2021年12月31日金曜日

『都市鳥ニュース No.31』を発行します

  年2回発行しています都市鳥研究会の広報誌『都市鳥ニュース No.31』を発行します。

今回は、前号に引き続いて「特集・首都圏のイソヒヨドリの今・2」として、埼玉県全域と東京都全域および区部(東京23区)【図】の状況を地図化して掲載します。とともに、それらの地域の「繁殖状況」を中心に紹介してあります。いずれの地区もまだ調査が十分でない感がありますが、相当な範囲に生息分布は広がっていることがわかります。

  そこで、今後の調査の力点を「営巣・繁殖」に置きたいと思っています。その参考となるものを誌面のトップで紹介しました。「奈良県吉野町におけるイソヒヨドリの繁殖観察日記」というタイトルで2019年の観察。繁殖生態の興味ある写真が多数掲載されています。とくにほとんど見ることができない抱卵中の姿や巣内ヒナのようすなどを知ることができます。また、同じ場所で複数回繁殖する際の状況など、さらにそれらが日記となって記されていますのでその経過を知ることもでき参考になります。〔都市鳥研究会・事務局〕




2021年12月18日土曜日

調査結果の速報~都心のカラスの個体数調査(2021年)

2021年12月12日に実施した第8回都心におけるカラスの個体数調査(2021年)の速報値をお知らせします。

都心3カ所の集団塒のカラスの羽数

自然教育園24羽、明治神宮1576羽、豊島ケ岡墓地1180羽、計2780羽

〇6年前の2015年の合計4816羽に比べ2036羽の減少。減少率は42.3%でした。

〇ピーク時(2000年)の18658羽に比べ85%の減少となりました。

〇特に自然教育園での減少が著しく、2015年の848羽から24羽へと激減。減少率は96.6%でした。

ただし、上記の数値は12月16日現在の暫定的な速報値です。現在、減少要因の分析や今後の課題なども含めて報告書としてまとめているところです。詳細は2022年発行予定の会誌『URBAN BIRDS』に掲載しますのでご覧ください。(文責 唐沢孝一・越川重治・金子凱彦)




2021年12月14日火曜日

速報・第8回東京都心3か所のカラス塒調査終わる

   折からのコロナ禍のなか、その実施を延期していた「第8回 都心におけるカラスの集団塒の個体数調査」を、1年遅れで、12日(日)の午後~夕方にかけて、東京都内3か所で予定通りに実施いたしました。本調査は、都市鳥研究会のメイン研究のひとつで、都内に増えてきていたカラス(おもにハシブトガラス)の個体数とその変化を知るために、明治神宮(渋谷区)・自然教育園(港区)・豊島ヶ岡墓地(文京区)の3か所で塒(ねぐら)に集まるカラスの数を調べているもので、1985年12月の第1回以来、5年ごとに実施し、今回は8回目で35年間のロング調査となっています。  

  調査員は全員、交通費を含めてボランティアでの活動。その一つの豊島ヶ岡墓地では、隣接する護国寺前に集合し、調査個所10地点・それぞれに調査員が配置され、午後1時過ぎ~5時までの約4時間、分担の方向を見続けて、カラスの出入りを観察しました。【写真・調査説明を聞く調査員たち】 10地点での合計は速報値で1,180羽。前回2015年は1,607羽でしたので、26.6%減という結果でした。

  幸いなことに、当日は好天無風で、冬とは思えない暖かさでした。調査にご協力いただきました54名の皆様にお礼を申し上げます。  

  東京都内のカラスは2000年をピークに年々減少していますが、今回の3か所全体の結果は、当会会誌の『URBAN BIRDS Vol.38』で発表予定です。その際には、詳細をこのブログでも紹介します。〔都市鳥研究会・事務局〕




2021年11月30日火曜日

東武東上線のムクドリの「駅前ねぐら」・第7報

  2015年8月14日から、ほぼ毎年のように本ブログにアップしている同名のタイトルも第7報となりました。今秋の9月~11月の状況を報告します。基本的にはこの6年間と“変わらず”ということになりますが、新しい動きも見られました。

    ひとつは、「新ねぐら地発見」で、今まで私の調査範囲では記録がなかった上福岡駅(埼玉県ふじみ野市)の駅前にムクドリのねぐらがあるとの情報で、10月28日に現地を訪れ、約1000羽のねぐら入りを確認しました【写真】。上福岡駅は急行電車が通過する駅で、本ブログによく登場している急行停車駅の「ふじみ野駅」の隣りです。  

  そのふじみ野駅はここのところのさまざまな対策が功を奏したのか、駅前から姿を消し、昨年は約1㎞離れた川越街道との交差点付近に移動していました〔2020年8月31日付をご覧ください〕。今秋の3回の調査では、9月27日に17時12分時点ではムクドリはいませんでしたが、川越街道の交差点まで確認にいき、17時50分に駅前に戻ってみると、駅前広場の5本のケヤキで数100羽の鳴き騒ぐ声を確認しました。しかし、その後、2回同地を訪れた時は、ムクドリの声はなく、駅前から続く通りに点々と設置された10台の「バードプロテクター」が次々と鳴り響いていただけでした。現時点では確証はありませんが、上福岡駅前に飛来したムクドリは、“追い立てると隣の駅に移る”というこの鳥の習性から、ふじみ野駅から移動したのではと考えられます。

 ちなみに、11月28日に上福岡駅での再調査をしたところ、約500羽のねぐら入りを確認しました。その後電車で約6分のふじみ野駅に立ち寄りましたが、やはりムクドリの気配はありませんでした。  

  もう一つの変化は川越駅からムクドリのねぐらが消えたことです。川越駅には9月21日と11月3日に訪れましたが、東口・西口とも糞跡もなくムクドリのねぐらの“気配なし”といったところです。この地でねぐらが確認できなかったのは昨秋も同じで、ねぐら地が西武新宿線の本川越駅に移ったのか、現在経過調査しているところです。[川内 博・桂子]



 

2021年10月30日土曜日

全国鳥類繁殖分布調査報告書“日本の鳥の今を描こう 2016-2021年”の紹介と 越冬期調査への協力のお勧め

「調査にご協力いただいた皆様へ」ということで一冊の報告書が10月29日に郵送されてきました【図1】。中身は、わが国で繁殖している鳥たちのそれぞれの繁殖状況が、1970年代・1990年代・2010年代の3つの日本地図に記されています。例えば、当会が調査・研究しているイソヒヨドリの図版を見れば、かつては“海岸線に固着していた鳥”が、いつごろから内陸部にも進出したのか、そして今はどのような繁殖分布になっているかが一目でわかるようになっています【図2】。

報告書には、同じような図版が種ごとに、278種余掲載されています。全国を対象としたこのような繁殖地図は、世界的に見てもトップクラスのレベルです。

報告書自体は協力者や団体だけに配布される非売品ですが、多くの方が利用できるようにPDF版が公開されているとのことです。詳しくは下記にアクセスください。

https://www.bird-atlas.jp/pub.html

この事業を推進してきたNPO法人・バードリサーチは、この冬も「越冬分布調査」を継続するとのことで、その協力を呼びかけています。繁殖分布とともに、越冬期の状況も図で示せるようになれば、さらにさまざまな形での活用が広がると思います。  また、これらの調査が“ボランティア”で行われていることも意義が高いと思います。“野鳥の識別ができる”ということは一つの特技です。一人ひとりの観察や調査は小さいものですが、一つにまとまれば、日本の自然環境の「今」を記録することができます。ぜひこの活動にも一助をお願いします。(川内博)

https://www.bird-atlas.jp/winter.html

                              

(図1)

(図2)




2021年10月12日火曜日

NHK「ダーウィンが来た」でイソヒヨドリを放送 その感想

前回のブログでも紹介しましたが、10月10日にNHK総合チャンネルで放送された自然番組「ダーウィンが来た」では「街に大進出!青い鳥の謎」と題して、イソヒヨドリが取り上げられました。

イソヒヨドリは、今まさに現在進行形で従来の生息地の海岸だけでなく、内陸の市街地でも姿を見るようになっている鳥です。その詳しい生態をテレビの自然番組で取り上げられるのは、おそらく初めてのこと。どんな内容になっているのか、放送が始まるまでワクワクして待ちました。

舞台は東京八王子。内陸イソヒヨドリがかなり早い段階で確認された場所です。イソヒヨドリの取材ならば、やはりここを選ぶでしょうね。

それにしても、八王子には本当にたくさんのイソヒヨドリがいるのでビックリしました。当然、そのことは知っていたのですが、それにしてもここ数年の増加ぶりがここまでとは思いませんでした。営巣箇所が50もあるとは。これは八王子・日野カワセミの会の調査の賜です。

映像は、繁殖の様子がよくわかり興味深い物でした。とくに巣立ちビナがハシブトガラスに襲われるシーンは、都市鳥の宿命をよく表しており、残酷なシーンですがカットしなかったのは拍手を送りたいです。また、イソヒヨドリはいるのがわかっても、なかなか巣が見つからない鳥なので、撮影はそうとう苦労されたと思います。さらにこのコロナ禍ですからなおさらでしょう。また、都市での鳥の撮影は、取材許可を取るのが本当に大変なんです。私は元ディレクターで、過去にいくつも都市の鳥を取材し番組を制作した経験があるので、その苦労は他人事ではありません。とくに近年は厳しさを増していると言いますから。

番組の核心部である、「何故、海から街へ進出したのか」その答えの一つとして、崖はイソヒヨドリの重要なソングポストであり、高いビルはそれと同じ機能を持っているという着眼点は納得いくものでした。じつは私も同じ事を感じていて、イソヒヨドリは縄張りを強く守る習性があり、見晴らしの良いソングポストはライバルの侵入を阻止するのには欠かせないと思っていたからです。

しかし、その他の説明では、納得いかない内容がいくつかありました。

一つは、イソヒヨドリの囀りは街の騒音の中でもよく通り、遠くまで聞こえやすい音域の特徴があること。それはもともとの繁殖地が海岸で波音がうるさい環境で育まれてきたものという説明がありました。しかし、イソヒヨドリはユーラシア大陸南部に広く分布する鳥で、海岸で繁殖しているのは日本と韓国だけ。ヨーロッパなどでは波音がしない山の中でも繁殖しており、そこのイソヒヨドリも同じような声で囀ることがわかっています。したがって、そもそもそのような音域の囀り持った鳥であって、波音がという推論は当たらないと思うのです。

世界のイソヒヨドリの声はこちらで聞くことができます。 

もう一つは、内陸進出をはじめたきっかけが、海岸部の開発でそれによって従来の生息地である崖がなくなったからという説。しかし、海岸部に行ってみればわかりますが、今でも普通にイソヒヨドリは生息しており、少なくなったというデータも私が知る限りではありません。また、崖がなくなったとしても人工物が代用されるため、イソヒヨドリがいなくなるとは到底思えないのです。

都市鳥の進出理由ではよくある説ですが、私の考えではこのような消極的な理由の鳥は見当たらず、都市進出はもっと積極的なメリットを見いだして行われているのではないかと思うのです。

今、まさにそのことを私を含めて当会は研究を進めているのですが、まだ、そのはっきりとした答えはわかっていません。でも、おぼろげながらそのストーリーは浮かびつつある実感は持っていますので、それを証明するために今後も調査を続けていこうと思っています。(柴田佳秀)







2021年9月24日金曜日

東京の八王子・日野市域のイソヒヨドリが『ダーウィンが来た』で 紹介

 9月10日~13日にズームで開かれた「日本鳥学会2021年大会」では、当会からは埼玉県和光市内での今年の営巣のようす【写真・川内 博氏撮影】や、東京都・埼玉県でのこれまでの生息状況とともに、関東地方でもっとも生息・繁殖密度の高い八王子・日野市域での営巣状況を発表しました。

その八王子・日野市域でのイソヒヨドリの生態が、NHK総合の人気番組『ダーウィンが来た』で10月10日放送されるとのことです。同地での撮影は2019年から始まりましたが、昨年はコロナ禍で中断されたとか。

市街地のイソヒヨドリの生態がテレビ番組として紹介されることは初めてと思われます。タイトルは「ダーウィンが来た! ~街に大進出 青い鳥の謎~」とのことです。ご感想をお寄せください。

それに先立ち、9月26日の『ダーウィンが来た』の「ミニコーナー」では、東京・麹町でのイソヒヨドリのようすが紹介されるとのことです。麹町は東京でも一番の中心街のひとつ。都心部での生態はまだわかっていませんので、一つの情報としてとらえています〔都市鳥研究会・事務局〕




2021年9月8日水曜日

夏鳥・アカショウビンの東京での近況

 東京23区では渡来が途絶えていた夏鳥・アオバズクが、2年連続で繁殖したことは、“夏鳥復活か”とのやや希望もまじえて前号で紹介しましたが、先月末の8月31日、同じく激減しているカワセミの仲間の夏鳥・アカショウビン〔赤翡翠〕を、埼玉県和光市新倉6丁目で発見しました。ただし、残念なことに自動車事故死と思われる落鳥の形で【写真1・2】。 発見場所は通称「水道道路」と呼ばれる車道の歩道で、東京外環自動車道と立体交差するあたりでした。死後数日たっているようで、大きなハエが死体に止まり、下腹部には多数の蛆がわいていました。胸に黒っぽい横斑があることや全体的な色あいから今年生まれの若鳥で、渡りの途中で絶命したと思われます。合掌。  

  ところで、昨年の5月、人流の多い「JR新宿駅東口」に、サギの仲間の希少種ミゾゴイ〔溝五位〕が現れ、ネットやマスコミで紹介されていましたが、この鳥も激減いちじるしい夏鳥です。しかし、21世紀に入り、東京23区の足立区の舎人公園や世田谷区の蘆花公園、江東区の公園などで観察されることがあり、私もフィールドとしている港区の自然教育園で2017年4月に記録し、『自然教育園報告・第49号』に報告しました。ミゾゴイは「里の鳥」で、比較的身近な場所でも繁殖しているようですが、羽色・行動・鳴声などが地味で目立たないため、その生息状況はよくわかっていない鳥のひとつです。  

  一方、アカショウビンは印象的な大きな声で鳴き、姿も派手な赤色で目立つため、生息していれば必ず記録される鳥です。東京では山地部の奥多摩で少数繁殖しているようですが詳細は不明です。かつての名所・高尾山(八王子市)では、1981年を最後に繁殖期の記録が途絶えます。しかし2015・2016年の繁殖期に長期間観察されました。その年に繁殖したか否かは不明ですが、今後吉報を期待したいところです。

  アカショウビンもミゾゴイも“としちょう”とは無関係な種類の鳥と思われますが、本来の生息地に住宅や道路が迫り、環境が悪化するという都市化が激減の一端であることは間違いないことです。その復活はこれからも注視していきたいと思います。 〔川内 博〕


写真1



写真2

2021年8月18日水曜日

夏鳥・アオバズクの親子…東京23区で2年連続繁殖確認

 ここのところ、東京都内の市街地や郊外の緑地で、キビタキやサンコウチョウなどの夏鳥の声が聞かれるようになってきました。まだ手放しで喜べるような状況ではありませんが、“夏鳥復活”傾向が見られています。そんななかアオバズクがここ2年連続して、東京23区内で繁殖が記録されました。  

  アオバズク[青葉木菟]は、フクロウの仲間の夏鳥で、樹洞で営巣し、大型のガや甲虫などを主食とする猛禽類です。東京ではかつて池袋に近い、鬼子母神の並木がこの鳥の名所で、1931(昭和6)年~1972(昭和47)年の約40年、継続的な観察記録が残されていましたが、その後東京23区での営巣記録は急速に減って、1990年代には4か所程度、2000年代に入ると確実な繁殖記録は1例だけとなってしまいました。2004年からはその場所も宅地に代わり消滅し、ここ15年くらいは23区内での営巣記録は途絶えていました。

  そんな中、昨年・今年と住宅街の緑地で繁殖が見られています。写真は今年のもので、巣立ちビナが2羽確認できました【写真1】。  

 アオバズクの激減は東京23区だけでなく全国で見られ、その原因は餌となる大型の昆虫(カブトムシやクワガタ、ガなど)の減少・巣穴となる樹洞の減少・越冬地の環境悪化などが挙げられています。いろいろ検討してみると、どうやらそれらが合わさっての根の深い問題のようです。

 コロナ禍のなか、運動もかねて近場の公園を暗くなってから散歩していると、テニスコートやサッカー場では大勢の人がまだプレーを楽しんでいました。競技場の周囲には大型の照明とともに誘蛾灯が光っていました【写真2】。その明かりの周りには虫たちが飛び交い、誘蛾灯に感電したバシッ・バシッという音が聞こえていました。都会では明かりに虫が集まらないことが多く、久しぶりに見る光景でした。アオバズクの食べ物が少しは増えたのか?都市環境下での調査の楽しみがひとつ増えました。(川内 博)

写真1 母鳥と2羽の巣立ちビナ


写真2 虫たちが集まる明かり



2021年8月1日日曜日

様変わりした東京の“ドバト事情”

  街なかの鳥「ドバト」にどんなイメージをお持ちでしょうか。かつては“かわいい・愛すべき隣人・平和の象徴”とプラスイメージだったこの鳥も、近年は“気持ち悪い・糞が汚い・病原菌を媒介するのでは”などのマイナスイメージが強くなり、「ハト公害」として嫌われることが多くなりました。

  実際、東京のお寺や神社の境内、駅前の広場、街なかの小公園などから給餌する人は激減しています。かつては2000羽を数えた浅草・浅草寺の境内では、今は50羽程度しか見かけません。また、最近は、渋谷や池袋などの駅前や公園でも、20羽もいれば“いた!”と思うほどの状況です。逆に目立ちだしたのが、公園の林の下や道端の雑草の間などで「採餌」をするドバトたちです。

 公園の林床や川の土手などで餌をついばむ姿は、“野生生物”です。大きな群れでいることは少なく、数羽~10羽程度で、キジバトと混じっていることもよくあります。

 ここ数年来の夏に目につくのは、道路ののり面や土手などで、大規模な草刈り後に、群れで採餌している姿です【写真】。

 東京の市街地では、今世紀に入って、人による給餌が減っているうえに、ドバトを主食とするオオタカが増えています。かつて街を“天国”としていたドバトたちは、“野鳥”として生きていくのでしょうか。〔都市鳥研究会・川内 博〕





 

2021年7月15日木曜日

おもしろいカラスの行動2つ・東京・代々木公園

   最近オリンピックがらみで何かと話題に登場する東京・渋谷の代々木公園で、この6月にカラスに関わる2つの行動を見かけました。東京都内からはカラスの数は減っていますが、代々木公園は今も都内有数の“カラス天国”です。我が物顔に飛びまわっているのはハシブトガラスですが、以前はごく少数だったハシボソガラスも目立つようになってきました。  

  今回の主役はハシブトガラスで、1つは「なに?・これ!」というカラスのしぐさです【写真1】。この姿をみてまずイメージしたのは、写真や映像でみたことのあるアフリカのクロコサギ Egretta ardesiaca の特異の行動と、実際見たことのある「蟻浴」でした。「蟻浴」とは明らかに動きが違い、また、羽・周辺にアリの存在はありませんでした。

  そこで、日ごろ野外で鳥の観察をしている知人多数に「こんなカラスは見たことありますか?」と発信したところ、10人の方から返信があり、いずれも「見たことがない」ということでした、「蟻浴・日光浴ではないか」・「クロコサギのそれを想起する」ということが多数で、この行為自体はあまり見られていないことがわかりました。

 1回だけの観察ですので、この個体特有の「くせ」ではないかと再調査をしていたら、「なんで!?」という行動を見かけました【写真2】。“モグラの土盛りの中からコンクリートのかけらを掘り出し、咥えて別の場所に運び、上から落ち葉で完全に隠す”という行動で、コンクリート片はカラスに比べて大きく・重そうで、何のために?という疑問を持ちました。北海道でカラスを研究している会員からは「遊び」ではという示唆がありました。可能性は大だと思いますが、その動作は手慣れてスムーズなものでした。

 2つの行動について、同じような観察をされた方・なんらかの「答え」をお持ちの方・興味をお持ちの方は、都市鳥研究会あてにご連絡ください。(川内 博)


写真1


写真2

2021年7月9日金曜日

都市鳥ニュース「首都圏のイソヒヨドリの今・その1」を発行

毎年2回発行している『都市鳥ニュース』の本年1号の「№30」を発行しました。内容は、首都圏のイソヒヨドリの動向の紹介で、東京・多摩地区での状況、千葉県・神奈川県の近況で、いずれも以前に比べ、生息・繁殖の観察頻度が格段に増していることがわかります。

東京郊外の中核市「八王子市一帯」での営巣地は増加が続いていて、JR中央線・京王線などの鉄路伝いに分布を広げていると思われる状況が目立っています。また、上記以外の多摩地区でのまとまった初めての報告「多摩地域のイソヒヨドリ-東京内陸部での増加-」が掲載されています【写真】。 その生息・繁殖の広がりは線から面になっていて、近いうちに関西圏のように「準・普通種」(数は少ないが、気をつければ見られることがある)レベルになる可能性が示唆されています。

 同じ傾向は、関東でのイソヒヨドリ先進県・神奈川でも同様で、面的な広がりが報告されています。千葉県では、内陸部の目撃は2010年代に入って急激に増え、2020年代には倍増しています。

今号は12ページの予定でしたが、4ページ増やしても足りないくらいで、東京23区・埼玉県の状況は次号送りとなりました。次の発行は12月の予定です。  『都市鳥ニュース』は当会の広報誌となっていますので、入手をご希望の方にはPDF版をメールでお贈りしています。お申し込みは下記へお願いします。〔事務局〕 

Email:hkawachi2dream@yahoo.co.jp


アンテナにとまるイソヒヨドリの雄(鈴木遼太郎氏撮影)

2021年6月16日水曜日

千葉県柏駅周辺のイソヒヨドリ

 自宅の最寄り駅である千葉県柏駅の周辺には買い物のために毎日のように出かけます。駅周辺はハクセキレイの塒やチョウゲンボウが営巣場所があり、都市鳥研究にはなかなか興味深いフィールドです。

その場所でイソヒヨドリを初めて確認したのは、2012年11月12日のこと。このときは囀りだけの確認でしたが、ついに近所にもイソヒヨドリがあらわれたかと感激したのを覚えています。しかし、翌年は確認できずにガッカリ。翌2014年秋には再び確認できましたが、分散途中の個体が立ち寄っただけで、それから数年間は同じ状況でした。

ところが2019年には3月から頻繁にイソヒヨドリを目撃するようになり、6月3日にはついに営巣箇所の確認に成功。さらに2020年には2カ所で営巣を確認し、今年もまったく同じ場所で繁殖していることを確認しました。興味深いことにどちらも、ビルの壁面に設置されている換気扇に巣があり、重要な営巣環境を換気扇が提供しているのではと思われました。

イソヒヨドリの観察では3つの難しいことがあります。1つは観察を行うタイミングです。大きな声で囀るので確認は簡単そうに思われますが、長い期間四六時中囀っているわけではないので、上手いタイミングで調査をしないと見つけられない事があります。日常的に通う場所であれば、うまく囀りのピークに出会えるので見つけられますが、そうでない場合は見落としもありそうです。

2つ目は、営巣場所の特定です。街中にいるのであまり警戒心がないと思われがちですが、イソヒヨドリは思ったよりも警戒心が強く、なかなか巣の場所を教えてくれません。車の中で警戒されないようにするか、あまり注目しないようにさりげなく観察するコツが必要です。また、強く警戒しているときは囀りながら翼を持ち上げるので、こんな時は「ごめんごめん」と言いながら退散します。深い追いをして繁殖に悪影響を与えてしまっては元も子もないですから。

3つ目は巣立ちの確認です。じつは柏駅周辺の2カ所の巣では、巣立ちを確認していません。ある日、突然、巣からヒナの声が聞こえなくなるので、巣立ちとしますが、巣立ちビナの確認ができていないのです。これは頻繁に通うほか方法がないので、来年は可能性のある時期を重点的に確認したいと考えています。(柴田佳秀)

この換気扇の中に巣がある


パンくずをくわえているメス


強く警戒するポーズ



2021年6月3日木曜日

和光市・イソヒヨドリの繁殖2例目・発見記

  当会の事務局のある埼玉県和光市は東京23区に隣接しているため、東京の“出ベソ”のような施設がいくつかあります。そのひとつが「東京メトロ」の車庫、また6年前には「東京北部郵便局」というものが、越戸川沿いの畑地につくられました。これは、ネット通販などの普及に伴って物量が多くなったため、ゆうパック事業の業務を効率化するための施設です。6階建て(見た目には4階建て)の巨大な建物で、大型のトラックが四六時中出入りしていて、2年前その屋上の縁で囀っているのを確認していました。その後、この場所は“要チェック地”として、荒川支流の越戸川、新河岸川の調査の際には囀りが聞こえないかと注意をしていました。しかし、その後はまったく出会えませんでした。

  

  5月20日の早朝、カワセミの営巣地を探しに越戸川で観察していると、“この鳥は何ですか?”と声をかけられました。スマホに映っているのは雄のイソヒヨドリ【写真1・トリミング拡大】。遊歩道の手すりに止まっていたとのこと。1週間後の5月28日早朝、イソヒヨドリの撮影者の星野さんに再び出会ったあと、その発見場所に行ったら、今度は雌が手すりに止まって採餌をしていました【写真2】。驚かせないように、慎重に追っていくと、ついに餌をくわえて東の方向に飛び去りました。その方向には東京北部郵便局が。餌をくちばしにした雌親は、警戒しながらもついに、3階の作業場の天井の鉄骨の上に入っていきました。持ってくる獲物はアオムシ・ムカデ・カナヘビなどさまざまです【写真3】。

  

 2年前に和光市駅南のイトーヨーカドーの駐車場で巣立ちビナを発見(本ブログ・2019年7月22日付け参照)して以来、和光市では2例目の繁殖記録となりました。その後のようすも含め、詳細は、当会広報誌『都市鳥ニュース・№30』(6月発行予定)に掲載します。『都市鳥ニュース』はPDFで、会員にメールで送られます。興味ある方は、当会HP「入会案内」をごらんください。〔都市鳥研究会・事務局・川内〕


写真1 越戸川畔で撮られたイソヒヨドリの雄・星野裕司氏撮影


写真2 同じ場所で雌も発見・川内撮影


写真3 営巣地の東京北部郵便局前の電柱にて・川内撮影



2021年5月16日日曜日

アブラコウモリが明るいうちに飛ぶと

  コウモリは夜行性だが、希に昼間飛ぶこともあります。人里に生息しているアブラコウモリの場合は、特に人目につきます。われわれも4月に一回、8月に一回、正午くらいに飛ぶ姿を目にしています。理由は想像の域を出ないのですが、アブラコウモリは人家などの隙間をねぐらにするので、攪乱されたのか、真夏なら暑すぎたのか、春先なら冬眠明けで日周リズムが狂ったのかもしれません。

 また、季節とはかかわりがなく、夕方のねぐらからの出巣が、日によってはまだ充分明るい時間帯のこともあり、時には日没より1時間以上前に出巣することがあります。普段われわれがアブラコウモリを観察している住宅地と農耕地の間を流れる埼玉県川越市の川辺には、まだ明るい中を十頭以上のアブラコウモリが飛び交っていることがあります。

 コウモリが夜行性であるいちばんの理由として、イギリスのスピークマンは、明るいうちに飛ぶと鳥に捕食されることを挙げています。そのほか、体温が高くなりすぎ、鳥との餌を巡る競争、鳥によるモビングなども挙げています。

 われわれのフィールドで、昨年ツミが営巣して抱卵していましたが、結局ヒナは見られず繁殖は失敗しました。このツミが、夕方まだ明るいうちにアブラコウモリが出てくると次々と捕えていました。今年も4月にツミのつがいがやってきて、一時期アブラコウモリを捕食していましたが、昨年の古巣は既にハシボソガラスに乗っ取られ、新たに作った巣は、オナガが騒いでいたせいか放棄してしまいました。

 同じ場所で、ハヤブサ、チョウゲンボウがアブラコウモリを捕獲するのも見かけます。ハシボソガラスに捕らえられたのを見たことも一度あります。 アブラコウモリは小さく、飛ぶのも遅いので、小柄なツミにとって格好の標的なのでしょう。ツミは、比較的明るいうちでないと捕食しませんが、ハヤブサやチョウゲンボウは、日没を過ぎてかなり薄暗くなってもアブラコウモリを捕食しています。

 ツミは近年都会に進出していますが、アブラコウモリをどの程度捕食しているのか、またツミ以外でもアブラコウモリが明るいうちに飛んでいるときの捕食例などあったらお聞かせ願えればと思います。

【ホームページ・ブログの紹介】オオコウモリを中心にコウモリ全般の話題を書いているわれわれのブログとホームページ。最近はコロナのため近所のアブラコウモリの撮影が多いです。

(大沢啓子 大沢夕志)

https://fruitbat.at.webry.info/

http://www2r.biglobe.ne.jp/~fruitbat/

http://fruitbat.jp/


写真1:昨年ツミのいた木立の下で集めたアブラコウモリの残骸 
ツミの餌の受け渡し場所の下で拾ったものの一部

写真2:チョウゲンボウに襲われるアブラコウモリ
チョウゲンボウに捕獲された瞬間



写真3:明るい時間帯に飛ぶアブラコウモリ
2021年4月16日17:10に住宅街の横の河原を飛んでいた。
当日の日没は18時16分





2021年5月7日金曜日

都市環境下での都市鳥たちの繁殖・カワセミの営巣地2例

  かつては“幻の”ということばがついていたカワセミが、全国的に興隆している昨今です。その一因に人為的な助けが大きくなっています。とくに都市環境ではその度合いが増しています。

 1980年代以降の東京都内でのカワセミの営巣地を見ていると、自然の崖地での営巣は皆無に近く、ほとんどは「人工の崖地」でとなっています。人工崖地のつくりは時代とともに変化が見られ、当初は水辺に土を盛り、壁面を削り垂直な土壁をつくり、カワセミが自力で横穴を掘って巣穴をつくるタイプが主流でした。しかし、その後、河川改修などの際に、擁壁に穴を開けたコンクリートブロックを用いて、営巣ができるというような形が登場し、全国的に広まりました。その後さらに“進化”し、擁壁の穴の奥の育児室となる部分に、最適な土を入れた箱型の「セット巣箱型」が流行っているようです。

  「人工崖地」は、設置当初の利用度合いは高いものの、数年たつと放棄されることが多いのが現状です。理由はさまざまですが、結論的には“巣立ち率が低い”からだと考えられます。営巣しても次代が育たなければ繁殖の意味がありません。

  今春、東京下町の2つの事例を見てきました。1つは古典的な土盛りタイプで、10年前くらいに造成され、数年間は連続して巣立ちが見られましたが、ヘビに襲われ放棄。昨年穴を塞ぎ、新しく壁面を切り出したところで復活し、今年は元気に多数の穴を掘ったりして【写真1】元気に繁殖活動に励んでいましたが、残念なことに、今春もヘビに襲われ全滅したとのことです。

 もう1つは、川岸沿いの人工島に造られたカワセミ用の人工崖。こちらは崖の壁面が鉄板になっていて、ヘビ対策はできているようです。そのためか、巣穴のひとつには、多分無事に巣立ったと思われる“証拠”が残っていました。【写真2】

 東京のカワセミは、東京湾から50㎞も離れた奥多摩近くまで行かないと、その姿は見られないという状況に追い込まれましたが、近年は東京湾の間際まで営巣が見られる状況になっています。今後もその実態を追っていきたいと思っています。(川内 博)


【写真1】土盛りタイプの人工崖地



【写真2】鉄板製の人工壁面



2021年4月13日火曜日

驚いた“駅前イソヒヨドリ”・東京青梅編

  JR青梅駅は「東京・奥多摩」の玄関口。東京湾からは約60㎞内陸に入り、標高は200m。東京都青梅市は人口約13万人、奥多摩地域の中心地で、かつては綿織物や林業がさかんで、今でも「業務核都市」となっています。

  とはいえ、“山麓”の町で“海”とは縁遠い場所です。日本野鳥の会奥多摩支部の幹事をされている荒井悦子さんのご案内で、駅前の営巣地を歩きました。駅前商店街は年季の入った店が並んでいて、かつて栄えた町に多い“蔵”が各所にありました。荒井さんによると、蔵の屋根の隙間を利用する例が多いとか。また、マンションの利用も目立つとのこと。

 街を歩きながら、この店で営巣している可能性がある、あそこのマンションでは例年巣立ちビナが見られるなどと説明を受けて歩いているとマンションの屋根の屋上で囀る雄が、しばらくすると雌が姿を現すといったことが次々と続き、約1時間、駅から500m圏内で雌雄の姿【写真1】を見かけたのが4か所。圧巻は駅前のビルの窓の庇の裏側に入っていく2羽を確認【写真2】。 

 “東京のイソヒヨドリのメッカ・八王子市”でも、こんな密度では生息していないレベル。八王子・青梅とも、従来の“磯ひよどり”からは想像もつかない状況です。しかも、今のところその変化の理由はわかっていません。しかし、彼らが全国的に「内陸部に進出」していることは事実で、その謎解きは必須の状況です。〔都市鳥研究会・川内〕

 

写真1

写真2


2021年3月28日日曜日

一区切りする「東京駅のツバメ調査」・成果をお楽しみに

今年も「ツバメの初認」の声が聞こえる季節です。サクラは満開で・陽気もいいので・・・と春を楽しみたいところですが、“何となく陰鬱で”というのは言うまでなく“コロナ禍が治まらない”からです。

  当会が5年ごとに実施している「東京駅を中心とした3㎞四方におけるツバメの繁殖状況」の調査(略称:東京駅のツバメ調査)は、昨年の調査を1年延期して今春に行う予定でした。2月下旬に調査担当者の意向を尋ねたところ“緊急事態宣言が解除されれば実施”という声が多かったのですが、3月22日日に解除されてもご承知のように“第4波”を心配しなければならない状況です。

  そのような情勢を考慮し、第7回〔30年目〕の一斉調査は中止することとします。写真は、空き缶で作られた「人工巣の若ツバメたち」。約40年前に、トヨタ財団第3回研究コンクール“身近な環境をみつめよう”で研究奨励特別賞を受けたときにつくったテレフォンカードです。

  ツバメの人工巣のあった建物はすでになく・テレフォンカードも死語に近い状態ですが、“銀座のツバメ”は健在で、屋上につくられた養蜂場のミツバチを食べて元気なようです。

  30年続いたこの調査を一区切りして、コロナ禍が治まる頃にまでは、何らかの成果を発表したいと思っています。[都市鳥研究会・事務局]

 



2021年2月25日木曜日

スズメの受難・・・“お宿”の水抜き孔に金網が

 コロナ禍のなか、ここのところ近場で都市鳥の状況をチェックしています。

そんななかで、毎年、何番いものスズメが営巣していたコンクリート壁の水抜き孔【写真1】に、真新しい金網が被せられていました【写真2】。

しかも人の手の届かいない位置のいくつもの孔に。たぶん、コンクリート壁の向かい側の新興住宅の住民が、市に働きかけ、孔を塞いだと思われます【写真3】。

というのは、繁殖期には、ここで営巣していた5番いくらいのスズメ夫婦の声でも、うるさく響き渡っていたからです。[情報提供は川内 博氏・埼玉県和光市内にて撮影]

 鳥類による人工構造物への営巣:日本における事例とその展望」という読み応えのある総説が、一昨年の日本鳥学会の和文誌『日本鳥学会誌』〔68(1):1-18(2019)〕に載せられています。

著者は当会会員でもある三上 修氏。日本や世界の状況を知ることができ、触発される内容となっています。当会の会誌からの情報も多数使われています。  

一つひとつは小さな観察や調査でも、データが集まれば、何らかの意義が生まれるという典型で、今後も人や社会と関わり合って生きる「都市鳥」の動向を記録し続けていきたいと思います。〔都市鳥研究会・事務局〕


写真1

写真2

写真3


 

2021年1月28日木曜日

東京都心部のオオタカの新繁殖地・新宿御苑

 “外国人が好む日本の公園”として知られている「新宿御苑」。交通の便がいいのと、広々とした芝生地があり、四季折々の花と緑、日本庭園・イギリス風の庭・フランス式の庭園、台湾閣など見どころいっぱいで、コロナ禍以前は、各国のことばが入り混じる国際色豊かな緑地でした。今は「緊急事態宣言」を受けて休園中ですが、その園内であることがひそかに進行していることが予想されます。それはオオタカの“古巣の補修”

  昨年初めてここでオオタカの営巣が発見され、1羽のヒナが無事巣立っていきました。【写真:雄から餌をプレゼントされたオオタカの雌】 その報告は、近日発行の当会会誌『URBAN BIRDS』Vol.37に掲載されます。真冬ですが、来るべき繁殖の準備は始まっています。


「オオタカ」は自然保護・環境保全のシンボル的な猛禽としてよく知られたタカで、以前は環境省のレッドリストにリストアップされていましたが、生息数が増えたということで2017(平成29)年に保護指定が解除されました。

 東京都内では、かつては郊外の多摩地区や山地の奥多摩地区でその生息と繁殖が少数知られていましたが、最近は、東京でももっとも都市化された「23区」内で両手に余る営巣地が知られています。その多くは“知る人ぞ知る”状態ですが、皇居・明治神宮・自然教育園の3か所は繁殖地として公表されています。今回の報告で新宿御苑も加わります。

  園内での営巣は継続される可能性が高いと考えています。「都市鳥・オオタカ」が誕生している実態を、今後も追跡していきたいと思っています。〔川内 博〕   

     


2021年1月23日土曜日

企画展「小石川植物園の野鳥」へ行こう 1月5日~3月31日

東京23区には江戸時代由来の庭園が点在しています。なかでも文京区には、江戸時代の大名屋敷に由来する緑地がいくつもあります。小石川後楽園や六義園、肥後細川庭園などで、そのようすを空から見ると、まるでコンクリートの海に浮かぶ緑の島のように見え「緑島(りょくとう)」と呼ばれています。

  今回ご案内する「小石川植物園」もそのひとつですが、その成り立ちがちょっと違っています。緑島の多くは大名屋敷の庭園で、池を中心に、土地の起伏を生かし、築山を築いて、・・・というのが一般的ですが、小石川植物園は「小石川御薬園」がそのはじめ。明治時代以降は東京大学理学部付属の植物園として今に至っています。そのため管理の方法が「造園」ではありません。景観もまったく違っています。

 今回、この地で写真を撮り続けている井上裕由さん(都市鳥研究会会員)の野鳥作品を使っての企画展【ポスター】に登場する鳥のなかには〝大都会の真ん中にこんなのがいるの!?〟と驚くような希少種も混じっています。薬草園のほかに、湧水が流れ込む大小の池、広い芝生地、斜面に広がる森などが103種もの野鳥(井上さん調べ)の観察を可能にする自然豊かな「緑島」を構成しています。「東京の都市鳥」、けっこう幅が広そうです。〔川内 博〕

〔展示期間〕2021年1月5日(火)~3月31日(水)  〔場所〕小石川植物園(東京大学付属植物園)・柴田記念館 10時半~16時<月曜・木曜日休館> 入館料無料(植物園の入園料は必要)