2023年8月29日火曜日

都市公園の池にもヒクイナ・東海地方のようす

 ヒクイナは国のレッドリストでは準絶滅危惧種となっていますが、東日本では少ないものの、西日本ではそれなりに繁殖分布していることが報告されています。私の住む愛知県や名古屋市でも準絶滅危惧種となっていますが、昔よりは減っているのでしょうが、それなりに出会う(もっぱら声のみを聴く)機会があります。越冬期にも見ることがあります。

 今年の繁殖期は、名古屋市東部丘陵のいくつかのため池を訪れる機会がありましたが、3か所のため池(図)で日中にヒクイナの声を聴きました。1か所目(図左)は都市公園に整備された元ため池(面積約0.6ha)で、池の周囲には遊歩道もあります。住宅地に囲まれ、水田からもやや離れています。ヨシ原が広がり(写真)、バン、カイツブリ、カルガモ、オオヨシキリもいました。2か所目(図中)は公園整備中のため池(面積約0.9ha)で、池の北~西には樹林が残るものの、その周囲は住宅地で、近くに水田はありません。池のかなりの面積がヨシ・ガマで覆われ、一部陸地化していました。バン、カイツブリ、オオヨシキリ、カワセミもいました。3か所目(図右)は公園に隣接する池(面積約0.9ha)ですが、池周囲は藪化して人があまり近づきませんが、西側は住宅地です。バン、カイツブリもいました。

  名古屋市内ではこの他にも、これらよりは大きなため池を取り込んだ都市公園での繁殖の記録があります。神戸市での研究では、池面積よりも湿地性植物の面積が重要だと指摘されています(渡辺・平野 2011)。繁殖期では、生息が確認された池の湿地性草原の面積は 0.28 ± 0.22haだったとのことなので、意外に小さなため池だけでも繁殖できるようですが、池がヨシ原に覆いつくされるようになると、調整池の機能が期待される池では、残念ながら浚渫工事をしなくてはという話になるようです。〔橋本啓史〕


図:ヒクイナのいた3つの池の緑被分布図。名古屋市の令和2年度緑被地GISデータで作成。左図の池は、実際には北部と南部はヨシ原に広く覆われている。



ヒクイナのいた都市公園の池



2023年8月18日金曜日

キジバトはアレチウリの“天敵”

 アレチウリは北アメリカ原産ウリ科の一年生草本で、生育速度が非常に速いつる性植物で1株当たり400~500個の種子をつけますが、25,000個以上との報告もあります。種子には休眠性があるので土壌シードバンクを形成し、全国の河川敷等で大繁茂し在来種が影響を受け一部では他の植物がほとんど生育できなくなっている場所もあり、特定外来生物に指定されています(環境省)。鳥類への影響も出ており、東京でも多摩川などのツバメのねぐら場所であるヨシ原にアレチウリが大繁茂し、ツバメがねぐらをとれなくなる例も増えており、関係団体がヨシ原保全のために駆除作業を行っています。  

 アレチウリは外来種なので、今のところ有力な“天敵”見つかっていませんでした。2021年10月11日、水元公園(東京都葛飾区)の水辺ゾーンに繁茂するアレチウリの果実を、地上で2羽のキジバトが盛んに突いているのを目撃しました。近づいて観察すると枯れた果実の中から種子を出して盛んに食べていました。【写真】 人が近づくまでの約8分で20~30個の種子を食べていたと思われます。今までアレチウリの実を食べる動物は見つかっていませんでしたので、キジバトは有力な“天敵”であることがわかりました。〔越川重治〕




2023年8月3日木曜日

ムクドリを数えてみました

 千葉県柏市のつくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅前には、2005年の開業からしばらくして、とつぜんムクドリの大規模なねぐらができて問題になっています。

ここはビルに囲まれるように駅前ロータリーにケヤキなどの樹木が植栽してあり、ムクドリがねぐらをつくる良い条件が整っています。ねぐらに集まるのは非繁殖個体で、繁殖期が終わる7月はじめには、その年に生まれた幼鳥も群れに加入して、個体数が多くなります。そして、夏から秋にかけてが最大規模になります。

柏の葉キャンパス駅前のケヤキ

先日7月4日、私はここにどのくらいの数の鳥が集まってくるのだろうと思い、調査してみました。ムクドリは日没寸前になると次から次へと群れが飛来し、めまぐるしく出入りするので正確な個体数を知るのはかなり難しいことです。そこで、大きな群れが1枚の写真に写るように撮影し、家に帰ってからパソコンで拡大しながら、1羽1羽印をつけカウントを試みました。写真を拡大して見ると鳥は意外と重なっておらず、かなり正確に数えることができそうです。その結果、4,518羽が写っていました。この写真には写っていない個体もいるので、おそらくこのときは約5,000羽がいると推定されました。

カウントした写真。4,518羽が写っていました

調査をしていて感じたのは、鳴き声による騒音もかなりの音量であり、また糞の臭いもかなりのもので、これはやはりなんらかの対策をしなくてはいけないなということです。

この場所では過去に、猛禽類の声や鳥が嫌がる音を流したり、さまざまな対策が講じられたそうですが、未だに解決には至っていません。また、天敵である猛禽類が駅前にはいないから、ねぐらができるという説がありますが、興味深いことにこのムクドリを狙ってハヤブサが飛来して捕食することがあり、どうも天敵説はあてはまらないように感じています。いったい何がムクドリを引きつけているのか、さらに調べる必要がありそうです。(柴田佳秀)

飛来するハヤブサ