2021年8月18日水曜日

夏鳥・アオバズクの親子…東京23区で2年連続繁殖確認

 ここのところ、東京都内の市街地や郊外の緑地で、キビタキやサンコウチョウなどの夏鳥の声が聞かれるようになってきました。まだ手放しで喜べるような状況ではありませんが、“夏鳥復活”傾向が見られています。そんななかアオバズクがここ2年連続して、東京23区内で繁殖が記録されました。  

  アオバズク[青葉木菟]は、フクロウの仲間の夏鳥で、樹洞で営巣し、大型のガや甲虫などを主食とする猛禽類です。東京ではかつて池袋に近い、鬼子母神の並木がこの鳥の名所で、1931(昭和6)年~1972(昭和47)年の約40年、継続的な観察記録が残されていましたが、その後東京23区での営巣記録は急速に減って、1990年代には4か所程度、2000年代に入ると確実な繁殖記録は1例だけとなってしまいました。2004年からはその場所も宅地に代わり消滅し、ここ15年くらいは23区内での営巣記録は途絶えていました。

  そんな中、昨年・今年と住宅街の緑地で繁殖が見られています。写真は今年のもので、巣立ちビナが2羽確認できました【写真1】。  

 アオバズクの激減は東京23区だけでなく全国で見られ、その原因は餌となる大型の昆虫(カブトムシやクワガタ、ガなど)の減少・巣穴となる樹洞の減少・越冬地の環境悪化などが挙げられています。いろいろ検討してみると、どうやらそれらが合わさっての根の深い問題のようです。

 コロナ禍のなか、運動もかねて近場の公園を暗くなってから散歩していると、テニスコートやサッカー場では大勢の人がまだプレーを楽しんでいました。競技場の周囲には大型の照明とともに誘蛾灯が光っていました【写真2】。その明かりの周りには虫たちが飛び交い、誘蛾灯に感電したバシッ・バシッという音が聞こえていました。都会では明かりに虫が集まらないことが多く、久しぶりに見る光景でした。アオバズクの食べ物が少しは増えたのか?都市環境下での調査の楽しみがひとつ増えました。(川内 博)

写真1 母鳥と2羽の巣立ちビナ


写真2 虫たちが集まる明かり



2021年8月1日日曜日

様変わりした東京の“ドバト事情”

  街なかの鳥「ドバト」にどんなイメージをお持ちでしょうか。かつては“かわいい・愛すべき隣人・平和の象徴”とプラスイメージだったこの鳥も、近年は“気持ち悪い・糞が汚い・病原菌を媒介するのでは”などのマイナスイメージが強くなり、「ハト公害」として嫌われることが多くなりました。

  実際、東京のお寺や神社の境内、駅前の広場、街なかの小公園などから給餌する人は激減しています。かつては2000羽を数えた浅草・浅草寺の境内では、今は50羽程度しか見かけません。また、最近は、渋谷や池袋などの駅前や公園でも、20羽もいれば“いた!”と思うほどの状況です。逆に目立ちだしたのが、公園の林の下や道端の雑草の間などで「採餌」をするドバトたちです。

 公園の林床や川の土手などで餌をついばむ姿は、“野生生物”です。大きな群れでいることは少なく、数羽~10羽程度で、キジバトと混じっていることもよくあります。

 ここ数年来の夏に目につくのは、道路ののり面や土手などで、大規模な草刈り後に、群れで採餌している姿です【写真】。

 東京の市街地では、今世紀に入って、人による給餌が減っているうえに、ドバトを主食とするオオタカが増えています。かつて街を“天国”としていたドバトたちは、“野鳥”として生きていくのでしょうか。〔都市鳥研究会・川内 博〕