ひとつはカンボジアのアンコール・ワットでのこと。昨年12月に観光ツアーに参加し、プノンペンとシェムリアップを訪れました。主目的は世界遺産の観光ですが、途中、常に周辺にも目を光らせ、どんな鳥がいるのかチェックしていました。
旅行中観察できた鳥はあまり多くないのですが、「つばめの放鳥」の体験や途中の車中から多数見えたTVアンテナにかけられた巣がスズメの物であることの確認など、興味ある観察ができました。しかし、もっとも大きな収穫は現在進行中のイソヒヨドリのこと。
史跡最大のアンコール・トムへはいる石造りの「南大門」を通り抜けて、ふと振り返って門を見たところ、なにか動くものが目に入りました。双眼鏡で確認するとイソヒヨドリの雄〔写真1・2〕。タイプはアオハラではなく、日本と同じ栗色の腹でした。午後にはアンコール・ワットで、やはり石造りの建物の屋根に止まる雌を観察。当地の近くには大河(メコン)や東南アジア最大の湖(トンレ・サップ)はあるものの、海辺からは200kmはある内陸部。2か所の観察の共通点は「石造り」。
イソヒヨドリと「石造り」の関連をさらに実感じたのは、今年1月中旬のこと。東京湾のミヤコドリの生態調査中に、千葉県市川市下妙典の江戸川に注ぎ込む石造りの水門施設に止まるイソヒヨドリの雄〔写真3・4〕を見たとき。土手を歩きながら、こんなところにはイソヒヨドリがよくいるのだがと思ったのがみごとに的中。
1つひとつは小さな観察ですが、それを積み重ねることが、この鳥の内陸部進出の謎を解くひとつの手掛かりになるのではないかと思っています。
〔川内 博〕
写真1:アンコール・トムの有名な南大門の全景 |
写真2:南大門に止まっていたイソヒヨドリの雄 |
写真3:江戸川土手の水門施設の全景 |
写真4:石が多用されている施設に止まるイソヒヨドリの雄 |