9月17日(木)夕方5時きっかりに、姫路城が正面に見える大手前通り〔写真1〕の街路樹のあちこちで、“ジャー・ジャー”という人工的な大きな音が響き出しました。
JR姫路駅からお城へまっすぐ延びたこの大通りに、夏から秋にできるムクドリの集団ねぐらをめぐって、2007年、“全国ムクドリサミットin 姫路”が開催されました。住民からのムクドリねぐらに対しての苦情に困った、全国の自治体関係者が集まっての鳩首だったようです。
マスコミ報道によると、大手前通りにねぐらができたのは1980年代後半のようで、それ以来の悩みの種とか。今年の5月にある新聞社から電話取材があり、その時、姫路でのムクドリ問題解決に“新兵器”が使われ、けっこう効果をあげている話を聞いていたので、神戸での日本鳥学会大会参加を機に訪ねてみました。
薄暗くなっても、大手前通りにはムクドリはいませんし、たまに小群が飛んできても、街路樹には止まらず、駅方向へ方向転換していきます。確かに新兵器はムクドリが嫌うと思われる音を出して、効果を発揮していました。しかし、駅の反対側の出口のロータリーへ行ってみると、ホテル前の街路樹でムクドリが鳴き騒いでしました。結局、彼らは嫌な音がする場所を避けて、ねぐら場所を変えただけのようでした。〔写真2〕
9月23日(水)イソヒヨドリ調査を終えて、近鉄奈良線・新大宮駅前についたのは午後5時20分。一昨年、この一帯や近鉄奈良駅前で、街路樹が丸太状に切られ、マスコミの話題になった現場を初めて見ました。2年を経て、切り口からは若枝が出ていて、事情を知らなければ、変わった形の街路樹とも見える状態になっていました。
5時半、300羽程度の群れが旋回、10分後には大群が乱舞状態となり、辺りが薄暗くなった6時前には、踏切を挟んだ道の両側の電線に、目測4000羽がずらりと止まり、騒ぎ続けていました〔写真3〕。 7時前に近鉄奈良駅前に行ってようすをみましたが、こちらは飛来していないようでした。
全国各地の駅前などで社会問題となっている「ムクドリの集団ねぐら問題」は、今のところ解決策がないのが実情。姫路のメイン通りからムクドリを一掃したという実績を持つ“新兵器”も、奈良市民からみっともないと批判を受けるほどの街路樹の伐採も、残念ながら「にぎやかな場所がいい」というムクドリたちの強い嗜好には決定打とはならなかったようです。
なぜそんな環境をムクドリが好むのか、こちらも残念ながら、研究者は明快な答えを出せないでいます。
(川内 博)
(川内 博)
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