2021年6月16日水曜日

千葉県柏駅周辺のイソヒヨドリ

 自宅の最寄り駅である千葉県柏駅の周辺には買い物のために毎日のように出かけます。駅周辺はハクセキレイの塒やチョウゲンボウが営巣場所があり、都市鳥研究にはなかなか興味深いフィールドです。

その場所でイソヒヨドリを初めて確認したのは、2012年11月12日のこと。このときは囀りだけの確認でしたが、ついに近所にもイソヒヨドリがあらわれたかと感激したのを覚えています。しかし、翌年は確認できずにガッカリ。翌2014年秋には再び確認できましたが、分散途中の個体が立ち寄っただけで、それから数年間は同じ状況でした。

ところが2019年には3月から頻繁にイソヒヨドリを目撃するようになり、6月3日にはついに営巣箇所の確認に成功。さらに2020年には2カ所で営巣を確認し、今年もまったく同じ場所で繁殖していることを確認しました。興味深いことにどちらも、ビルの壁面に設置されている換気扇に巣があり、重要な営巣環境を換気扇が提供しているのではと思われました。

イソヒヨドリの観察では3つの難しいことがあります。1つは観察を行うタイミングです。大きな声で囀るので確認は簡単そうに思われますが、長い期間四六時中囀っているわけではないので、上手いタイミングで調査をしないと見つけられない事があります。日常的に通う場所であれば、うまく囀りのピークに出会えるので見つけられますが、そうでない場合は見落としもありそうです。

2つ目は、営巣場所の特定です。街中にいるのであまり警戒心がないと思われがちですが、イソヒヨドリは思ったよりも警戒心が強く、なかなか巣の場所を教えてくれません。車の中で警戒されないようにするか、あまり注目しないようにさりげなく観察するコツが必要です。また、強く警戒しているときは囀りながら翼を持ち上げるので、こんな時は「ごめんごめん」と言いながら退散します。深い追いをして繁殖に悪影響を与えてしまっては元も子もないですから。

3つ目は巣立ちの確認です。じつは柏駅周辺の2カ所の巣では、巣立ちを確認していません。ある日、突然、巣からヒナの声が聞こえなくなるので、巣立ちとしますが、巣立ちビナの確認ができていないのです。これは頻繁に通うほか方法がないので、来年は可能性のある時期を重点的に確認したいと考えています。(柴田佳秀)

この換気扇の中に巣がある


パンくずをくわえているメス


強く警戒するポーズ



2021年6月3日木曜日

和光市・イソヒヨドリの繁殖2例目・発見記

  当会の事務局のある埼玉県和光市は東京23区に隣接しているため、東京の“出ベソ”のような施設がいくつかあります。そのひとつが「東京メトロ」の車庫、また6年前には「東京北部郵便局」というものが、越戸川沿いの畑地につくられました。これは、ネット通販などの普及に伴って物量が多くなったため、ゆうパック事業の業務を効率化するための施設です。6階建て(見た目には4階建て)の巨大な建物で、大型のトラックが四六時中出入りしていて、2年前その屋上の縁で囀っているのを確認していました。その後、この場所は“要チェック地”として、荒川支流の越戸川、新河岸川の調査の際には囀りが聞こえないかと注意をしていました。しかし、その後はまったく出会えませんでした。

  

  5月20日の早朝、カワセミの営巣地を探しに越戸川で観察していると、“この鳥は何ですか?”と声をかけられました。スマホに映っているのは雄のイソヒヨドリ【写真1・トリミング拡大】。遊歩道の手すりに止まっていたとのこと。1週間後の5月28日早朝、イソヒヨドリの撮影者の星野さんに再び出会ったあと、その発見場所に行ったら、今度は雌が手すりに止まって採餌をしていました【写真2】。驚かせないように、慎重に追っていくと、ついに餌をくわえて東の方向に飛び去りました。その方向には東京北部郵便局が。餌をくちばしにした雌親は、警戒しながらもついに、3階の作業場の天井の鉄骨の上に入っていきました。持ってくる獲物はアオムシ・ムカデ・カナヘビなどさまざまです【写真3】。

  

 2年前に和光市駅南のイトーヨーカドーの駐車場で巣立ちビナを発見(本ブログ・2019年7月22日付け参照)して以来、和光市では2例目の繁殖記録となりました。その後のようすも含め、詳細は、当会広報誌『都市鳥ニュース・№30』(6月発行予定)に掲載します。『都市鳥ニュース』はPDFで、会員にメールで送られます。興味ある方は、当会HP「入会案内」をごらんください。〔都市鳥研究会・事務局・川内〕


写真1 越戸川畔で撮られたイソヒヨドリの雄・星野裕司氏撮影


写真2 同じ場所で雌も発見・川内撮影


写真3 営巣地の東京北部郵便局前の電柱にて・川内撮影