2022年12月24日土曜日

『都市鳥ニュース』カラス特集号を発行しました

当会の広報誌『都市鳥ニュース』№33を発行しました。今号は日本の代表的な4都市からの“カラスの話題”という内容です。  

札幌からは「春先の高病原性鳥インフルエンザ発生と市内のカラスの減少傾向について」、大阪からは「大阪市のカラス2種の変遷」、名古屋からは「名古屋市におけるカラス2種の分布と個体数変化」、東京からは「お尋ね・「カラス捕獲小屋」での興味あるお話・・・東京発」ということで、街中のカラスのようすが紹介されています。

日本で街のカラスというとハシブトガラス【写真上】とハシボソガラス【写真下】。どちらも真っ黒で似た体形。遠目にはその違いは判らないくらい似ていますが、両種を漢字で書くと「嘴太烏」と「嘴細烏」ということで嘴の違いがポイント。

鳥にとって「嘴の違い」は重要なことで、この2種は好む食物の種類や棲む場所・環境などが少し違います。ただどちらも強力な雑食性でです、日本中で繁栄しています。  

今回の特集は、会員に“街のカラス”についてということで原稿を依頼したものですが、それぞれ違った切り口になっているのが興味深いところです。この鳥の“間口の広さ”の一端を知ることができます。

『都市鳥ニュース』は、会員以外の方にもそのPDFをメールでお贈りしています。カラスに限らず、“街なかの鳥”に関心をお持ちの方は下記〔※〕にご連絡ください.

※e-mail:hkawachi2dream@yahoo.co.jp 都市鳥研究会(としちょうけんきゅうかい) 

ハシブトガラス

ハシボソガラス


2022年12月9日金曜日

カラス死因解明のためのクラウドファンディングのお願い NPO法人札幌カラス研究会

これまでもNPO法人札幌カラス研究会では、カラスの死因解明を行ってきましたが、資金が非常に厳しい状況にあり、 死因解明を継続するためにプロジェクトを立ち上げました。

カラスの死因は、鳥インフルエンザが陰性だとわかると、それ以降は行政では一切検査が行われていません。しかし、それだと大量死が発生した場合に不安によるパニックや、発見場所への風評が飛び交います。

鳥インフルエンザでニワトリなどが感染してしまうと、経済的なダメージが大きいですが、カラスなどの野鳥が感染した場合だと、経済的には困らないので、行政では死因を解明するまでには至りません。(鳥インフルエンザは感染源に濃厚な接触がない限り人には感染しませんが、野鳥間での感染は起こります)

カラスや野鳥への理解を深めて、死因を解明してより身近な存在になってもらえたらと考えています。死因のデータがあると不必要にパニックになることもなく、対応もしやすくなると考えています。また、カラスの死因は実に様々で、年齢や季節により変動も見られます。死骸はゴミになるのが一般的ですが、死因を解明してその個体の死を無駄にしないで済みます。

過去のスズメ大量死がもたらした不安や風評被害は、カラスだとよりひどい状態になりかねません。死因をデータ化することにより、鳥インフルエンザ以外でも大量死などが判明しやすくなります。それに伴い人との関わり、野生動物との付き合い方や距離も見えてきますし、学術研究にも貢献することになります。

一人でも多くの方に共感いただければ幸いです。プロジェクトは、2022/12/7~2023/1/26までです。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

NPO法人札幌カラス研究会代表理事 中村眞樹子

詳細はこちら https://bit.ly/3iAEx2v






                                                                 



2022年11月22日火曜日

“水辺の宝石”カワセミの近況・1

   “水辺の宝石”といえばいわずと知れた「カワセミ」のこと。【写真1・港区内の緑地で】 漢字で「翡翠」と書くこの鳥は、1970年代には東京都心では二度と見られないだろうといわれました。日本が経済の高度成長を遂げ、さまざまな「公害」が社会問題となり、「自然保護・環境保全」が叫ばれた時代です。東京のカワセミはその後急速に復活し、1990年代には都心部の水辺でも繁殖するようになりました。そして今では首都圏の水場では、冬場に半日もいれば出会える“準普通種”となっています。

  11月半ばの3日間、東京都心の港区から渋谷区・練馬区・清瀬市、それに続く埼玉県南部の朝霞市・所沢市へ出かける用事があり、ついでに各地の水辺を探索してみました。行く先々でブルーの輝きに出会え、なかにはペアでというところもありました。

  町中からのカワセミの「後退」から「復活」への事例は、東京だけでなく、日本各地でみられています。とくに秋から冬にかけては出会える頻度が高く、大きな望遠レンズを携えた人が、複数で水辺にたむろしていればほとんどがカワセミ狙い。そのそばでしばし待っているとカワセミに出会えること間違いなし。

  しかし“準普通種”といえるほどの生息状況は冬季のことで、繁殖期になると彼らの至難は続いています。子育てのための巣穴を掘る場所がないためです。本来は土の崖地に横穴を掘り巣とする鳥ですので、都会地には適地がないのが現状。以前から繁殖用の人工崖地が各地に造られ結構利用しています。また最近は川沿いのコンクリート土手の水抜き穴を利用する例も増えています。

  「人工物を利用する」という点で、カワセミは立派な「都市鳥」。今回ペアでいた場所は都内の典型的な住宅地。これからその動向を追っていく予定です。【写真2・練馬区内の川辺で】〔川内 博〕

写真1


写真2

2022年11月1日火曜日

千葉県・柏駅周辺のハクセキレイのねぐら

JR常磐線の柏駅は千葉県柏市にあり、1日の平均乗降者数25万人。JR東日本の各駅停車駅の駅別乗降者数ランキングでは27位の大きな駅です。その駅の東西には百貨店や商店が並ぶ繁華街があり、その道路にはマテバシイなどの街路樹が植えられ、ハクセキレイのねぐらがあります。

柏駅前のハクセキレイのねぐらは1981年から確認されていて、最大1200羽ほどがねぐらをとっていたと記録があります。その当時のねぐらは銀行のビルにあり、窓枠にずらっと丸見え状態で並んでいたといいます。その後、銀行ビルは駅前開発によって姿を消してしまいましたが、ハクセキレイのねぐらは消滅せずに現在は街路樹に移って健在です。

興味深いのは、普通、繁華街にあるハクセキレイのねぐらは、秋から冬にかけて作られることが多いのですが、ここでは一年中存在することです。それは銀行にねぐらがあった時代から変わっていないようで、当地がよほど良い条件のねぐらであることがうかがい知れます。

当然のことながら地元ではあまり歓迎されていないようで、追い払うためか、ときどき街路樹が強剪定されます。しかし、東口が剪定されれば西口へ、西口が剪定されれば東口へと移動するため、ねぐらが消滅することはありません。手の届くような高さの枝にとまって寝ているのですが、ほとんど気がつく人がいないので問題ないようです。ただ、ねぐら入りのときは大騒ぎで乱舞するので、そのときばかりは何事かと歩みを止めて見入る人の姿があります。

1年を通してねぐらは街路樹にありますが、厳冬期になるとパチンコ屋のビルの上にもねぐらが広がります。この場所でのカウントでは最大400羽を数えていますので、厳冬期に個体数が増えると街路樹だけでは収容能力が足らなくなり、はみ出すのではないかと考えています。今後、このねぐらがどのように変化するのか注意深く観察を続けるつもりです。(柴田佳秀)

ハクセキレイが寝る街路樹。高さは低い。

マテバシイの枝にとまって眠る

厳冬期はビルのアンテナや電線も利用する





2022年10月16日日曜日

住宅地でのムクドリの大規模ねぐら発見・「東京・練馬区」

東京・池袋始発の東武東上線沿線での「駅前ねぐら」情報は、本ブログで連載していますが、調査に行くたびに変化が見られ、“あの大群はどこに行ったの?”という事例が続出しています。

そんななか、昨秋、自宅の窓からあれ?という光景を見かけました。南に飛んでいく30羽程度のムクドリの群。東上線朝霞台駅(JR北朝霞駅)は北西方向なのにと思い、今秋9月16日、その方向にある東京23区の西端・練馬区大泉地区を探査してみました。この一帯は戸建ての住宅が広がり、鉄道駅から離れた環境なので、どんなところにねぐらがあるか興味を持ち自転車で回ってみました。

調査開始当日さっそく、この地区一番の商店街沿いの高圧鉄塔に集まった1000羽程度の群れを発見しました。しかし、時刻は17時。就塒前集合地と判断し、一帯を回っていると30分後、関越自動車道ぞいに飛ぶ500羽程度の群れを発見。しばらくあたりを探しましたがその日はそれで終了。次に調査に出かけたのは10月3日。16時40分から前回認めた場所から飛んで行った方向へ進むと、小学校の裏手の森でムクドリの群れ。ここも就塒前集合地と判断し、さらに回ると、いつも自転車で石神井公園へ行く道に入り、白子川にかかる水道橋ぞいの通りの電線で大群を発見。

近くで散歩していた老夫婦に聞いたところ、“秋にはいつも群れが見られる・今年は例年より多い”とのこと。そして最終的に集まるのは「ハード・オフ」駐車場前のケヤキ3本だとも近くにいた別の人が教えてくれました。その日は5000羽以上と思われる群れのねぐら入りを確認。1週間後の10月10日再確認。やはり5000~6000羽と思える群れを確認しました。

場所は、東京外環道と関越自動車道が交わる大泉ジャンクションそばの目白通り沿い。付近にはハード・オフのほか、スーパーバリュー・銚子丸・平城苑などが立ち並ぶ一角。やはり“にぎやか”ところでした。このねぐらがいつからできているのか、いつまでいるのかは今のところ不明。それにしても、また“仕事”が増えたといったところです。〔川内 博〕









2022年10月5日水曜日

文献紹介 東京・世田谷区でのツバメ調査報告書

野生動物の中で、もっとも身近にいて愛されているのはツバメでしょう。目の前で一所懸命に子育てをする光景は、街でも村でも同じで、心和むシーンです。

ツバメの研究は、全国で行われていますが、この春に発行された『世田谷区内ツバメ繁殖数調査報告書 2021(2018~2021年)』は、精査な調査・精緻なまとめで、熱心に調査・研究をされている方には有効な文献となると思います。

なかでも鉄道駅のガード下のT字状の梁に造られた巣を調べ上げて、その位置と数を示されているのは驚きです(4-6-3.喜多見駅ガード下事例)。駅前商店街で数多く営巣していたツバメが、2010年ごろからその営巣場所が拡大変化し、2015年以降、ガード下へと巣が集中したとのこと。そのきっかけは駅付近の道路拡張・商店街の店舗の改築改造などと考えられるようですが、なぜガード下に集中したかは不明とのことです。  また、大きなタクシー会社の車庫での集団営巣も興味あるところです(4-3-3.集団営巣事例)。こここでは2000年に1巣1繁殖が記録され、翌年には2巣2繁殖、2011年には8巣9繁殖、2018年に25巣40繁殖、そして2021年には22巣29繁殖となっているとのこと。

当会で調査している「東京駅を中心としたツバメ繁殖調査」でも、同じような事例があります。千代田区神田という東京の中心地ですが、そこに最盛期には6巣の巣が集中したときがありました。その原因は、ツバメが好む古手のビルが改築・改造されて、彼らの営巣に適した建物がなくなったことと、親切なタクシー運転手さんがいて、さまざまなカラス対策を講じていたのがその理由のようでした。

世田谷でも、「乗務員さんたちの面倒見がよく、巣材になる泥を置いたり、カラスの被害を防ぐためすべての巣の下に棚板を設置し網で囲いを造るなどの対策」が功を奏しているとのことです。

人とともに生きるツバメは、市街地だけでなく、農村でも棲みにくくなっている現状を考えるとき、この一冊は参考文献として重要と思います。興味ある方は、報告書全体がネットにアップされていますので、ぜひアクセスしてみてください。

https://www.setagayatm.or.jp/trust/research/tsubame/index.html

世田谷区内ツバメ繁殖数調査報告書 2021(2018~2021年)2022年4月発行編集・発行:(一般財団法人)世田谷トラストまちづくり 野鳥ボランティア ツバメ繁殖調査委員会.

 



2022年8月30日火曜日

東武東上線のムクドリの「駅前ねぐら」・第8報

前回の第7報は、昨年11月30日付でアップしましたが、そのなかのトピックスとしては、ふじみ野駅西口(埼玉県富士見市)からムクドリのねぐらが消え、隣駅の上福岡駅東口(同ふじみ野市)の通りに移ったこと、また、東上線では池袋駅につぐ乗降客数の多い川越駅(同川越市)のねぐらが消滅したことを伝えています。  

この8月、夏場の状況を知るため、池袋駅(東京都豊島区)~川越市駅(埼玉県川越市)までの駅前ねぐら状況を探ってみました(チェック調査+情報調査)。

ねぐらが形成されていた駅は志木駅(東口・2000羽+)・ふじみ野駅(西口・30羽)・上福岡駅(東口・4000羽±)で、これまで記録のあった朝霞台駅・川越駅では見かけませんでした。

今回のチェック調査で、一昨年まで4000羽程度が飛来し、この時期には2回目の大規模剪定が行われていたふじみ野駅西口の駅前通りのけやき並木の緑がそのままになっていたこと。一方、隣駅の上福岡駅東口の駅前通り(サンロード)に大量のムクドリが集まっていたこと。そして、川越駅は東口・西口とも飛来の形跡がなかったことなどがわかりました。川越では、川越駅から約1㎞離れた西武新宿線の終着駅「本川越駅」の東口には約6000羽のムクドリが集まっていました。【写真】

 “ムクドリの駅前ねぐら”は人によるさまざまな干渉で刻一刻変わるので、単発的なチェック調査ではその実態を知ることは難しい面がありますが、今回の調査では、昨年11月の第7報と同じような状況が続いているらしいということがわかりました。 〔川内 博〕





 

2022年7月27日水曜日

ご案内 都市近郊の水鳥の“いま・むかし”を知る・・・千葉県・手賀沼の鳥

千葉県我孫子市や柏市などに広がる手賀沼(てがぬま)は、利根川水系の湖沼で、大正時代には湖畔に志賀直哉や武者小路実篤などの別荘があり、白樺派ゆかりの地として知られていました。しかし、東京から近いために、その周辺部は人口の流入とそれに伴う開発が進み、1994(平成6)年には水の汚れを示すCODが全国ワースト1位となったほどです。

しかし、現在、湖畔には山階鳥類研究所や全国的にも珍しい“鳥の博物館”・我孫子市鳥の博物館が建っていて、日本の鳥の研究をリードする地となっています。

  

今回の我孫子市鳥の博物館の企画展「手賀沼の鳥-環境と水鳥-」【パンフレット】は、この地で創立50周年を迎える「我孫子野鳥を守る会」の1977(昭和52)年~2020(令和2)年までの44年間のカウント調査をもとにした鳥類の変化を紹介するものです。

コロナ禍が続く中ですので、事前に添付のパンフレットや同館のHPに目を通し、安全なご見学お願いします。〔都市鳥研究会・事務局〕






2022年7月19日火曜日

銀座のデパートに付けたツバメの「人工巣」で初めての巣立ちとカラス対策バリケードの設置

   東京銀座の老舗デパート「松屋銀座」の東館(中央区銀座3丁目)は、40年前から営巣が継続されている場所ですが、最近営巣場所の環境が変わってきて、造巣が難しい状況になってきました。そこで2019年3月にひさしの裏側に人工巣を取り付けました。その人工巣で今年6月に初めて4羽のヒナが巣立ちました。【写真1】

   松屋銀座東館の裏の集荷場にもツバメが営巣していますが、蛍光灯が取り外されることになり、今年3月に人工巣を2か所取り付けました。そこの人工巣にもツバメ夫婦が利用し始めたのですが、設置した場所が通りに面していてカラスに襲われる可能性があるということで、「カラス対策」を6月24日に行ないました。【写真2・3】

   その後、バリケードで守られた巣ではヒナたちが元気に育ち、昨日(7月18日)立ち寄った時、巣立ち間近なヒナたちを見ることができました。【写真4】〔金子凱彦・川内 博〕


写真1

写真2

写真3

写真4


2022年6月15日水曜日

都市鳥研究会・東京駅を中心としたツバメの繁殖調査の近況

  2020(令和2)年の春に第8回の調査を予定していた「東京駅を中心とした3㎞四方におけるツバメ Hirundo rusutica  の繁殖状況調査」(以下、「東京駅ツバメ調査」と略す)は、折からのコロナ禍を受けて延期していましたが、状況の改善がはかばかしくなく、中止いたしました。しかし、会としての調査ではなく、個人的な調査として、前回(2015年)以降に、かつて営巣した場所を中心に状況を記録しましたので地図にして紹介します。  

  地図の中心地は東京駅で、上下左右が3㎞、上方向が北です。この地には、銀座や日本橋といった大規模な商業地域(地図上のE・F・H)、神田や人形町などの中・小のビル街が密集する地域(A・H・D)、兜町などの商社のビルが林立し、高速道路が縦横に走る地域(F)、丸の内・大手町など超高層ビルが林立する地域(B)、日比谷公園や皇居外苑など緑と水のある地域C)、そして皇居や東御苑など緑地でおおわれている地域(I)がモザイク状に入り乱れている、日本の都市環境を代表するような地域です。

  ここをフィールドに1985(昭和60)年から5年ごとに、「東京駅ツバメ調査」を実施していて、その状況は当会の研究誌『URBAN BIRDS』に発表しています。  

  2020~2022〔令和2~4〕年の状況は、とりあえず、6月末発行予定の当会の広報誌『都市鳥ニュース』に発表予定です。ここでは、その状況を下記の地図で紹介します。

【ツバメの営巣場所地図】

:この期間に営巣を記録した場所〔8か所〕

:この期間に営巣は記録されていないが、巣や営巣場所が残っていた場所〔7か所〕

:この期間に営巣していた建物が改築などで無くなった場所〔4か所〕 (川内 博





2022年5月27日金曜日

記録が増えてきた埼玉県最南部のイソヒヨドリ・・・新座・朝霞・志木・和光 での近況

  5月22日午後、狭山丘陵での探鳥会の帰り、JR武蔵野線で向かいの若者につられるように電車を降り、改札に向かったところ、いつも使っている北朝霞駅と違うことに気づきました。一つ手前の新座駅で降りていたのです。しかたがないのでホームのベンチに座って次の電車を待っていると近くからイソヒヨドリの囀りが聞こえてきました。声は向かいのホームに隣接したマンションから。さっそく双眼鏡で探ると6階ベランダに止まって鳴く雄を発見【写真1・2】。ちなみに新座市での初記録は、昨年7月6日で、駅から700mほど離れた住宅街からの情報でした。

  朝霞市からは、今年の3月9日に、朝霞駅近くでの観察情報がありました。また、志木市では5月12日に当会会員の富田恵理子さんが、志木駅に隣接した商業施設マルイの2階のベランダで地鳴きや囀りを耳にしたとのこと。声は線路周辺か、線路に面したビルからと思われるとのこと。今のところこれらは初記録と思われます。

  そのなかで、初記録が2014年の和光市では、2019年6月に駅近くのイトーヨーカドー付近で親子連れが発見され、その後も駅近くで、繁殖期に毎年雌雄が観察され、囀りもよく聞かれています。昨年は駅から4㎞離れた畑地に建てられた東京北部郵便局で繁殖しましたが、今年もその場所の向かいのビル屋上にいる巣立ち雛を発見しました。

 4市は東京23区と隣接した地域で比較的環境が似た一帯です。東京都の練馬区、板橋区、西東京市、東久留米市、清瀬市なども合わせてその動きを追っているところです。〔川内 博〕





2022年4月27日水曜日

図書紹介・ハトの“豆知識”を満載した『となりのハト』

『となりのハト』柴田佳秀著 (2022年4月・山と渓谷社刊、定価1485円)

  ハトへの興味を、著者自身が冒頭で「うつろな目でただ首を振って歩き回るだけの気持ちの悪い鳥」・「正直、私はハトにはそれほど関心がなかった・・・失礼だが、なんだか頭が悪そうで、なんと魅力に乏しい鳥なのだろうか」と記しています。

  たしかに、野生のハトに関する本は少なく、研究も多くない状態です。一般に関心度が高いのは「農作物への加害」、次いで「ハト公害」で、直接それにかかわっている人以外は、興味を持たれることの少ない鳥であることは確かだと思います。

  しかし、実際その鳥について調べてみると、すそ野の広い、豊かなグループであることを本書【表紙写真】は語っています。「ハトという鳥」に始まり、日本のゆかいなハトたち、世界のハト・絶滅したハトの紹介などがあり、鳥についての初心者でも読み進められる構成になっています。読者が知らず知らずのうちに“ハト博士”気分になったらこの本の本懐でしょう。最終章では、人とハトに関わるさまざまなことが記されています。登場するハトは、もっともなじみのあるドバト(カワラバト)が中心で、それに関わるいろいろな話題が紹介されています。

  一つひとつは“豆知識”レベルですが、インターネットの時代、興味ある話題についてスマホやパソコンを使えば “豆粒大”であった知識を大きく育てることができ、また深堀をしてみようというきっかけにもなり、帯に記されているように“ハトのいる毎日の景色が一変する一冊”であることは間違いない本です。【都市鳥研究会・事務局】





2022年3月29日火曜日

最近の「ツバメ」の話題をお寄せください

 コロナ禍のなか3年目の春を迎えています。都市鳥研究会では、身近なところでの「ツバメ」の話題を集めています。“コロナ禍で電車に乗る人が少なくなって、駅舎でのツバメの営巣がなくなった”・“久しぶりにツバメを見かけたらコシアカツバメだった”・“市役所にあったイワツバメのコロニーがハシブトガラスに襲われた”などなど、また、あまりなじみのない「リュウキュウツバメ」や市街地へ入ってきた「ヒメアマツバメ」の話題などもぜひお寄せください。

  昨年末に発行された『全国鳥類繁殖分布調査報告』を見ると、約半世紀の間に、日本にすむ鳥たちの繁殖分布の変化に興味がわいてきます。ツバメたちも同様で、その変化にはそれぞれ理由があるはずです。そのあたりのことは図面上で俯瞰的にみても分かることではなく、地面を歩きながら、ひとつ一つ丁寧に調べていくしかありません。

  私のフィールドでは、ツバメの営巣は減る一方です。また、10年来繁殖していた、JR北朝霞駅(埼玉県朝霞市)のイワツバメの古巣を利用したヒメアマツバメの営巣地には、コンクリート造りの鉄道高架の落下事故防止のためか、天井にネットが張られてしまいました。そのためほとんどの巣は使われなくなってしまいました。【写真1・2】今春は、その後どのようになっているか調べる予定です。  

 都市環境にすむ「ツバメ」の今を、写真などをまじえてご報告ください。このブログや当会広報誌『都市鳥ニュース』などで紹介させていただきます。〔川内 博〕

※話題提供は都市鳥研究会・事務局にメールでお送りください。

メールアドレス:hkawachi2dream☆yahoo.co.jp
なお、アドレスはスバム対策のために、@を☆にしてありますので、お手数ですが、手入力で☆を@にかえていただきますようお願い申し上げます。


(写真1)イワツバメの古巣を利用したヒメアマツバメの巣


(写真2)高架の天井一面にネットが張られたコロニー



2022年3月15日火曜日

銀座のデパートにツバメのための人工巣を取付けます・今春の成果が楽しみです

東京銀座の老舗デパート「銀座松屋」は“ツバメの定宿”として知られています。銀座で長期間営巣を続けているのはここだけです。

その東館(中央区銀座3丁目)では、昨年までツバメが利用していた蛍光灯がすべて取り外され、巣が撤去されました。

銀座のど真ん中で巣を作る足がかりがある建物はほとんどありません。そこでツバメの手助けをしようと、松屋デパートさんの協力を得て、人工の巣を取り付けることとなりました。今春、その成果が楽しみです。(金子凱彦)


昨年までツバメは庇下の蛍光灯のカバーで営巣していました。カバーに切り込みを入れて持ち上げ、巣やヒナが落ちないように工夫されています。デパート関係者に守られていました。


     庇の天井下に付いていた蛍光灯が外されました。柱や壁に人工の巣を付ける予定です。


2022年2月20日日曜日

研究会誌『URBAN BIRDS Vol.38』を発行しました

 当会2021年度の会誌を発行しました。本来であれば昨年中の発行を予定していましたが、コロナ禍の中、大勢の会員や協力者の参加で12月に実施しました「第8回都心におけるカラスの集団塒の個体数調査(2021年)」の結果を報告するため、2月半ば過ぎの発行となりました。

  東京都内や周辺からカラスの姿が減っているのは、日ごろ実感としてわかっていましたが、実際に調査をしてみると、思った以上の減少ぶりでした。その成果の一部は、すでに本ブログにアップしています。また、東京新聞や朝日新聞デジタルなどでも紹介されていますが、本号にはその調査の全容が18ページわたって詳細に記されています。

    また、巻末に載せられている「東京区部の緑島におけるフクロウの観察」という報告は、他に事例のない内容ですので、フクロウに興味のある方は一読の価値があると思います。保護のためその場所は明示されていませんが、5年以上にわる東京23区のある緑地でのペアのフクロウの生態を追ったもので、写真が多用された14ページの力作です。

 その他、ツバメ、オオタカ・ツミ、イソヒヨドリ、ガビチョウなど、当会ならではのラインナップで、東京を中心とした都市鳥の今の生態が報告されています。

  研究会誌『URBAN BIRDS』は会員だけへの配布ですので、興味を持たれた方はぜひご入会下さい。年会費2,500円で、どなたでも入会できます。また、バックナンバーも会員には「貸出し」を行っています。詳しくはホームページをご覧ください。

  URL:http://urbanbirds.eco.coocan.jp/          〔都市鳥研究会・事務局〕

 最新刊「通巻第79号」Vol.38 2021年12月 

●巻頭言 (山部直喜) 
●第8回都心におけるカラスの集団塒の個体数調査(2021年)(唐沢孝一・越川重治・金子凱彦)
●成田市におけるツバメのの営巣数と営巣部位の変化(2019~2021年)(唐沢孝一)
●JR山手線駒込駅とその周辺におけるツバメの繁殖(小松雄一郎・唐沢孝一)
●ツバメの子殺し行動と雛への攻撃行動(越川重治)
●ツバメの巣立ち雛による労働寄生(越川重治)
●東京23区とその周辺におけるオオタカとツミの繁殖状況(2021年)(唐沢孝一)
●埼玉県和光市におけるイソヒヨドリの生息・繁殖状況(川内博・川内桂子
●イソヒヨドリにおける餌利用の季節変化の傾向-インターネット・SNSを活用した調査-(鈴木遼太郎)
●都市部の商業地域で観察されガビチョウ(鈴木遼太郎)
●東京区部の緑島におけるフクロウの観察(井上裕由)

2022年1月17日月曜日

都心のカラスの個体数調査(2021年) 調査結果の確定数値

 2021年12月12日に実施した第8回都心におけるカラスの個体数調査(2021年)の確定数が決まりましたのでお知らせします。

都心3カ所の集団塒のカラスの羽数

自然教育園25羽、明治神宮1580羽、豊島ケ岡墓地1180羽、計2785羽

なお、2021年12月18日にこのブログに投稿した速報値(自然教育園24羽、明治神宮1576羽、計2780羽)は上記のように訂正します。

現在、減少要因の分析や今後の課題なども含めて報告書としてまとめているところです。詳細は2022年発行予定の会誌『URBAN BIRDS』に掲載しますのでご覧ください。数値の引用等を行う場合は事務局か調査責任者にご連絡ください。あるいは『URBAN BIRDS』発行後にお願いします。(文責 唐沢孝一・越川重治・金子凱彦)


2022年1月13日木曜日

会員からの投稿 ハクセキレイの戦い

11月のある日、自転車で自宅近くの大分川(大分県大分市)で探鳥中、堤防の下の河川敷の舗装された人道・自転車道で、ハクセキレイの雌が2羽、地面で採餌していました。

そこに1羽の雄が来て3羽で、やや距離を保ちながら採餌していました。そこにもう1羽雄が来て様子が急変しました。

雄同士で取っ組み合いとなり、空中と地上で激しい争いとなりました。【写真】 互いに力が拮抗していたのか、なかなか勝負は決まらず、その間何度か人や自転車が通るたび、両者はその場を離れ、再度戦いが始まるといった具合でした。雌は2羽ともその場を離れ、私の視野からは消えていました。

結局、この戦いは顔が黄色く背中の色が薄い若い個体が勝者となりました。その後その若い雄と雌が河川敷のフェンスに仲良く止まっているのを見かけました。(鈴木達雄)