2012年6月29日金曜日

ツバメの集中営巣はなぜ・高尾山清滝駅

東京の高尾山は、都心から電車で1時間で行ける山として、都民に親しまれている名所です。最近は「ミシュランガイド」で三つ星観光地として紹介され、ますます訪問者が増えていますが、その多くが利用するケーブルカーやリフトの駅が清滝駅。この駅は、以前からツバメの巣が多い場所でしたが、627日に調べたところ完成した巣が17個あり、そのうち6か所で親鳥の出入りを確認しました。周辺の状況を簡単に調べたところでは、京王高尾山口駅に7巣ありましたが、土産物屋・飲食店などには巣を発見できませんでした。
都市鳥研究会のフィールドでも1か所集中しているところがあります。神田地区のハイヤー会社の大型車庫で、古い建物の中は薄暗くて洞窟のような環境です。単独型のツバメの巣が集中するのは、一帯に営巣適地がない場合ですが、清滝駅の場合はなぜでしょう。
ところで、近刊の『世田谷区内ツバメ繁殖数調査報告書(20092011年)』(財・世田谷トラストまちづくり 野鳥ボランティア)を読んでいたら、10年前と比べると集中営巣が大幅に増加している(3か所→15か所)という報告が目につきました。世田谷区は住宅地や商店街の多い地域で、比較的ツバメの巣が目立つところだけに、ちょっと気にかかるところです。(川内博)

2012年6月20日水曜日

ツバメが消えゆく街・朝日新聞で紹介されました

本会が1985(昭和60)年以来、5年ごとに実施している、東京駅を中心とした3km四方でのツバメの営巣状況調査が、619日の朝日新聞の〈ニュース圏外〉で紹介されました。

HPを見て取材を申し込まれた山本亮介記者とともに、ツバメ営巣のメッカ「神田錦町」を歩きました。途中、中断久しいビルで、営巣を再発見したり、今春、北千住へ移転し空き家になった東京電機大学の玄関の巣には還ってきていないことなども確認しました。
バブル期前から始めたこの調査も30年を経過し、街のようすは一変し、ツバメの営巣箇所数は右肩下がりが続いています。当初44か所あったのが、最新の2010(平成22)年調査時には14か所に減り、神田地区が最後の砦となっています。(分布地図参照)

記事の中には、数が減っているのは東京だけでないことや、「駆け込み寺」となっているハイヤー会社の駐車場での運転手さんの対応なども触れられていて、わかりやすく現状が記されています。ツバメ減少傾向は北半球の各国で見られていること。この調査は、地球規模での環境変化の一端を記録する貴重な活動となっています。

2012年6月10日日曜日

オオタカが棲む東京・なぜ猛禽類が・研究者募集!

いま、東京23区という大都会の森の数か所で、オオタカAccipiter gentilis〔写真〕という典型的なタカが子育てをしています。東京でのオオタカの繁殖は、10年以上前から千代田区の皇居内での営巣が知られていますが、現在はほかの緑地でも見られています。また、同じハイタカ属のツミA.gularisも営巣していて、都市環境下でのタカ類の繁殖という、かつては考えられないような状況になっています。オオタカ・ツミの共通点は、鳥類を主食とする森林性の猛禽類ということで、繁殖期は、オオタカはハト~ムクドリ、ツミはスズメなどをよく捕っているようです。
「猛禽類の生息する環境は、自然度の高い地域」というのが生態学では常識。ならば東京都心部は「自然豊かな場所」といえるかとなると、Yes!とはいいきれないのが実情です。しかし、彼らは周年定着し、子育てもしている現実があり、その理由を説明するのに苦慮しているのが現状です。
西日本の都市で、ハヤブサがビルの屋上などで繁殖していることが知られ、また、東京でも同じハヤブサ科のチョウゲンボウが、鉄橋の穴などで営巣していて、「人工建造物利用」という範疇で、都市鳥としての説明がつきますが、ハイタカ属となると別の切り口が必要と思われます。
都市鳥と猛禽類は、かつては結びつかない関係と思われていましたが、同じような傾向は大阪でも見られているようで、都市鳥としての調査・研究を続けています。興味ある人は研究会へご入会下さい。