今年は、1985(昭和60)年から5年ごとに続けている「東京駅を中心とした3㎞四方におけるツバメの繁殖状況調査」の実施年でした。地区ごとに担当者が歩き回り、ツバメの巣の有無を調べるという調査です。
私も担当地区を回り、当ブログでその様子を報告しました。ただ、「もしかしたら見落としがあるかも」と気になって、7月2日にSNS検索をしてみることにしました。最近はネット検索よりもSNSの方が、新しい情報に出会えることが多いからです。
まず「ツバメ・小伝馬町」など、地名を組み合わせて検索しましたが何もヒットせず。安心しかけたところで、ふと「ツバメ・東京駅」と検索してみたら――びっくりする投稿が飛び込んできたのです。
「えええ! なにこれ!」と思わず声が出てしまいました。写真を見ると、東京駅丸の内口改札ドームの高い場所に営巣していて、ヒナがまだ残っているのです。
さらに調べると、5月23日に「テクテクさん」が「東京駅にツバメの巣が!無事巣立つことを願うばかりです^^」と投稿していて、どうやらこの頃から営巣していたらしいことも判明しました。驚いた私は、すぐに調査メンバー全員にメールで知らせました。結果、誰も知らなかった事例だったのです。
そして7月4日、私も現場へ。すぐに巣が見つかり、4羽のヒナが巣立ち寸前の姿で並んでいました。巣はフロアから15mほどもある梁の上。こんな高い場所にあるツバメの巣はあまり記憶にありません。しかも券売機の前という位置も印象的。駅のツバメは、人がよく立ち止まる場所を営巣場所に選ぶことが多いのです。
美しいドームの下を親ツバメが飛び交う光景は、息をのむほど見事でした。こんな姿を目にした人は、これまで誰もいなかったのではないでしょうか。しかも撤去されずに残っていたのも驚きです。券売機前という環境にもかかわらず、JRが糞害を防ぐ柵を設置して、ツバメを見守っていたことに温かさを感じました。
その後、友人からの情報によると、7月5日の朝にはヒナが2羽に減り、7月6日の夜には巣が空になっていたとのこと。無事に巣立ったのだと思います。
思い返すと、この営巣のヒントはすでにあったのです。東京駅丸の内南口前のビルに勤める友人が「オフィスの外をツバメ2羽が旋回。ここまで来るのは珍しい」とフェイスブックに投稿していて、私は「皇居あたりに巣があるんじゃないの」と軽く返してしまいました。まさか東京駅そのものに巣があったとは!
40年間続いているこの調査」では、東京駅構内での営巣記録は今回が初めて。来年以降もツバメがやってくるのか、注目して見守りたいと思います。(柴田佳秀)
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巣があった東京駅丸の内南口 |
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4羽のヒナと給餌する親鳥 |
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ドームの下を飛ぶ親鳥 |