2017年10月1日日曜日

日本鳥学会大会のようす1・自由集会「ムクドリのねぐら問題」

毎年、会として参加している日本鳥学会大会が2017年9月15日(金)~18日(月・祝)に茨城県つくば市で行われました。折から台風18号が接近し、その影響が心配されましたが、とくに大きなトラブルはありませんでした。大会参加者は全国から571名。
 当会関係の発表については、8月25日付本ブログをご覧ください。会としては、ポスター発表で「イソヒヨドリはなぜ内陸部に進出するのか・第1報」を、自由集会で「全国で増える都市のムクドリ塒問題を考える」を開きました。「イソヒヨ」の報告は次回行います。

 自由集会は、9月16日(土)午後6時半~8時半にかけて行い、出席者は40名でした。
 講演は、行政の立場から、その対応について千葉県市川市役所の田中栄一氏、ついで大阪のようすを大阪市立自然史博物館の和田 岳氏、最後に企画者の越川重治氏から千葉を中心とした関東地方の状況と塒形成の要因などについて語られました。〔下記の講演要旨をご覧ください〕。“共存”ということをコンセプトとしていて、参加者からの意見・情報も出され、無事終了しました。
 ただ、30年来の難問で、具体的な解決策までは話が発展しませんでした。また、「質問票」には様々な角度からの考えが記されていましたが、今回は時間がなく対応できませんでした。社会的な問題として、新聞記者も取材にきていましたので、どんな記事になるのか興味を持っているところです。

 ちなみに、来年度の大会は、新潟大学で、9月14日~17日の予定で開かれます。




全国で増える都市のムクドリ塒問題を考える
越川重治・川内博(都市鳥研究会)・和田岳(大阪市立自然史博物館)

 ムクドリは、古くから水田や畑の害虫を食べてくれる鳥として大切にされてきましたが、昨今は都市の駅前の街路樹や電線等に集団で塒をとり、その鳴き声の騒音、糞や羽毛などの衛生面などで社会問題となってきています。住民からの苦情を受けた多くの自治体は、樹木の強剪定・伐採、ネットかけ、爆竹・花火、ディストレスコール、特殊音波、ハリスホーク等による徹底的な追い出しの対策を実施しています。
各自治体は自分のところからいなくなれば、問題は解決したと考えていますが、モグラたたきのようにムクドリは塒場所を変えて、近くの自治体の駅前に新たなねぐらを作って移動しているだけで問題は解決していないのです。はじめは関東地方でこのような都市塒の増加がみられましたが、その後関西地方をはじめ全国で同じような都市塒が増加していきました。ムクドリの都市塒の問題は、自治体の垣根を超えてより広域的に考えていかなければいけない問題なのです。
昨年の自由集会のテーマであったカラスの塒問題と同じく、ムクドリの生態や行動を科学的に調べコントロールしていくことが大切ですが、多くの自治体の対症療法的な対応は逆に塒場所を増やし、人工物への塒の移動等より対応を難しくしているのが実情です。その中でもいくつかの自治体は、専門家の話を聞きながらムクドリ問題に苦悩しながら対応しています。
今回は、関東地方と関西地方のムクドリねぐらの実態と、行政側から問題点をあげてもらい、鳥の専門家のみなさんとその問題点をまとめ、討論により、新たな方向性を見つけ出したいと考えております。


話題提供予定者
越川重治(都市鳥研究会)
「ムクドリの関東地方での都市塒の増加と塒の成立要因」

和田岳(大阪市立自然史博物館)
「大阪府周辺のムクドリの集団塒の状況」

田中榮一(千葉県市川市環境部自然環境課主幹)
「市川市でのムクドリ対策」


総合討論    司会 川内 博 (都市鳥研究会)