2012年1月28日土曜日

甲府駅前・平和通りのカラスのねぐら・第一報

甲府市は、山梨県の県庁所在地。そんな都会の中心部・JR甲府駅前から南へ走る主要道路が通称・平和通り。通りには県庁や市役所(いずれも改築中)、銀行などの大きな建物が軒を並べていて、車道の中央には常緑樹が植えられ、両わきには歩道と自転車道が並走するという大通り。そして立派なケヤキの並木が、数百メートル続いています。
こんな環境が大好きな鳥がいます。ムクドリです。千葉県をはじめ、日本各地の駅前や大型スーパー近くなどで、大群でねぐらをとって社会問題となっています。興味あるテーマとして本会の主要研究のひとつとなっているものですが、今回の話は、その鳥がカラスという大物になったというものです。

1月25日(水)、その状況を調べに行きました。前々夜、東京地方は積雪4センチ。甲府はさぞ歩きにくいのではと覚悟をしていましたが、雪が降った形跡ゼロ。まわりの山には白いものが見えますが、盆地の中は降らなかったとのこと。
夕方3時半ごろから、カラスは街なかのビルの上に集まりだし、その数は1000羽近くといったところ。識別できた限りにおいてはハシボソガラスばかり。午後5時過ぎ、周辺が暗くなってから、平和通り沿いのビルに集結、5時半ごろから葉の落ちたケヤキの木の上方に止まりだしました【写真】。
6時ごろに歩道を歩くと、身近に「ペシャ」という音が次々に。今のところ苦情は来ていないとのことですが、ムクドリですら大問題になるのに、1個の糞はその数倍の量ですので、トラブルが大きくなるのは時間の問題と思われました。この現象の原因はまだわからないようですが、2年前くらいから生じたとのこと。本格的に対応を始めたのは昨年10月からで、まだ暗中模索の状態。現在、さまざまな対策を講じている途中のようです。

なぜ警戒心の強いカラスが、このようなにぎやかな場所にねぐらをとるのか。しかも、ムクドリやハクセキレイ、スズメなどに比べて、敵となる動物もあまりいないと思われるカラスとなると、話はますます謎が大きくなります。昨年末ごろから、テレビ・新聞などでも報道されていますので、ご覧になった方も多いと思います。同じような事例の情報をお待ちの方はご連絡ください。
同地には、本会会員の中村司山梨大学名誉教授をはじめ、鳥にくわしい方がいらっしゃいますので、今後の動きがわかると思います。興味深い現象として注視していきたいと思っています。〔川内 博〕

2012年1月25日水曜日

ハヤブサ?が捕食したウズラの羽毛を採集

20111130日に、千葉県柏市の柏駅近くにあるクレストホテルの下でハヤブサが捕食したと思われるウズラの羽毛を採集したので報告します。クレストホテルは15階建ての当地では2番目に高いビルで、最上階にときおりハヤブサがとまり、捕らえた獲物を引きちぎって食べます。そのため、ビルの地上部にはハヤブサが捕食した獲物の羽毛が散乱しています。そのほとんどがドバトやキジバトですが、今回はウズラの羽毛を採集しました。
 ウズラは、環境省では準絶滅危惧種、千葉県では絶滅危惧Ⅰ類に指定されているほどの希少種です。当地から1㎞ほど離れた手賀沼では、年に数回の目撃例があるくらいです。今回は直接ハヤブサがウズラを捕食している場面の観察していないので、どうしても?がつきますが、状況から考えてまず間違いなくハヤブサが捕らえたものと考えています。(柴田佳秀)

2012年1月20日金曜日

埼玉・平林寺のカラスの就塒状況のリポートを貸し出します

東京のいわゆる「カラス問題」は、現都知事再選ということで、抜本的な解決策がなされないまま、捕獲などが継続されています。最近は生ごみの収集方法なども改善され、ごみ漁りをなどの問題は少なくなり、また、都への苦情が少なくなっていて、マスコミなどもあまり取り上げなくなって小康状態というところです。
ただ、最初は東京や札幌、仙台などの限定問題と考えられていたものが、各地の都市でも勃発し、全国的な問題となっています。そこで、どんな問題が発生しているかは、今後このブログで紹介をする予定です。
ところで、本会をはじめとして、まず基礎的な個体数調査を実施しているところは多く、それぞれ工夫をしています。どんな調査方法で、どんな成果を上げているのか、いろいろなリポート・報告書を読むのは有効です。
昨年末、東京都と隣接している埼玉県新座市の平林寺での状況が、読みやすい形で発表されました。調査を実施している武蔵野野鳥の会が発行した創立30周年記念号に、『平林寺におけるカラスの就塒状況』(高橋新吉・荒尾精二)というタイトルで28ページをついやしての報告です。
記念号が会に寄贈されましたので、読みたい会員には貸し出します。メールで事務局へその旨お知らせください。メール便で現物(記念号)をお送りしますので、2週間程度でご返却ください。〔都市鳥研究会事務局〕



2012年1月5日木曜日

紹介:足立区野鳥モニターの調査結果

足立区では平成4年度(1992年)から区内在住の野鳥モニター指定し、区内の野鳥の生息状況を調べています。私は昨年、野鳥モニターの方の研修会の講師をした関係で調査結果を見せていただきましたが、20年間分の種ごとの個体数変化の様子など、興味深いものばかりです。たとえばヒドリガモは平成13年頃から増加していること、ハシブトガラスは平成14年まで増加し、その後減少しているが、ハシボソガラスはあまり個体数に変化がないことなどです。
足立区のホームページに調査結果のPDFが掲載されているので、参考にされると良いと思います。(柴田佳秀)

平成22年度野鳥モニターによる足立区野鳥調査結果

ハイタカに注意


 近年、さまざまなタカ類が都市部に進出し話題になっています。今ではチョウゲンボウ、オオタカ、ツミ、ハヤブサ等を都市部で見ることはそれほど珍しくない状況です。
 さらにここ数年気になっているのがハイタカです。ハイタカの増減については、いまのところ詳しい資料にあたっていないのですが、私の印象としては1990年に入るまで渡り時期以外ではほとんど姿をみることがない鳥でした。1980年代に知人から「図鑑を作るときに写真を入手するのに苦労するのがハイタカの特に雄である」という話も聞いたことがあります。
 しかし、ここ数年は状況が違うようです。ネットを検索してもごく普通にハイタカの写真があふれていますし、ツイッターでもハイタカを見たというツイートをよく見ます。ここ数年、鳥の写真を撮り始めた人にとってはハイタカが珍しい種というイメージはないのかもしれません。さらに都市部の公園でも姿を見せています。
 この現象は関東だけのものかと考えていましたが、関西でもよく観察されるようになったのは、ここ10年くらいだそうです。今後もハイタカの動きに注目したいと思っています。しかしながら、ハイタカのメスは、オオタカのオスと酷似しているために識別が難しいので誤認には気をつけたいところです。(柴田佳秀)


ハイタカ♀(撮影:堀内洋助)
 



2012年1月2日月曜日

東京圏発:東京都心・東京湾岸の緑地にエナガが進出・都市鳥化か?

 エナガ〔写真〕は、種としては沖縄県をのぞく全国にふつうに繁殖している小鳥で、里山の雑木林の鳥というイメージが一番かと思います。しかし、東京では、奥多摩や多摩丘陵などには多数生息していますが、平地部の住宅地や都心部などには、以前からまったく定着していませんでした。
 東京の平地部はビルや道路、住宅などの人工建造物で覆われ、公園などの緑地が少ないため、森林性のエナガは棲めないと思っていました。しかし、1980年代からは郊外、2000年ごろからは23区の住宅地の緑地で繁殖するようになってきました。そして2010年代には、明治神宮や新宿御苑、自然教育園などの都心部にも定着を始めています。
 さらに、この傾向は、千葉県の平地部の緑地でも見られ、習志野市の谷津干潟周辺の、造成して30年程度の緑地でも周年複数が生息するようになってきています。
 どんな理由でエナガが新天地へ進出しているのか、興味深いところです。〔川内博〕