東京・秋葉原と茨城県つくば市を結ぶ鉄道のつくばエクスプレス。そのほぼ中間にある柏の葉キャンパス駅周辺は、タワーマンションや大型ショッピングセンターが立ち並ぶ新しい街です。街の中心には、水辺を生かした調整池が整備され、「柏の葉アクアテラス」の愛称で親しまれています。
このアクアテラスは、集中豪雨による急激な雨水流出を抑えるという防災機能が第一の役割ですが、同時に、人々が水辺に親しめる憩いの場としての顔も持っています。岸辺にはヨシやヤナギが茂り、水面にはヒシが浮かぶなど、都市の中では貴重な自然環境が残されており、多様な生きものたちのすみかにもなっています。
私も、この良好な環境に魅かれて、定期的に生物観察を行ってきました。そして今年、2024年7月11日、ついにこの池でバンの繁殖を確認しました。
バンはかつては身近な鳥でしたが、近年は全国的に激減。全国鳥類繁殖分布調査によると、1990年代と2010年代を比較した増減率は-51.7%で、日本で繁殖する鳥の中ではワースト7位の減少幅です。そのため、狩猟対象からも外されました。
そんなバンが、柏の葉アクアテラスでは一年を通して普通に見られ、さらに今年は5羽のヒナを連れたペアと、2羽のヒナを連れたペア、計2組の繁殖を確認しました。この場所が、都市の中に残された貴重な繁殖地であることがはっきりと分かったのです。
この環境が守られる限り、バンはきっと今後もここで命をつないでいくでしょう。人の利用も多い場所だけに、管理者と連携しながら、この大切な繁殖地を未来へ守っていきたいと思います。(柴田佳秀)
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確認したバンの親子 |