2022年11月22日火曜日

“水辺の宝石”カワセミの近況・1

   “水辺の宝石”といえばいわずと知れた「カワセミ」のこと。【写真1・港区内の緑地で】 漢字で「翡翠」と書くこの鳥は、1970年代には東京都心では二度と見られないだろうといわれました。日本が経済の高度成長を遂げ、さまざまな「公害」が社会問題となり、「自然保護・環境保全」が叫ばれた時代です。東京のカワセミはその後急速に復活し、1990年代には都心部の水辺でも繁殖するようになりました。そして今では首都圏の水場では、冬場に半日もいれば出会える“準普通種”となっています。

  11月半ばの3日間、東京都心の港区から渋谷区・練馬区・清瀬市、それに続く埼玉県南部の朝霞市・所沢市へ出かける用事があり、ついでに各地の水辺を探索してみました。行く先々でブルーの輝きに出会え、なかにはペアでというところもありました。

  町中からのカワセミの「後退」から「復活」への事例は、東京だけでなく、日本各地でみられています。とくに秋から冬にかけては出会える頻度が高く、大きな望遠レンズを携えた人が、複数で水辺にたむろしていればほとんどがカワセミ狙い。そのそばでしばし待っているとカワセミに出会えること間違いなし。

  しかし“準普通種”といえるほどの生息状況は冬季のことで、繁殖期になると彼らの至難は続いています。子育てのための巣穴を掘る場所がないためです。本来は土の崖地に横穴を掘り巣とする鳥ですので、都会地には適地がないのが現状。以前から繁殖用の人工崖地が各地に造られ結構利用しています。また最近は川沿いのコンクリート土手の水抜き穴を利用する例も増えています。

  「人工物を利用する」という点で、カワセミは立派な「都市鳥」。今回ペアでいた場所は都内の典型的な住宅地。これからその動向を追っていく予定です。【写真2・練馬区内の川辺で】〔川内 博〕

写真1


写真2

2022年11月1日火曜日

千葉県・柏駅周辺のハクセキレイのねぐら

JR常磐線の柏駅は千葉県柏市にあり、1日の平均乗降者数25万人。JR東日本の各駅停車駅の駅別乗降者数ランキングでは27位の大きな駅です。その駅の東西には百貨店や商店が並ぶ繁華街があり、その道路にはマテバシイなどの街路樹が植えられ、ハクセキレイのねぐらがあります。

柏駅前のハクセキレイのねぐらは1981年から確認されていて、最大1200羽ほどがねぐらをとっていたと記録があります。その当時のねぐらは銀行のビルにあり、窓枠にずらっと丸見え状態で並んでいたといいます。その後、銀行ビルは駅前開発によって姿を消してしまいましたが、ハクセキレイのねぐらは消滅せずに現在は街路樹に移って健在です。

興味深いのは、普通、繁華街にあるハクセキレイのねぐらは、秋から冬にかけて作られることが多いのですが、ここでは一年中存在することです。それは銀行にねぐらがあった時代から変わっていないようで、当地がよほど良い条件のねぐらであることがうかがい知れます。

当然のことながら地元ではあまり歓迎されていないようで、追い払うためか、ときどき街路樹が強剪定されます。しかし、東口が剪定されれば西口へ、西口が剪定されれば東口へと移動するため、ねぐらが消滅することはありません。手の届くような高さの枝にとまって寝ているのですが、ほとんど気がつく人がいないので問題ないようです。ただ、ねぐら入りのときは大騒ぎで乱舞するので、そのときばかりは何事かと歩みを止めて見入る人の姿があります。

1年を通してねぐらは街路樹にありますが、厳冬期になるとパチンコ屋のビルの上にもねぐらが広がります。この場所でのカウントでは最大400羽を数えていますので、厳冬期に個体数が増えると街路樹だけでは収容能力が足らなくなり、はみ出すのではないかと考えています。今後、このねぐらがどのように変化するのか注意深く観察を続けるつもりです。(柴田佳秀)

ハクセキレイが寝る街路樹。高さは低い。

マテバシイの枝にとまって眠る

厳冬期はビルのアンテナや電線も利用する