2022年10月16日日曜日

住宅地でのムクドリの大規模ねぐら発見・「東京・練馬区」

東京・池袋始発の東武東上線沿線での「駅前ねぐら」情報は、本ブログで連載していますが、調査に行くたびに変化が見られ、“あの大群はどこに行ったの?”という事例が続出しています。

そんななか、昨秋、自宅の窓からあれ?という光景を見かけました。南に飛んでいく30羽程度のムクドリの群。東上線朝霞台駅(JR北朝霞駅)は北西方向なのにと思い、今秋9月16日、その方向にある東京23区の西端・練馬区大泉地区を探査してみました。この一帯は戸建ての住宅が広がり、鉄道駅から離れた環境なので、どんなところにねぐらがあるか興味を持ち自転車で回ってみました。

調査開始当日さっそく、この地区一番の商店街沿いの高圧鉄塔に集まった1000羽程度の群れを発見しました。しかし、時刻は17時。就塒前集合地と判断し、一帯を回っていると30分後、関越自動車道ぞいに飛ぶ500羽程度の群れを発見。しばらくあたりを探しましたがその日はそれで終了。次に調査に出かけたのは10月3日。16時40分から前回認めた場所から飛んで行った方向へ進むと、小学校の裏手の森でムクドリの群れ。ここも就塒前集合地と判断し、さらに回ると、いつも自転車で石神井公園へ行く道に入り、白子川にかかる水道橋ぞいの通りの電線で大群を発見。

近くで散歩していた老夫婦に聞いたところ、“秋にはいつも群れが見られる・今年は例年より多い”とのこと。そして最終的に集まるのは「ハード・オフ」駐車場前のケヤキ3本だとも近くにいた別の人が教えてくれました。その日は5000羽以上と思われる群れのねぐら入りを確認。1週間後の10月10日再確認。やはり5000~6000羽と思える群れを確認しました。

場所は、東京外環道と関越自動車道が交わる大泉ジャンクションそばの目白通り沿い。付近にはハード・オフのほか、スーパーバリュー・銚子丸・平城苑などが立ち並ぶ一角。やはり“にぎやか”ところでした。このねぐらがいつからできているのか、いつまでいるのかは今のところ不明。それにしても、また“仕事”が増えたといったところです。〔川内 博〕









2022年10月5日水曜日

文献紹介 東京・世田谷区でのツバメ調査報告書

野生動物の中で、もっとも身近にいて愛されているのはツバメでしょう。目の前で一所懸命に子育てをする光景は、街でも村でも同じで、心和むシーンです。

ツバメの研究は、全国で行われていますが、この春に発行された『世田谷区内ツバメ繁殖数調査報告書 2021(2018~2021年)』は、精査な調査・精緻なまとめで、熱心に調査・研究をされている方には有効な文献となると思います。

なかでも鉄道駅のガード下のT字状の梁に造られた巣を調べ上げて、その位置と数を示されているのは驚きです(4-6-3.喜多見駅ガード下事例)。駅前商店街で数多く営巣していたツバメが、2010年ごろからその営巣場所が拡大変化し、2015年以降、ガード下へと巣が集中したとのこと。そのきっかけは駅付近の道路拡張・商店街の店舗の改築改造などと考えられるようですが、なぜガード下に集中したかは不明とのことです。  また、大きなタクシー会社の車庫での集団営巣も興味あるところです(4-3-3.集団営巣事例)。こここでは2000年に1巣1繁殖が記録され、翌年には2巣2繁殖、2011年には8巣9繁殖、2018年に25巣40繁殖、そして2021年には22巣29繁殖となっているとのこと。

当会で調査している「東京駅を中心としたツバメ繁殖調査」でも、同じような事例があります。千代田区神田という東京の中心地ですが、そこに最盛期には6巣の巣が集中したときがありました。その原因は、ツバメが好む古手のビルが改築・改造されて、彼らの営巣に適した建物がなくなったことと、親切なタクシー運転手さんがいて、さまざまなカラス対策を講じていたのがその理由のようでした。

世田谷でも、「乗務員さんたちの面倒見がよく、巣材になる泥を置いたり、カラスの被害を防ぐためすべての巣の下に棚板を設置し網で囲いを造るなどの対策」が功を奏しているとのことです。

人とともに生きるツバメは、市街地だけでなく、農村でも棲みにくくなっている現状を考えるとき、この一冊は参考文献として重要と思います。興味ある方は、報告書全体がネットにアップされていますので、ぜひアクセスしてみてください。

https://www.setagayatm.or.jp/trust/research/tsubame/index.html

世田谷区内ツバメ繁殖数調査報告書 2021(2018~2021年)2022年4月発行編集・発行:(一般財団法人)世田谷トラストまちづくり 野鳥ボランティア ツバメ繁殖調査委員会.