公園の池でカモを見るのが楽しい季節になりました。近所の公園の池にも、マガモやオナガガモ、カルガモ、コガモが続々と渡ってきて、たいへんにぎやかです。
先日、そんなカモたちを観察していると、一部の個体が岸に上がり、人のそばに集まっていることに気がつきました。どうやらエサを与える人がいて、それを目当てに集まっているようなのです。
いちばん積極的に近づいているのはカルガモで、その少し後ろに控えるようにオナガガモがいます。
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| 上陸してパンを食べるカルガモ |
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| 少し距離を置くオナガガモ |
しかし、この池で最も多いのはマガモで、おそらく全体の8割近くを占めています。次に多いのがコガモで、オナガガモやカルガモはどちらかといえば少数派です。
不思議なことに、最も数が多いマガモは、給餌にはまったく興味を示しません。コガモも同じで、池にパンを投げ入れても見向きもしないのです。
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| マガモは給餌にまったく無関心 |
では、「種によって給餌を受け入れる・受け入れない」、その差はどこから生まれのでしょうか。札幌の友人によると、そちらではマガモがカルガモのように餌づいているそうです。つまり、マガモだから人のエサを食べない、という単純な話ではなさそうです。
興味深いことに札幌のマガモは、「繁殖していて一年中いる定着個体は餌づくが、国外から渡った個体は餌づかない」というのです。こちらの池ではカルガモが繁殖しているので、その点も何か関係しているのかもしれません。
では、なぜ日本で繁殖していないオナガガモが、なぜ人のエサを食べるのでしょうか? オナガガモは、ハクチョウの給餌場に大量に集まることが知られています。
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| ハクチョウの給餌場に集まるのはほぼオナガガモ |
以上の観察から、カモ類が人の与えるエサを利用するか否かは、単なる種間差だけでなく、個体が持つ経験、定着性、渡来経路といった背景要因が複合的に関与していると考えられます。現状では明確な結論を導くのは容易ではありませんが、行動生態学的に非常に興味深いテーマであり、今後も継続して観察を行い、要因を検討していきたいと思います。(柴田佳秀)



