2025年5月18日日曜日

日本橋小伝馬町エリアでツバメの調査

前回のブログで、東京駅を中心とした3km四方におけるツバメの繁殖調査を始めると紹介しました。その調査の一環で、5月1日に私が担当するエリアである日本橋小伝馬町や人形町をまわってきました。

このエリアは5年前にも私が担当したのですが、道路が碁盤の目のようになっていて、すべてを徒歩で回るのはなかなか大変でした。そこで今回はレンタサイクルを利用。現在、都心部にはレンタサイクルがあちこちにあり、アプリで簡単に借りることができます。これで調査エリアをくまなく回ることが可能になりました。

ちなみに、調査エリアは、ほぼビル街で大小の雑居ビルがびっしりと埋め尽くしています。そのところどころに木々が植えられている小規模な公園があります。

調査担当エリア

さて、エリアをくまなく回った結果。巣があったのはわずか一カ所のみ。ここは5年前にも営巣していて、どうやら毎年営巣を続けていた感じでした。ちょうど、巣を作っている最中で、気になるのはその巣材となる土をどこから持ってくるのか。少し追跡してみましたが、すぐに見失ってしまいわかりませんでした。また、近くに小規模な公園があり、そこにある樹木の上を飛んで食物を取っているように見えました。巣材をとる場所と採食する場所あることでこの場所での営巣が可能なのかもしれません。そして、一番大事なのが営巣を人が許していることです。管理人さんと少しお話することができ、飛来した時期をきちんとメモにとっていらっしゃったので、ここのツバメは愛されているんだなと感じました。

巣から出るツバメのメス

ツバメ以外の鳥もこの調査では気をつけているようにしています。最近、数が減ったと話題のスズメは、街中にある小規模な公園があると必ず見かけました。どうやらスズメにとって、公園が採食環境で重要な場所であることが伺えました。ここで食べものをとり、電柱の部材で営巣している。そんな姿がありました。

このような緑がある公園にはスズメがいました

その他、イソヒヨドリなども注意をしましたが、他に見たのはハクセキレイ、ハシブトガラス、ヒヨドリ、ドバト。また、日本橋川にはウミネコとイソシギがいたのが印象的でした。調査からそろそろひと月が過ぎようとしていますので、また、出かけて追加の調査を行いたいと思っています。(柴田佳秀)

日本橋川にいたウミネコ





2025年4月24日木曜日

第9回・東京駅を中心としたツバメの繁殖調査を始めます

今から40年前の1985(昭和60)年から5年ごとに実施している「東京駅を中心とした3㎞四方におけるツバメの繁殖状況」調査。前回2020年の第8回はコロナ禍で、全域の調査は中止し、有志による状況調査を行いました〔『URBAN BIRDS』Vol.39 2022年〕。今回は、従来通り会員による共同調査を4月末~7月中旬にかけて行います。 

第1回の調査では44か所という予想以上の営巣地を発見しましたが、2回目の1990年には半分以下になり、その後は回を追うごとに右肩下がりでしたが、7回目の2015年には5か所増の19か所での営巣を確認しました〔『URBAN BIRDS』Vol.32 2015年〕。  

全国各地でツバメの繁殖調査は行われていますが、いずれも同じように減少傾向にあるようです。その主因は餌である「空中の虫たちの減少」と彼らの好む「営巣場所の不足」ですが、それとともに人がその存在に“無関心”になったことも挙げられます。

“ツバメは人好き”とよくいわれますが、これは人の近くだと天敵のカラスやスズメが近づかないという彼らなりの“戦略”と考えられますが、目も向けてくれない状況だと事情が違います。さらに、建物の構造や材質が巣を造りにくくなったり、新築の壁に泥と枯草で作る巣を嫌う傾向もあったり、ピンチが続いています。  

写真上は第1回の調査時に見つけた「ブリキの巣」です。もちろんツバメが作ったものではありません?  軒先に造った巣が壊れて、その家の住人が身近にあったブリキ缶で巣の代用にしたものです。写真下は、老舗のデパート松屋銀座・東館につけられた軽量の人工巣です。今年も“愛されるツバメ”がたくさん戻ってくることを願っています。〔都市鳥研究会・事務局〕




2025年3月22日土曜日

エナガの営巣条件とは

エナガの繁殖シーズンになりました。

彼らは、早春の2月中頃から苔や地衣類をクモの糸を絡めて直径20㎝ほどの丸い袋状の巣を作ります。そして、中には大量の鳥の羽毛が入っています。ある調査では2,900枚も入っていたそうですから驚いてしまいます。

巣を作るエナガ

ちなみに羽毛の枚数は寒い時期に作られた巣ほど多く、暖かくなると減る傾向があるそうです。そういったことから考えると、巣の中の羽毛は寒さ対策である可能性が示唆されています。

ところで、この大量の羽毛をエナガはどこから調達するのでしょうか。よく言われるのは、オオタカなどが獲物を捕らえ、食べるために羽毛を抜いたあとから持ってくるというものです。確かにオオタカがいると、地面にドバトなどの羽毛が大量に落ちていることがあります。そこからどんどん持ってくるのでしょう。巣の中に同じ種の羽毛が大量にあることから、猛禽類の存在がエナガの営巣には重要ではなないかとする論文があります。

今、エナガは東京都心部の緑が多い公園でも繁殖をしています。かつてはエナガの存在すらほとんど感じなかったのですが、現在は繁殖するようにまでなっているのです。そして、その繁殖開始の背景には、オオタカの存在が指摘されています。オオタカが棲むようになったことで羽毛が手に入り、エナガも巣造りが可能になったのではないかという仮説です。

ただ、私が観察している場所ではエナガが営巣していますが、オオタカはいません。そこでエナガを追跡して、羽毛を調達している現場を突き止めることにしました。すると彼らは必ず池の畔へ向かっていることがわかりました。岸辺にはカモ類が羽づくろいして抜け落ちた羽毛がたくさん落ちていて、そこから羽毛を調達していたのです。

カモの羽毛を運ぶエナガ

このことから、エナガの繁殖には必ずしもオオタカなどの猛禽類がいる必要はなく、カモがいる池があれば営巣可能であるように思えるのです。これからはもっと詳細にデータをとっていきたいと思っています。(柴田佳秀)







2025年2月21日金曜日

「科博の「鳥・特別展」3日後に終了

開催期間はまだたっぷりあると思っているうちに、2月24日の終了日まであと1週間という2月18日、東京・上野の国立科学博物館で開催されている「特別展・鳥~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統」をみにいきました。

まず驚いたことは、チケットを買うのに10分並んだこと。会場内もごった返すほどの人の波。客層は老若男女、小さな子どもも混じっていました。みなさん熱心に展示されている“鳥の群れ”を見ていました。会場内の係員に“いつもこんなに人がいるの?”と聞いたところ、ここのところとのこと。皆さん私と同じで、“まだ時間的な余裕がある!”と後回しにしていたようです。

キャッチフレーズは「新しい鳥類の系統」ということで、会場いっぱいに新系統樹にそって本剥製が展示されていていました。羽の色や姿かたちのさまざまを目のあたりにでき、その多様性をあらためて知ることができました。

そんな中で、「オガサワラカワラヒワ」が仮剥製のまま、何の説明もなく置かれていました。通りすがりの年配のご夫婦が“なんであの鳥だけがよこたわっている?”と不思議がっていました。会場内、動画以外は撮影OKでしたので、その寝姿をパチリ【写真・上】。

初めて見るもののなかで、天井から吊り下げられている「ペラゴルニス・サンデルシ」の復元モデルは一見の価値あり。飛ぶ鳥としては史上最大で、嘴にトゲ状の突起がある「骨質歯鳥類」とのこと。迫力ある姿に見入りました。【写真・下】

約2時間、全展示物を見てまわりましたが、そのボリュームは一見の価値あり! 混雑の中、音声ガイド(有料)は役立ちました。2月24日(月・日)が最終日。まだの方は混雑覚悟でお出かけください。

オガサワラカワラヒワ

ペラゴルニス・サンデルシ


2025年1月19日日曜日

都市の変化に翻弄される都会の鳥たち

私の都市鳥観察のメインフィールドの一つは千葉県柏市にあるJR柏駅周辺です。たいてい毎日、買い物で利用するのですが、そのついでに鳥を見ています。
駅近くにはイトーヨーカドーがあって、その壁面にある排気口でチョウゲンボウが繁殖しており、毎年、ヒナが巣立つのを楽しみにしていました。

イトーヨーカドー柏店の排気口にいるチョウゲンボウのヒナ

ところが昨年10月、このイトーヨーカドーが閉店してしまい、築50年以上のこのビルが今後どうなるのかわかっていません。おそらく取り壊すことになると思いますが、そうなるとこのチョウゲンボウの動向が気になります。新しい営巣場所を見つけて棲み続けるのか、それとも姿を消してしまうのか。

また、駅に隣接するデパート「そごう柏店」には、冬期を中心にハヤブサがとまっていることがあり、それを観察するのも楽しみでした。

展望レストランの梁にとまるハヤブサ

このデパートには特徴的な展望レストランがあり、その下がハヤブサのお気に入りとまりばで、ハヤブサ特有の下にたれる糞がたくさん建物のひさしについていることから、そうとう頻繁に利用していることがうかがえます。

青いひさしには無数の糞が

また、2022年の春にはオスとメスのペアが滞在していたので、もしかしたら繁殖?と期待したのですが、確認には至りませんでした。
そのそごうも2016年に経営不振で閉店。2024年まで取り壊されずに残っていたのですが、現在は解体工事の進められています。その結果、現在、ハヤブサの姿はありません。

チョウゲンボウやハヤブサは、都市環境に新たな生息地を見いだし、アーバンライフをするようになりました。しかし、都市は人の都合で変化するものでもあります。彼らはこれからどうするのかその動向を見つめていきたいと思っています。(柴田佳秀)