2020年11月27日金曜日

難問「ムクドリの集団ねぐら」との共存!

   当会の広報誌『都市鳥ニュース・No.28』(2020年6月刊)では、「ムクドリの集団ねぐらの実態・1」を特集しました。社会問題化したこの問題の首都圏での現状ということで、ムクドリの都市塒の問題を千葉県の塒で考える(越川重治)、送電塔に集団ねぐらを形成するムクドリ(鈴木弘行)、埼玉・東武東上線志木駅の「駅前ねぐら」(川内 博)の報告が載せられています。次号のNo.29(12月発行予定)にも、名古屋や大分の事例をアップします。興味ある方はメールにて事務局までお問合せください。

    ところで、ムクドリが“繁華な場所に大群でねぐらをとる”という行動は、1980年代から首都圏で見られ、今や全国化して、いずれの場所でも、住民も通行人も行政も“頭の痛い”状況で困っているのが実情です。「音や光で脅す」→「集まる樹木を剪定・ネットをかける」→「ムクドリの悲鳴声・嫌がる電子音を流す」→「鷹匠を呼んでタカで追払う」とさまざまなムクドリ対策が次々と講じられていますが、いずれも“その場から・一次的に追払う”ことができても、“しばらくするとまた戻ってくる・別の場所で被害が生じる”ということで、根本的な解決策はできない状態です。

  10月末、長野県の松本駅で、17時半ごろ、乗換時間を利用して東口を歩いてみました。ここは以前にも集団ねぐらを認めた場所で、今回も駅前広場やそこからの大通りの並木(カツラやクヌギ)に多数集まって、暗いなか大きな声で鳴き騒いでいました。【写真】観光案内所で状況を尋ねたところ、“対策の結果、一時はいなくなったが、また来た!”とのこと。ムクドリにとっては「良好なねぐら場所は死守したい!!」というのが願い。ムクドリとの共存法を考えるには人間の知恵ですが。なかなかの難問です。〔都市鳥研究会・事務局〕




2020年10月27日火曜日

オンライン講座を受講して・今後ますます興隆する兆し

   コロナ禍のなか、Zoomなどを使ったオンライン授業が多くの学校で行われていますが、鳥の世界でもさかんになってきています。

  当会も協力した「銀ぱち講演会」(9月22日)は予定通り、会場とオンラインで実施され、好評でした。10月に入ると、10月23日(金)のバードリサーチの「小笠原諸島~伊豆諸島 ツバメの渡り調査」(講師:重原美智子氏・写真)、24日(土)には、山階鳥類研究所・我孫子市立鳥の博物館共催の「ムクドリの子育て事情」(講師:齋藤安行氏)の講演がオンラインで配信されアクセスしました。前者は夜8時から、後者は午後1時半からで、後者については、当会会員にもその案内をメールで知らせました。

  両講演とも初めて聞くタイトルではありませんでしたが、その後の研究のようすを知るチャンスで、興味深く見聞きしました。とくに「ツバメ」の方は、以前発表を聞いた時は、どんな展開になるかと案じていましたが、研究者の粘り強い観察・聞き込み・聞き取りなどで、“太平洋上を北上するツバメ”のルートがおぼろげながら見えてきた感がありました。<拍手!!>

  室内での講演会・発表会なども軒並み中止となっているなかで、インターネットを使ったオンライン講座は、自宅で受講できるためか、いずれも100名以上の聴講があり、ますます盛んになりそうです。            〔都市鳥研究会・事務局・川内 〕



2020年9月14日月曜日

銀ぱち講演会「養蜂場に来る生きもの・ツバメ」の案内

「銀ぱち講演会2020 No.2 養蜂場に来る生きものpart1 ツバメ」9月22日(火・祝日)の午後、会場とZOOM同時開催という形で開かれます。

  銀座のツバメは、当会の東京駅を中心としたツバメ繁殖調査の重要な調査場所です。徐々にツバメが減っていくなかで、“銀座だけが増えている!・なぜ?” という疑問のなかで浮かび上がったのが“ビルの屋上に増えている養蜂場”との関係が明らかになりました。

  今回は、講師として、銀座のツバメを観察して45年、『銀座のツバメ』の著書で、当会幹事の金子凱彦さんと、NHKテレビ番組「ダーウィンが来た!」で、そのツバメの実態を撮影した佐藤信敏さんが登場します。

    参加者は、折からの新型コロナ対策として、会場(東京・銀座)の定員は30名、ZOOM参加は90名となります。参加費: 1000円〔当会会員〕、1300円〔一般〕

チケット販売:9月18日(金)8:30まで

問い合わせ先:ginpachi.event@gmail.com 電話:03-3543-8201〔平日10~17時〕

特定非営利活動法人 銀座ミツバチプロジェクト




2020年8月31日月曜日

東武東上線沿線のムクドリの「駅前ねぐら」・第6報

  同じタイトルの前報は、2018年11月28日付でアップしています。昨年は報告を失念したようですので、今回2019年の分も含めてお伝えします。この間、各駅の状況はめまぐるしく変わりましたのでいずれも概略となります。

  朝霞台駅(隣接するJR武蔵野線北朝霞駅との乗換客が多い)は、急行電車停車駅で、以前から定住ねぐら地のひとつでしたが、2018年に動きがあり(鷹匠導入?)、2019年は7月30日に約1000羽のねぐらを認めた後、冬場も含めて飛来が確認できませんでした。今年は7月27日に鷹匠によって追払いが行われたとのこと(朝日新聞デジタル・8月6日付による)。今年はそれまで所用で行く機会がなかったのですが、8月25日夕方に出向いたところ、東口広場で計200羽程度のねぐら入りを観察しました。

  同日隣駅の急行停車駅・志木駅の状況も見てきました。2019年8月29日に東口で約3500羽のねぐら入りを認め、2020年2月13日には約3000羽の越冬ねぐらを確認しました。29日には、まず東口に降り立ちました。街の状況は昨年とほとんど変わりありませんでしたが、どこにもその姿はなく、糞跡などのねぐらの形跡もありませんでした。その代わりに、駅舎の反対側の南口の駅前広場の電線や電柱に約200羽の群れを認めました。この駅では東口で何らかの対策がとられると、南口に移動することは何度もありましたので、今回もムクドリの嫌がるようなことがあったと思われます。

  翌8月27日には、志木駅の次の急行電車停車駅のふじみ野駅を探査しました。この駅の西口から続くケヤキの並木の通りは、川越に次ぐ大ねぐら地でしたが、2019年8月5日に訪れたときは、駅の西口にも東口にも1羽もいず、その後何度訪れてもムクドリの鳴声は聞こえませんでした。今回、スズメの群れに導かれて、駅前通りをさらに進むとスズメとムクドリの大合唱が聞こえてきました。駅から約1㎞西に行った、川越街道〔国道254線〕との交差点でした。ねぐら入りをはじめから見ていませんでしたが、ムクドリの数は5000羽を超えていると思われました。

 その翌日8月28日には、川越市駅で降り、西武新宿線本川越駅を訪れてみました。本川越駅は、東上線・JR川越線の川越駅から約1㎞離れていますが、毎年大きなねぐらをつくる場所ですのでチェックしたところ、駅の周りには5000羽をはるかに超えると思われる数が群れて大騒ぎをしていました〔写真〕。その後、川越駅に行くと、東口も西口もシーンとして糞跡もほとんどない状態で、とりあえず、この時点までは川越のムクドリは本川越に集結しているようでした。次回の調査時にどうなっているかは予測不能。


「ムクドリのねぐら問題」は、全国化して30年以上たちますが、今のところ具体的な解決策はなく、“こちらで追払えば、向こうの街が困る”という「イタチごっこ」状態が続いています。人とムクドリが「共存」できる街づくりが望まれます。 〔川内 博〕

 



2020年8月10日月曜日

今年の「東京駅を中心とした3㎞四方」のツバメ事情

   “オリンピック”で沸き立っているはずが、おもいもよらない“コロナ禍”の時代となり、今春予定していた5年ごと・8回目の「東京駅を中心とした3㎞四方のツバメの繁殖状況」調査は自粛し、来春行うこととなりました。そこで、コロナ禍事情が小康を示していた7月中に、調査地の状況を視察してきました。

  見て来た場所は、前回(2015年)に繁殖が記録された19ヶ所で、建物自体の取り壊し・新ビル建設が3か所。巣番号No.9の「第5中央ビル」は建替えられてホテルに、No.44の「徳山別館」と隣接していたNo.68の「日石エネオス」の敷地には超高層ビルが建設中。No.92のアパートは空き地に。逆に営巣が確認できたのは、No.4の「帝都自動車」、No.29の「松屋銀座東館」、No.85の「ファミール日本橋」など6か所。

  なかでも印象的だったのがNo.82の「メゾン平和田」。築地本願寺近くの住宅地にある5階建ての小規模のマンション【写真1】。1階の駐車場に“いつものカラス・バリケードがない!”【写真2・2015年6月撮影】 さては繁殖しなくなったのかと思いながら路地に立つと、1羽のツバメが駐車場に飛び込み抱卵【写真3】。前回調査時には、ゴルフ用のネットなどで厳重に守られていた巣の周りはすっきり。“カラス害”がなくなった証拠と思われます。

  来春、期待通り「ツバメ調査」ができるかどうかは、現時点では何ともいえない状況ですが、とりあえずは大きな“異変”はないようです。 〔川内 博〕


写真1:10年以上営巣しているマンション



写真2:前回まではゴルフ用ネットで守られていた


写真3:今回はバリケードなしで繁殖中



2020年7月30日木曜日

今年の銀座のツバメたち

新型コロナウイルス感染拡大に伴う不要不急の外出の自粛、さらに緊急事態宣言の発令で銀座の街も人出が激減し心配しましたが、ツバメたちは今年も銀座に帰ってきました。
昨年銀座のツバメを紹介したNHKの番組「ダーウインが来た!」でお世話になった銀座ミツバチプロジェクト(中央区銀座3丁目)のスッタフから、3月23日に松屋銀座の東館で「寝ているツバメを見た!」との連絡をいただきました。東館の初認です。例年より早い記録でした。
 
今年は4カ所で営巣しました。昨年より2カ所少なくなりましが、25羽の銀座生まれのツバメが巣立ちました。もう少し増えると思いますが、最近の状況をお伝えします。

〇松屋銀座東館(銀座3丁目)、5月と7月の2回で9羽のヒナが巣立ちました
〇松屋銀座東館裏集配所(銀座3丁目)、6月に3羽巣立ち、7月21日現在育雛中です。
〇第二厚生館別館(銀座3丁目)、6月に4羽巣立ちました
〇東都自動車(銀座7丁目)、6月と7月の2回で9羽巣立ちました。

なお昨年巣立った第二厚生館はツバメの飛来はあったが営巣せず、ムサシビル(銀座8丁目)も周辺でツバメの姿を見たということですが古巣を利用しませんでした。このムサシは昨年5年ぶりに営巣した所でした。

2011年3月11日の東日本大震災の時、銀座も節電のためネオンは消され東館も薄暗くなり人通りもまばらになりました。私は3月25日に東館の巣に飛来した雄を確認したのですが、この年は営巣しませんでした。1984年からの観察で初めてのことでしたが、環境変化で避けたのでしょう。今回も同じことが起きるのではないかと気をもんだのですが無事巣立ちました。コロナ禍での嬉しい報告です。(金子凱彦)

 第二厚生館別館 6月26日

2020年7月16日木曜日

第8回・『都心におけるカラスの集団塒の個体数調査(2020年)』は来年に延期 します

1985(昭和60)年から5年ごとに、12月に実施しています『都心におけるカラスの集団塒の個体数調査』は、新型コロナウイルスの終息の見込みが立たず、今年は中止し来年に延期します。

調査地は東京都心の明治神宮(渋谷区)、自然教育園(港区)、豊島ケ岡墓地(文京区)の3ヶ所で行ってきました。1985年から2000年まではカラスの個体数は増加し、2000年には18,664羽を記録しましたが、それ以降は年々減少し、2015年には4,804羽となり2000年の26%に激減しました。この現象に歯止めがかかったのか、減少はまだ続いているのかたいへん興味深い問題です。〔グラフ〕
カラスの集団塒の個体数調査はたいへん多くの方々の協力が必要です。来年の調査の際はぜひみなさんご協力ください。都市鳥研究会のホームページで協力者の募集をしますのでよろしくお願いいたします。(都市鳥研究会事務局)





2020年6月28日日曜日

都市鳥ニュース・No.28・「特集 ムクドリの集団ねぐらの実態・1」を発行しました

年2回発行しています都市鳥研究会の広報誌『都市鳥ニュース』のNo.28を発行しました。今回は、数十年来、首都圏の街で、全国の街で、住民や通勤・通学者、買い物客、そして行政に迷惑がられている“繁華な場所でのムクドリのねぐら”問題を特集しました。
ムクドリがなぜ人に嫌がられながら、繁華な場所に多数でねぐらをとるのか、その理由のひとつとして、「身の安全をより確保できる場所で夜を過ごす!」ためにその地を選んでいること。数年前、ニュース報道番組の取材に同行して、さいたま新都心駅近くのねぐらを見ていた時、薄暮のなか、ムクドリの群れが私のいる方向へ、まさに“血相を変えて”で飛んで逃げてきたことを思い出します。原因はオオタカの出現!もちろんムクドリの顔が見えたわけではありませんが、飛び方にそれを感じました。【写真】

この問題は日本だけではありません。イギリスで、アメリカで同じなかまのホシムクドリが、桁違いの数の群れで、同じように大都市の一角で“社会問題”が発生させています。
今回は、その1として、千葉・埼玉の事例を紹介しました。興味のある方は、メールでご連絡ください。掲載号をメールでお贈りします。 
e-mail:hkawachi2dream@yahoo.co.jp      (都市鳥研究会・事務局)


2020年5月19日火曜日

速報2つ 「全国鳥類繁殖分布調査」の報告をYoutube で・日本鳥学会大会の中止

1.5月22日(金)PM8時から、 WEB上で「全国鳥類繁殖分布調査」の報告会が実施されます。以下は、(NPO法人)バードリサーチからの連絡を要約してお知らせします。
 
 新型コロナ禍は徐々に落ち着きつつあるようですが、これまで,秋冬に各地を報告会でまわって実施してきた調査報告会は,今年はできるか予断を許さない状況です。そこで,WEB上での報告会を試してみようと思います。
  今週の金曜日の晩にYoutubeライブという仕組みを使って行ないます。お時間ある方はご覧いただき,改善点などご意見いただけたらありがたいです。

5月22日(金)20:00~20:30 [全国鳥類繁殖分布調査で見えてきた、全国的な鳥の変化]
YouTubeライブ https://youtu.be/n-fswx9PeU4

 上記URLに20時頃に繋いでいただけたら見ることができます。質問などある場合は,コメントを書き込むことができるので,そこに書き込んでいただけたら,発表後の質問時間にお答えしていきます。
 今回は全国の主要な結果をざっとお話しする形ですが,先々は,北海道版,沖縄版など,地域ごとの特徴についてもやっていったりすることも考えています。ご来場? お待ちしています。

2020年4月28日火曜日

「外出自粛」のなかでフィールドノートの整理を・そして貴重な「データ」を生かそう!「全国鳥類繁殖分布調査」のアンケート調査へのご協力のお勧め

 新型コロナウイルス対応で「外出自粛」の“ステイホーム週間”ですが、野の鳥たちの動向が気になる日々が続いています。“コロナ対策”がまだ「3密」だった3月下旬~4月上旬の朝方、事務局のあるマンション団地の敷地に何番いのシジュウカラがいるのか、囀りの場所を地図上にチェックして調べる「テリトリー・マッピング法」を用いてチャレンジしました。結果は緑の多い8haの団地敷地〔写真〕に10番いが棲んでいることがわかりました。
  3月末まではウグイス、エナガ、コゲラ、シロハラなどの姿も確認できましたが4月に入るといなくなりました。一方、夏鳥のツミの声を買い物の行き帰りに2度耳にしましたので付近で営巣している可能性があり、気になるところです。また、今年は珍しくハシボソガラスが営巣しているようで、ハシブトガラスの声に混じって“だみ声”が響いています。ベランダから巣を探しているところです。さらに、眼下の小学校屋上の排水溝あたりには、今年もムクドリがさかんに出入りをしているのが見えます。いつヒナが出てくるか楽しみにしているところです。
  チョウゲンボウが向かいの病院の避雷針に止まったり、ワカケホンセイが目の前でUターンしたり、アオサギ4羽がすぐそばを北へ飛んでいる姿も確認したり、また、ツバメが2羽飛び交い、キジバトがディスプレイフライトをし、早朝にはシジュウカラやメジロ、カワラヒワの囀り、オナガやヒヨドリの騒ぎ声と、マンション9階からのバードウォッチングを楽しんでいます。

  そんな“自宅軟禁”状態のなか、もう一つの楽しみは、溜まりにたまった「フィールドノート」の整理。“いつかは何とかしなければ”と思っている方が多いのではないでしょうか。
ただ記録の整理だけではつまらないという方へ、今年8月が締切りの「全国鳥類繁殖分布調査」への協力をお勧めします。
  NPO法人・バードリサーチが中心になって3年かけて展開しているこの調査は今年が最終年。1970年代・1990年代と20年ごとに実施されているこの調査は、日本全土の鳥類の繁殖状況を調べているもので、世界的にみてもレベルの高いものです。これまでの記録を整理して、下記のサイトにアクセスして、野の鳥の繁殖に関する貴重な情報を入力してください。
アンケート調査は「外出自粛」のなかでも、過去の記録ですので、協力することができます。
対象種は外来種も含めて、日本に生息する鳥類全種です。 〔都市鳥研究会・事務局〕
http://www.bird-atlas.jp/



2020年4月5日日曜日

第8回・東京駅を中心としたツバメの繁殖調査・中止します 都市鳥研究会

  1985(昭和60)年から5年ごとに、4月~8月にかけて実施しています「東京駅を中心とした3km四方におけるツバメ Hirundo rustica の繁殖状況」調査は、新型コロナウイルスの問題を鑑み、今年は中止し、来年に延期します。

  調査地は下記の地図の範囲で、そのなかには、丸の内や大手町といった高層ビル街、日本橋や銀座などの大型商業地域、神田や築地といった企業や住宅街、そして皇居や日比谷公園などの緑地といった、さまざまな環境がモザイク状に混在する、日本の都市環境を代表するような一帯です。
  調査は今回で8回目になる予定でした。今年の目玉は、前回の調査で、これまで続いた営巣箇所数の“右肩下がり”傾向がやや持ち直したのが本物なのか、また、なぜか増えたかなど、調べることがたくさんありましたが、とりあえず“ウイルス問題の解消”が第一と考えました。
  4月~8月に、調査地内でツバメを見かけたり、巣の状況を知る機会がありましたら、都市鳥研究会・事務局にお知らせください。


2020年3月28日土曜日

新書紹介 『カラー版 身近な鳥のすごい食生活』 唐沢孝一著

  サブタイトルは“「食」でひもとく驚異の生存戦略” 目次を見たところ、都会の鳥 スズメ 以下8種、郊外の鳥 メジロ以下9種、秋・冬の鳥 モズ以下5種、水域の鳥 カワセミ以下9種の計31種。それぞれの鳥にサブタイトルがついていて、興味あるタイトルが付けられています。

  まず目を引いたのは“ムクドリはミカンを食べないって、本当?”。さっそくページを開いたところ、ムクドリの群れのカラー写真とともに、「ムクドリの語源は、ムクノキの実を食べるから。あるいは群れることから群来鳥(むれきどり)が転じたなど諸説ある」と初心者向けに簡潔に名前の由来が記されていました。さて目についた“柑橘類を食べない”の説明は、「実は、ムクドリには柑橘類に多く含まれているショ糖(スクロース、砂糖の主成分でもある)をブドウ糖と果糖(フルクトース)に加水分解する酵素(スクラーゼ)がなく、ショ糖を分解できず、小腸から吸収できない」という説明がされています。外国文献が元のようですが、日ごろ疑問に思っていたので参考になりました。

  また、“日本で繁殖が急増中”のジョウビタキ。従来「冬鳥」だったのが、本州中部や山陰などの山地で繁殖し、留鳥化しているという最新の話題が取り上げられていました。この鳥は人工的な建物に営巣することや食性的にも、当会が現在調査・研究しているイソヒヨドリに似た面があり、その動向が気になるところです。

  目を引いたといえば、最後に登場するカツオドリ。小笠原航路の船などで見かける海鳥ですが“「襲う鳥、逃げる魚」の大ドラマ”というサブタイトルのもと、海面を飛ぶトビウオを追うカツオドリの写真は“驚異の生存戦略”の本書のサブタイトル通り、生死をかけた迫力が感じられました。

  カラー写真が豊富に使われ、わかりやすく楽しめる本となっています。〔川内 博〕
  新書版・191ページ・定価1000円+税 (2020年3月、イースト・プレス刊)


2020年3月8日日曜日

会誌URBAN BIRDS Vol.36(通巻第77号)が発行されました

都市鳥研究会の会誌「URBAN BIRDS」Vol.36号を発行しました。

最新刊Vol.36(通巻第77号) 2019年12月 

●巻頭言 伊豆半島のイソヒヨドリ(酒井洋平・山本安信) 
●都市鳥研究会の全国調査「イソヒヨドリはなぜ内陸部に進出するのか」(川内博)
●小笠原諸島父島・母島の市街地におけるイソヒヨドリのハビタット(唐沢孝一)
●滋賀県立石山高等学校におけるイソヒヨドリの繁殖報告(橋本宥右・浅野裕貴)
●東京都多摩市で繁殖したイソヒヨドリ(高嶋麻美子)
●ムクドリの繁殖巣での糞塗り行動について(越川重治)
●ムクドリの蟻浴の観察(越川重治
●表参道・神宮前のムクドリの集団ねぐら(越川重治)
●糞分析によるツバメの雛の食性(2019)(唐沢孝一・山﨑秀雄)

2020年2月29日土曜日

『都市鳥ニュース』No.27を発行しました

  当会の情報誌であり、会員外への広報誌でもある『都市鳥ニュース』No.27を2月25日付で発行しました。メインは、昨秋の日本鳥学会大会でポスター発表した「イソヒヨドリはなぜ内陸部に進出するのか 第2報B」をそのまま再掲したものです。
  日本鳥学会のポスター発表のスペースは841×1189㎜。その中に、多数の会員の調査・研究を収める方法として、発表者がそれぞれ「A4判」にまとめて、それらに統一性を持たせて並べるという方法をとっています。具体的には16枚構成ということになります。〔写真〕
  “岩礁に執着していた”イソヒヨドリがなぜ街や山へ進出しているのか、研究初期段階の現在、この形の発表方法は、問題を解くには“さまざまなアプローチ”があるということも現わしています。
  『都市鳥ニュース』は、“都市鳥(としちょう)”に興味を持った方へ、最新号をメールでお送りしています。ホームページの「入会案内」をごらんの上、「B会員」でご入会下さい。


2020年1月31日金曜日

スリランカのスズメとツバメ・都市鳥を見直す旅


  この1月のなかば、“インド洋の真珠”と呼ばれているスリランカを、8日間のバードウオッチングツアーに参加して周ってきました。今回は“鳥の多い環境を見る”というのが主目的で、セイロン島の約3分の2、標高2000m級の雲霧林から海岸近くの塩田、民家の裏庭などで、スリランカのさまざまな自然を見てきました。

  スリランカについての場所も鳥も事前の予備知識はほとんどなく、図鑑1冊での旅でしたが、鳥好きの担当者と日本で3年働いていたことがあるという、日本語のうまい現地ツアーガイドのおかげで、160種の鳥と20種以上の動物を見ることができました。
  国情は、日本の1955(昭和30)年ごろを思わせる状況で、コンクリート建造物は少なく、低層の住宅・商店の屋根は波型トタンが主流。メインの道路は舗装され、大型の路線バスが頻繁に通り、小型の三輪自動車(いわゆるtuk-tuk)が走り回っていました。そんななかで、何より驚いたのは“道路や家の周り、山の中にゴミが落ちていない”ということでした。そのレベルは日本並みで、現政権が誕生したここ10年くらいのこととのこと。
 
  訪れた地はおもに野鳥の多い場所でしたが、途中の街並み・宿泊地付近などでは、「万国共通の都市鳥」のスズメ・ツバメ・カラスなどのようすを観察してきました。その結果、”街なかにはスズメはいず、ツバメの巣も見かけない。カラスは人出の多いところでは群れている”といった状況でした。なかでも興味があったのは「スズメの巣」で、山間の村の商店で「段ボールの巣箱」を見かけました【写真1】。また、昼食をとったホテルのレストランでは、テラスの端に吊るされた籠状のもののなかに巣造り中【写真2】。どちらもイエスズメ夫婦がせっせと巣造りに励んでいました。現地ツアーガイドは“スズメはどこにでもいるよ”というだけで、あまり興味がなく、それ以上の情報は得られませんでした。

  ツバメの方は、日本と同じツバメ〔Hirundo rustica〕の群れを何度か見かけましたが、冬鳥。ホテルの入り口で見たのは固有種スリランカコシアカツバメ〔Cecropis hyperythra〕の巣と思われるもので、巣中に2羽のヒナが見えたとのことです【写真3】。また、標高2000mあまりの国立公園内の鉄塔には何羽もの南インド・スリランカ固有種のインドツバメ(Hirundo domicola)が止まっていて、頻繁に使われている公衆トイレの天井では抱卵している巣を見かけました【写真4】。
 今世紀にはいり、東京付近の野鳥の状況を見ていると、鳥影は明らかに少なくなり、ヒヨドリ・メジロなど10種程度での寡占状態が進行しているようで寂しい限りです。今回は鳥についても国についても予備知識なしで、まっさらな状態での「人と自然・鳥との関係」を見直す旅として意義のあるものでした。くわしくは会報かニュースで報告する予定です。〔川内 博・桂子〕

【写真1】道端の個人商店の軒下につけられた段ボールの巣箱:2羽のイエスズメがさかんに出入りしていた

【写真2】レストランのテラスの端に取り付けられた籠:2羽のイエスズメ夫婦が一所懸命巣材を運び込んでいた

【写真3】スリランカコシアカツバメと思われる巣:親鳥は見かけなかったが同行者が巣中にいるヒナを見たとのこと

【写真4】抱卵中のミナミツバメ:営巣場所は公園内に数少ない公衆トイレで、人の出入りは多かった

写真1

写真2

写真3

写真4