2021年9月8日水曜日

夏鳥・アカショウビンの東京での近況

 東京23区では渡来が途絶えていた夏鳥・アオバズクが、2年連続で繁殖したことは、“夏鳥復活か”とのやや希望もまじえて前号で紹介しましたが、先月末の8月31日、同じく激減しているカワセミの仲間の夏鳥・アカショウビン〔赤翡翠〕を、埼玉県和光市新倉6丁目で発見しました。ただし、残念なことに自動車事故死と思われる落鳥の形で【写真1・2】。 発見場所は通称「水道道路」と呼ばれる車道の歩道で、東京外環自動車道と立体交差するあたりでした。死後数日たっているようで、大きなハエが死体に止まり、下腹部には多数の蛆がわいていました。胸に黒っぽい横斑があることや全体的な色あいから今年生まれの若鳥で、渡りの途中で絶命したと思われます。合掌。  

  ところで、昨年の5月、人流の多い「JR新宿駅東口」に、サギの仲間の希少種ミゾゴイ〔溝五位〕が現れ、ネットやマスコミで紹介されていましたが、この鳥も激減いちじるしい夏鳥です。しかし、21世紀に入り、東京23区の足立区の舎人公園や世田谷区の蘆花公園、江東区の公園などで観察されることがあり、私もフィールドとしている港区の自然教育園で2017年4月に記録し、『自然教育園報告・第49号』に報告しました。ミゾゴイは「里の鳥」で、比較的身近な場所でも繁殖しているようですが、羽色・行動・鳴声などが地味で目立たないため、その生息状況はよくわかっていない鳥のひとつです。  

  一方、アカショウビンは印象的な大きな声で鳴き、姿も派手な赤色で目立つため、生息していれば必ず記録される鳥です。東京では山地部の奥多摩で少数繁殖しているようですが詳細は不明です。かつての名所・高尾山(八王子市)では、1981年を最後に繁殖期の記録が途絶えます。しかし2015・2016年の繁殖期に長期間観察されました。その年に繁殖したか否かは不明ですが、今後吉報を期待したいところです。

  アカショウビンもミゾゴイも“としちょう”とは無関係な種類の鳥と思われますが、本来の生息地に住宅や道路が迫り、環境が悪化するという都市化が激減の一端であることは間違いないことです。その復活はこれからも注視していきたいと思います。 〔川内 博〕


写真1



写真2