を観察

鳥には、蟻浴という不思議な行動があります。文字通り昆虫のアリを体に擦りつけて浴びる行動で、世界では約200種の鳥で観察されています。日本では、カラス類が有名で私も過去にハシブトガラスとハシボソガラスで観察したことがあります。他にはカケスやキジバト、ムクドリも日本で観察例があるようです。しかしながら、そう頻繁に行うものではなく、観察のチャンスはあまり多くありません。

少し前になりますが、4月13日に千葉県野田市の郊外を歩いていると、人家の玄関に通じる土の道の上に、1羽のヤマガラが降りているのが目に入りました。食べものでも探しているのかなと思いながら観察を続けると、そのヤマガラは、地面にいる何か小さな物を嘴でつまみとり、尾羽の裏側あたりにつまんだ物をこすりつけています。嘴でくわえていたものを詳しく見てみると、どうやらそれはアリ。アリをくわえて羽毛にこすりつけていたのです。カラスの蟻浴は、アリがたくさんいる場所に座るなどしてたくさんのアリを体にたからせますが、今回のヤマガラは、1匹ずつ体にこすりつける方法を行っていました。調べてみるとヤマガラも蟻浴の記録があり、この行動も蟻浴と考えて良さそうです。利用していたアリはクロヤマアリのようでした。

アリを羽毛にこすりつけるヤマガラ

また、4月29日には東京都東大和市の雑木林で、ガビチョウが蟻浴しているシーンに出会いました。こちらもヤマガラと同じスタイルで、1匹のアリをくわえて体にこすりつける方法。アリもクロヤマアリでした。調べた限りでは、ガビチョウが蟻浴をする記録が見つからなかったので、珍しい記録ではないかと思っています。

じつは蟻浴ではないかと思われる行動は、イソヒヨドリでも観察しています。そのときは双眼鏡を持っていなかったので、はっきりとアリの確認はできなかったのですが、仕草から判断して蟻浴である可能性が高いと思いました。

さて、その蟻浴ですが、なぜ、そんな行動をするのか今のところはっきりしたことはわかっていないそうです。アリからは蟻酸が出るので、それを使って寄生虫を寄せ付けない効果があるといわれますが、蟻酸を出さないアリでも利用することから、そう単純な話ではなさそうです。また、アリから出す物質が蚊除けの効果があるという研究もあり、早くその解明が待たれるところです。(柴田佳秀)

ヤマガラと同じような方法で蟻浴をするガビチョウ







2024年5月30日木曜日

内陸部定着が進むイソヒヨドリ

当会事務局のある埼玉県和光市では、これまで2か所での繁殖記録があります。1か所は和光市駅近くの総合スーパー4階の屋上駐車場、もう1か所は同駅から数キロ離れた郊外の産業道路ぞいの大型郵便局の3階です。

今春の状況は、和光市駅周辺では8階建てのホテルの屋上や付近のビルの上で囀る姿や声が5月中旬まで確認できました。しかしそれ以降現在まで姿・声ともなく、生息しなくなったとも思われますが、これまでの経験からすると、突然巣立ちビナが現れるという可能性もあります。街なかでの繁殖確認はなかなか難しい鳥です。

一方、郊外の方は、5月4日に今年始めて、営巣地近くの小川沿いの手すりに止まる雄を見かけました。【写真上】その後、周辺で姿や声を確認していましたが、5月27日、ムカデをくわえた雄が、昨年も繁殖成功した営巣場所の近くに止まっているのを見かけました。【写真下】 雄は餌をくわえて巣穴に飛び込み、空で出てくるのを目撃しました。今のところ雌の姿は確認できていませんが、状況からペアで繁殖にいそしんでことは間違いと思いわれます。

ところで、今月は神奈川県や兵庫県からのイソヒヨドリ観察情報が5件寄せられました。なかには営巣やヒナに関しての観察もあり、この内陸部定着がますます進んでいるようです。〔都市鳥研究会事務局〕




2024年4月15日月曜日

大分県でのミサゴの繁殖・人工物で営巣

 最近内陸部でミサゴ【写真】の生息がよく観察されていますが、大分県大分市在住の会員から「人工物での営巣」の情報が寄せられました。繁殖に関する話ですので詳細はここでは紹介できませんが、身近な場所での子育てが増えてくる兆候があります。“都市鳥・ミサゴ”にご注意ください。


携帯電話のアンテナの天頂部でミサゴが繁殖         鈴木達雄


ミサゴは大分県ではトビに次いでよく見られるタカで、私の家の近くの大分川ではよく水面に飛び込んで魚を捕える姿を観察できます。しかし、巣がどこにあるか長年見つけることができませんでしたが、3年前、探鳥の帰りにたまたま訪れた場所の携帯電話のアンテナの天頂部に枯れ枝を組んだ巣を見つけ、昨年ヒナが1羽巣立つのを確認しました。

巣は海岸から700m内陸の水田を臨む標高30mほどの丘陵にあり、周囲は7~8mほどの針葉樹の二次林に畑が点在するような里山です。

自宅から車で1時間ほどの場所のため、詳しい観察はできませんでしたが、巣の補修や交尾(3月10日)、ヒナ1羽の確認(5月24日)とその巣立ち(6月23日)などを確認できました。今年も3月10日に巣の中の番いを確認しています。

〔より詳しい記録は当会広報誌『都市鳥ニュース』に載せる予定です。・事務局〕