2017年10月10日火曜日

日本鳥学会大会のようす2・ポスター発表「イソヒヨドリの内陸部進出」

2年前、兵庫県立大学での日本鳥学会大会時に「自由集会」で旗揚げしたこのテーマ。
ツバメ・カラスにつぐ当会の統一研究課題。今回初めてその成果の一部を発表しました。
タイトルは「イソヒヨドリはなぜ内陸部に進出するのか・第1報」
 期間中の9月16日~17日まで掲示したほか、16日(土)の15時30分~17時の間、コアタイムとして詳しく説明を行いました。多くの方に興味をもって聞いていただき、質問とともに、いろいろな情報の提供もいただきました。
 今回の発表は9枚のプレートで構成。まず、この問題の概要を3枚で、ついで愛知県下での状況・千葉県下での状況をそれぞれ2枚のプレートで発表しました。8枚目には、伊豆野鳥愛好会(静岡県)からご提供をいただいたイソヒヨドリがヒナに持ってくる餌のアップ写真を掲示し、イソヒヨドリの食性の多様さをアピールしました。最後は、「新聞読者から情報70件・・・これからの調査」として、朝日新聞の掲載記事〔本ブログ5月22日付参照〕への関西圏からの情報の多さを紹介し、今後の新たな調査方向を示しました。

 ところで、隣のポスターは「岩礁帯おけるイソヒヨドリの採食生態」という題で、長岡市立科学博物館の鳥居憲親さんが、この鳥のもともとのハビタットでの調査を発表されていました。いろいろな話をうかがい、大変参考になりました。その中で、とくに重要と思ったのは、「ビルなどが建ちならぶ町的な環境でも岩礁地帯でも、その食性にあまり変わらない」という知見でした。



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イソヒヨドリはなぜ内陸部に進出するのか・第1

〇川内 博・橋本啓史・越川重治・柴田佳秀(都市鳥研究会)

一昨年、神戸での本大会時に同名の題で自由集会を開いた。イソヒヨドリは磯鵯の名の通り、その繁殖分布を見ると、岩場のある海岸線に限られていて、遠浅の海岸線の東京湾に面する東京や千葉には生息していなかった。しかし現在、東京でも繁殖している。場所は、東京湾から50㎞内陸に入った八王子市内で、この地では2009(平成21)年から記録され、隣接する日野市や多摩市、神奈川の相模原市などへと拡大している。また、東京都心部の渋谷でも定着している。愛知では、1990年前後から徐々に内陸部の市街地での記録が増え、2008年には岡崎市内の民家で繁殖が記録され、2014年には名古屋中心部でも家族群が観察されている。さらに、この鳥は関西圏での定着が目立ち、今年5月に朝日新聞に紹介されたとき、多数情報が寄せられたが、その7割は大阪・兵庫・奈良・京都などからであった。
 世界的な分布を見るとユーラシア大陸の岩場に広く生息していている鳥である。磯に固執していたこの鳥が、なぜ今になって内陸部に進出してきたのかに着目している。現在、「全国鳥類繁殖分布調査」とリンクして全国調査を展開している。



2017年10月1日日曜日

日本鳥学会大会のようす1・自由集会「ムクドリのねぐら問題」

毎年、会として参加している日本鳥学会大会が2017年9月15日(金)~18日(月・祝)に茨城県つくば市で行われました。折から台風18号が接近し、その影響が心配されましたが、とくに大きなトラブルはありませんでした。大会参加者は全国から571名。
 当会関係の発表については、8月25日付本ブログをご覧ください。会としては、ポスター発表で「イソヒヨドリはなぜ内陸部に進出するのか・第1報」を、自由集会で「全国で増える都市のムクドリ塒問題を考える」を開きました。「イソヒヨ」の報告は次回行います。

 自由集会は、9月16日(土)午後6時半~8時半にかけて行い、出席者は40名でした。
 講演は、行政の立場から、その対応について千葉県市川市役所の田中栄一氏、ついで大阪のようすを大阪市立自然史博物館の和田 岳氏、最後に企画者の越川重治氏から千葉を中心とした関東地方の状況と塒形成の要因などについて語られました。〔下記の講演要旨をご覧ください〕。“共存”ということをコンセプトとしていて、参加者からの意見・情報も出され、無事終了しました。
 ただ、30年来の難問で、具体的な解決策までは話が発展しませんでした。また、「質問票」には様々な角度からの考えが記されていましたが、今回は時間がなく対応できませんでした。社会的な問題として、新聞記者も取材にきていましたので、どんな記事になるのか興味を持っているところです。

 ちなみに、来年度の大会は、新潟大学で、9月14日~17日の予定で開かれます。




全国で増える都市のムクドリ塒問題を考える
越川重治・川内博(都市鳥研究会)・和田岳(大阪市立自然史博物館)

 ムクドリは、古くから水田や畑の害虫を食べてくれる鳥として大切にされてきましたが、昨今は都市の駅前の街路樹や電線等に集団で塒をとり、その鳴き声の騒音、糞や羽毛などの衛生面などで社会問題となってきています。住民からの苦情を受けた多くの自治体は、樹木の強剪定・伐採、ネットかけ、爆竹・花火、ディストレスコール、特殊音波、ハリスホーク等による徹底的な追い出しの対策を実施しています。
各自治体は自分のところからいなくなれば、問題は解決したと考えていますが、モグラたたきのようにムクドリは塒場所を変えて、近くの自治体の駅前に新たなねぐらを作って移動しているだけで問題は解決していないのです。はじめは関東地方でこのような都市塒の増加がみられましたが、その後関西地方をはじめ全国で同じような都市塒が増加していきました。ムクドリの都市塒の問題は、自治体の垣根を超えてより広域的に考えていかなければいけない問題なのです。
昨年の自由集会のテーマであったカラスの塒問題と同じく、ムクドリの生態や行動を科学的に調べコントロールしていくことが大切ですが、多くの自治体の対症療法的な対応は逆に塒場所を増やし、人工物への塒の移動等より対応を難しくしているのが実情です。その中でもいくつかの自治体は、専門家の話を聞きながらムクドリ問題に苦悩しながら対応しています。
今回は、関東地方と関西地方のムクドリねぐらの実態と、行政側から問題点をあげてもらい、鳥の専門家のみなさんとその問題点をまとめ、討論により、新たな方向性を見つけ出したいと考えております。


話題提供予定者
越川重治(都市鳥研究会)
「ムクドリの関東地方での都市塒の増加と塒の成立要因」

和田岳(大阪市立自然史博物館)
「大阪府周辺のムクドリの集団塒の状況」

田中榮一(千葉県市川市環境部自然環境課主幹)
「市川市でのムクドリ対策」


総合討論    司会 川内 博 (都市鳥研究会)