2024年6月22日土曜日

ヤマガラとガビチョウで蟻浴を観察

鳥には、蟻浴という不思議な行動があります。文字通り昆虫のアリを体に擦りつけて浴びる行動で、世界では約200種の鳥で観察されています。日本では、カラス類が有名で私も過去にハシブトガラスとハシボソガラスで観察したことがあります。他にはカケスやキジバト、ムクドリも日本で観察例があるようです。しかしながら、そう頻繁に行うものではなく、観察のチャンスはあまり多くありません。

少し前になりますが、4月13日に千葉県野田市の郊外を歩いていると、人家の玄関に通じる土の道の上に、1羽のヤマガラが降りているのが目に入りました。食べものでも探しているのかなと思いながら観察を続けると、そのヤマガラは、地面にいる何か小さな物を嘴でつまみとり、尾羽の裏側あたりにつまんだ物をこすりつけています。嘴でくわえていたものを詳しく見てみると、どうやらそれはアリ。アリをくわえて羽毛にこすりつけていたのです。カラスの蟻浴は、アリがたくさんいる場所に座るなどしてたくさんのアリを体にたからせますが、今回のヤマガラは、1匹ずつ体にこすりつける方法を行っていました。調べてみるとヤマガラも蟻浴の記録があり、この行動も蟻浴と考えて良さそうです。利用していたアリはクロヤマアリのようでした。

アリを羽毛にこすりつけるヤマガラ

また、4月29日には東京都東大和市の雑木林で、ガビチョウが蟻浴しているシーンに出会いました。こちらもヤマガラと同じスタイルで、1匹のアリをくわえて体にこすりつける方法。アリもクロヤマアリでした。調べた限りでは、ガビチョウが蟻浴をする記録が見つからなかったので、珍しい記録ではないかと思っています。

じつは蟻浴ではないかと思われる行動は、イソヒヨドリでも観察しています。そのときは双眼鏡を持っていなかったので、はっきりとアリの確認はできなかったのですが、仕草から判断して蟻浴である可能性が高いと思いました。

さて、その蟻浴ですが、なぜ、そんな行動をするのか今のところはっきりしたことはわかっていないそうです。アリからは蟻酸が出るので、それを使って寄生虫を寄せ付けない効果があるといわれますが、蟻酸を出さないアリでも利用することから、そう単純な話ではなさそうです。また、アリから出す物質が蚊除けの効果があるという研究もあり、早くその解明が待たれるところです。(柴田佳秀)

ヤマガラと同じような方法で蟻浴をするガビチョウ