2024年4月15日月曜日

大分県でのミサゴの繁殖・人工物で営巣

 最近内陸部でミサゴ【写真】の生息がよく観察されていますが、大分県大分市在住の会員から「人工物での営巣」の情報が寄せられました。繁殖に関する話ですので詳細はここでは紹介できませんが、身近な場所での子育てが増えてくる兆候があります。“都市鳥・ミサゴ”にご注意ください。


携帯電話のアンテナの天頂部でミサゴが繁殖         鈴木達雄


ミサゴは大分県ではトビに次いでよく見られるタカで、私の家の近くの大分川ではよく水面に飛び込んで魚を捕える姿を観察できます。しかし、巣がどこにあるか長年見つけることができませんでしたが、3年前、探鳥の帰りにたまたま訪れた場所の携帯電話のアンテナの天頂部に枯れ枝を組んだ巣を見つけ、昨年ヒナが1羽巣立つのを確認しました。

巣は海岸から700m内陸の水田を臨む標高30mほどの丘陵にあり、周囲は7~8mほどの針葉樹の二次林に畑が点在するような里山です。

自宅から車で1時間ほどの場所のため、詳しい観察はできませんでしたが、巣の補修や交尾(3月10日)、ヒナ1羽の確認(5月24日)とその巣立ち(6月23日)などを確認できました。今年も3月10日に巣の中の番いを確認しています。

〔より詳しい記録は当会広報誌『都市鳥ニュース』に載せる予定です。・事務局〕




2024年3月28日木曜日

コサギの駅前ねぐら

サギ類は、何羽もの個体が集まって水辺などでねぐらを作る習性が知られています。先日、知人から神奈川県内の駅前にコサギのねぐらがあると教えていただき、見てきました。

ねぐらの場所は、駅のホームのすぐ脇にある樹木で、樹種はセンダンとトウネズミモチでした。この樹木のすぐ隣にはホームを貫くように小河川が流れていて、その川に覆い被さるように生えています。

日没15分前の午後5時15分には、一羽のコサギがこの樹木にとまり、ねぐら入りを開始。その後は約30分にわたって次々とコサギが飛来し、この日は54羽のコサギがここで夜を過ごしました。この光景はホームからとてもよく見え、まるで樹木に白い花が咲いたような感じです。当然のことながら、ホームにいる乗客もこの光景に気がつく人がいて、ちょっと驚いた様子も見られました。しかし、慌ただしい夕方の時間のためか、気がつかないで通り過ぎる人も多く、この無関心さがねぐらの安全を保障しているのかもしれません。

また、樹木がある場所は人の立ち入りができない場所であり、樹木の下は川が流れ、高さも数mはあるため、天敵が近づけない環境でした。そういった点でも、コサギは良い場所にねぐらを見つけたと思います。

さて、このねぐらはいつからあるか気になるところです。近くに常駐していた警備員の方に聞いたところ、1年前にはなったので、今年に入ってからではないかという話でした。その後、私の知人にこの駅を利用している人がいることが判明し、その人の話では2024年1月1日にはねぐらがあったことを確認しているそうです。

おそらくこのねぐらは、コサギの冬だけの利用だと思われるので、そろそろいなくなっているかも知れません。その後、どうなるか継続的に観察してみたいと思います。(柴田佳秀)

頭を体にいれ眠るコサギ

ホームから見たねぐら




2024年3月5日火曜日

内陸部のイソヒヨドリの繁殖生態解明にご協力を

東京・府中市多摩川の左岸の河原を踏査中、河口から約30㎞の是政橋に差しかかると“モズの物真似鳴き”のようなぐぜり声が聞こえてきました。声の主は橋脚の陰に隠れて見えないのでしばらく待っていると奥から出てきました。イソヒヨドリの雄でした【写真上】。のど元が小刻みに震えて、小さな声で囀っていました。3月3日の日曜日朝、ランニングする大学生グループ、ジョギングする年配者、散歩する夫婦がすぐ下を通り過ぎていきます【写真下】。このイソヒヨドリ君にとってはいつもの風景のようで警戒のそぶりはありません。カメラをもって近づくと反応し、うす暗がりの奥へ引っ込むこともありましたが、少し待つとまた縁へと出てきて小声で囀っていました。  

都市鳥研究会ではイソヒヨドリの内陸部進出の意味を調べています。「生息情報」は全国各地から寄せられていますが、「繁殖・営巣情報」はなかなか集まりません。実際この鳥の繁殖期の動きをみていると、「このあたり・この建物で営巣しているようだ」というところまでは明らかにできますが、「巣がどこにある・どんな子育てをしている」ということになると追えない・調べられないことがほとんどです。

“磯にへばりついていた鳥”が市街地や郊外、山間部でというような内陸部で観察される状況が全国的に見られています。何らかの意味があることは確かでしょうが今のところは謎です。繁殖生態の解明にご協力ください。〔都市鳥研究会〕









2024年2月2日金曜日

柏駅ビルのドバト

駅ビルには、よくドバトがいます。テラスや隙間などがたくさんある大きなビルは、本来の生息地にある自然の崖と同じような構造のため、繁殖や寝る場所として利用しているのでしょう。私がよく利用するJR常磐線柏駅の駅ビルにも、数十羽のドバトがいて、ひさしにずらっと並ぶ光景が見られます。

駅ビルにドバトがいるもう一つの理由として、給餌があります。お客さんを待つタクシーのドライバーさんがドバトに餌をやる姿は、一昔前にはよく見られた光景でした。ところが、何年か前から、柏駅前ではそんな光景がすっかり見られなくなり、駅ビルにいるドバトは、だんだんいなくなるのではと予想していたのです。

現在はそれから数年は経過しましたが、予想に反して、駅前のドバトはいっこうに減ることはなく、むしろ増えているのではないかと思えるくらいになりました。それと同時に、この鳥たちは、いったいどこで食べものを得ているのだろうと疑問が生じたのです。

駅ビルにすむドバトの行動を観察していると、数羽の小集団となってどこかへ飛び去る様子が見られます。おそらく食べものを求めて出かけているのでしょう。駅から2kmほど離れたところに小河川が流れているのですが、そこでドバトを見るようになったのもだいたい数年前からです。そこでは、地面に落ちている種子を丹念に探している姿を毎日のように見ます。要するに自然にある食べものを探して得ているのです。

標識や発信器をつけて追跡したのではないので、このハトたちが駅ビルの個体とはいえませんが、その可能性高いと思っています。給餌がなくても、しっかりと自分たちの力で生き抜いているのでしょう。

ドバトの原種であるカワラバトは、ねぐらや繁殖場所となる崖と食べものの種子がある採食場所を毎日、往復して暮らしていました。その習性を利用して伝書鳩が作られたのですが、駅ビルにいるドバトたちは、現在でもまったく同じような暮らしをしてるのだなと思いました。(柴田佳秀)

柏駅ビルのドバト

河川敷でムクドリと採食する




2024年1月20日土曜日

東京都心・日比谷公園でウグイス5羽を

日本初の近代的洋風公園として知られる日比谷公園でウグイス5羽を確認しました。

日比谷公園は東京都心・千代田区の皇居外苑に隣接し、面積は16ha。音楽堂や公会堂、図書館、テニスコート、噴水池などがあり、オープン型で24時間出入り自由な空間です。

ここにいつもいる鳥は、ドバト・スズメ・ヒヨドリ・カルガモなどありふれた種類が中心ですが、冬になるとカワセミ・ツグミ・キセキレイなどとともにウグイスが定着しています。

ウグイスは東京都ではこれまでは完全な漂鳥(ひょうちょう)。市街地では冬鳥で、春先になると奥多摩などの山地へ移動する鳥でした。しかし、ここのところ徐々に繁殖分布を広げ、最近は市街地の23区でも繁殖期に生息しているのが観察されています。そのため、その美しい囀りを街なかの住宅地や公園で5月になっても楽しむことができるようになってきています。数年前には新宿御苑で繁殖期に囀りが長期間聞かれ、その後古巣も発見されたこともありました(子育ては確認されていないようですが)。

1月18日に1時間ほど探鳥したところ心字池・桜田通り沿い・松本楼の付近で各1羽、そして野外音楽堂沿いで2羽と計5羽を確認し、その写真も撮れました。【写真上】

公園はオープン型で、建物敷地以外は人が通れ、彼らが好むようなブッシュは少ないので、園内のほぼ全域に生息しているのは予想外でした。

23区内では公園などの緑地は徐々に増えていますが、彼らが好むような環境が増えたとは思えません。しかしこの事実は、何らかの“理由”があると考えざるをえない状況です。

造成されて120年経ち、都では老朽化とバリアフリーの設置を考え、10年計画で再整備を進めています。【写真下】 新しい“日比谷公園”で、どのような鳥がどう棲むようになるのか、まずは現状の鳥のようすを記録として残しておきたいと思っています。それにしても“都市鳥ウグイス”が誕生するのか目の離せない状況です。〔川内 博〕