2024年10月19日土曜日

秋はイソヒヨドリの移動の時期?!

先日、自宅で窓を開けて仕事をしていたら、外から聞き覚えのある鳥の囀りが聞こえてきました。イソヒヨドリの声です。自宅は千葉県北西部の住宅地にあるマンションなのですが、3年ほど前から10月になると、決まってイソヒヨドリがあらわれるようになりました。たいていは1羽ですが、同時に3羽のオスが鉢合わせしたこともあります。このときは、1羽が背中をふくらませ、頭を低くして威嚇のようなポーズをつくり、もう1羽は小声で囀っていました。

また、秋にあらわれるのはオスばかりではなく、メスも姿を見せます。そして、雌雄共に成鳥で幼鳥や若鳥は姿をみせません。これまでも9月から11月にかけて、思いがけない場所でイソヒヨドリを目撃したこともあるので、この時期が彼らにとって移動シーズンであるのは間違いなさそうです。ただ、若鳥ならば新天地を求めて移動するのはわかりますが、成鳥がなぜ移動するのか、いまひとつ理由がわかりません。近所の繁殖地では、繁殖が終わると鳥の姿がなくなるので、こういった鳥が冬の生活の場を求めて移動している可能性もあります。

我が家に立ち寄るイソヒヨドリは、翌日にはいなくなるので一時利用なのでしょう。当地は戸建てやマンションがびっしりと建ち並ぶ住宅街なので、暮らす条件が整っていないのでしょうか。もし、定着して繁殖してくれれば、イソヒヨドリの研究が進むのですが、そううまくいかないようです。(柴田佳秀)

背中をふくらませたオス








2024年9月27日金曜日

「日本鳥学会2024度大会」に参加して・とくに「鳥インフルエン ザ」の公開シンポ

日本鳥学会の2024年度の大会が、東京大学農学部(東京都文京区)を中心に、9月13日(木)から17日(火)まで開かれ、1200名の参加者で盛況に終わりました。

内容は口頭・ポスター発表、自由集会、シンポジウムなど多彩で、天候も月曜日に小雨だった以外問題なく、朝から夜まで人波が絶えませんでした。なかでも“若い人と女性”が目立ち、高校生以下の参加者が200名を超えるという状況でした。

【シンプルな大会看板を撮る参加者】


今回の大会でとくに興味深かったのは16日に中央大学後楽園キャンパスで開かれた「野生鳥類と高病原性鳥インフルエンザ:大規模感染に立ち向かう」という公開シンポジウム。

世界中に蔓延し、猛威をふるっている「鳥インフルエンザ」。日本でも今世紀に入り断続的に発生し、その勢いは衰えを知らずといった病気です。今回はこの問題に関係している方々が一堂に会し、どのように立ち向かっているかを多面的に報告されるという内容で、野生鳥類・家禽だけでなく、ヒトを含む哺乳類への感染も報告されているこの難問の現状を知るいい機会でした。ただ、この大問題を討議するには3時間は少なく、やや消化不良の結末だったのは残念でした。〔川内 博〕

配布されたパンフレットの表紙


2024年8月26日月曜日

千葉県北西部にガビチョウが進出

ガビチョウは、本来は中国南部や台湾、ベトナム北部などに分布する鳥ですが、飼い鳥が逃げ出す、あるいは放鳥によって、1980年代に北九州、1990年に山梨県で定着した外来種です(国立環境研究所)。そして、生態系に大きな影響を与えるとして特定外来生物に指定されている鳥でもあります。

ガビチョウが確認されている地域は、東北南部、関東甲信越、東海、四国、九州などで、その分布は拡大傾向にあるとされています。そして、関東地方では千葉県だけが分布の空白地帯とされていたのですが、2021年頃から千葉県成田市やいすみ市などで確認されるようになり、次第に空白地帯が埋められるようになってきています。

私が住む千葉県北西部、いわゆる東葛地区には、まだガビチョウが進入していなかったのですが、2024年4月に千葉県流山市でついに囀っている個体を確認(写真)。いよいよガビチョウが現れはじめました。その後、この地で継続的に観察している人の情報では、2023年11月には既にガビチョウの声を確認しているとのことなので、すでに昨年から進入してきていたのでしょう。

その後、注意深く観察をしていると、千葉県柏市こんぶくろ池の森でも囀っている個体が確認され、急速に分布を拡大している可能性が見られました。

ガビチョウは下草が良く茂る樹林地を好み、開けた場所には出てこない習性の鳥であるので、おそらく利根川の河畔林を伝って栃木県や茨城県から進入し、利根川と接続している利根運河の河畔林を通って東葛地区に入ったのではないかと考えています。なお、利根川河畔林では、2023年に我孫子市で観察したという情報があります。

最新の研究では、ガビチョウが鳥の卵を捕食することが明らかになっているので、在来種への影響が心配されます。今後の動向を注意深く観察する必要がありそうです。(柴田佳秀)





2024年7月30日火曜日

2年続けてツミが繁殖・マンション団地にて

昨年7月18日付で「マンション団地でのツミの繁殖」という紹介を本ブログにアップしましたが、同じ敷地内で今年も営巣し、3羽のヒナが巣立ちました。同地は埼玉県和光市駅から5分程度の場所で、11棟のマンションが建ち並び、敷地内にはケヤキなどの木々が生い茂る緑地となっています。昨年はテニスコートに隣接した広場のケヤキに営巣し、今年もその木から50mほど離れた通路わきのケヤキに営巣。【写真上】 

5~6月にかけてテニスコート付近でオナガが大騒ぎしているのは気づいていましたが、他の調査に忙しく、巣捜しは後回しにしていたところ、6月26日に偶然発見。巣は周りのマンションの窓や階段から見えない位置。ただし、人通りの多い通路からは丸見え。【写真下】  その通路はいつも通っていたところなので、それまでまったく気づかなかったのにはショックを受けました。発見時には巣内のヒナは大きくなっていて、7月初めには巣立ちました。

その後、敷地内を4羽のツミが鳴きあい・飛び交う姿を見かけましたが、7月20日過ぎには姿も声もなくなりました。〔川内桂子・博〕



2024年6月22日土曜日

ヤマガラとガビチョウで蟻浴を観察

鳥には、蟻浴という不思議な行動があります。文字通り昆虫のアリを体に擦りつけて浴びる行動で、世界では約200種の鳥で観察されています。日本では、カラス類が有名で私も過去にハシブトガラスとハシボソガラスで観察したことがあります。他にはカケスやキジバト、ムクドリも日本で観察例があるようです。しかしながら、そう頻繁に行うものではなく、観察のチャンスはあまり多くありません。

少し前になりますが、4月13日に千葉県野田市の郊外を歩いていると、人家の玄関に通じる土の道の上に、1羽のヤマガラが降りているのが目に入りました。食べものでも探しているのかなと思いながら観察を続けると、そのヤマガラは、地面にいる何か小さな物を嘴でつまみとり、尾羽の裏側あたりにつまんだ物をこすりつけています。嘴でくわえていたものを詳しく見てみると、どうやらそれはアリ。アリをくわえて羽毛にこすりつけていたのです。カラスの蟻浴は、アリがたくさんいる場所に座るなどしてたくさんのアリを体にたからせますが、今回のヤマガラは、1匹ずつ体にこすりつける方法を行っていました。調べてみるとヤマガラも蟻浴の記録があり、この行動も蟻浴と考えて良さそうです。利用していたアリはクロヤマアリのようでした。

アリを羽毛にこすりつけるヤマガラ

また、4月29日には東京都東大和市の雑木林で、ガビチョウが蟻浴しているシーンに出会いました。こちらもヤマガラと同じスタイルで、1匹のアリをくわえて体にこすりつける方法。アリもクロヤマアリでした。調べた限りでは、ガビチョウが蟻浴をする記録が見つからなかったので、珍しい記録ではないかと思っています。

じつは蟻浴ではないかと思われる行動は、イソヒヨドリでも観察しています。そのときは双眼鏡を持っていなかったので、はっきりとアリの確認はできなかったのですが、仕草から判断して蟻浴である可能性が高いと思いました。

さて、その蟻浴ですが、なぜ、そんな行動をするのか今のところはっきりしたことはわかっていないそうです。アリからは蟻酸が出るので、それを使って寄生虫を寄せ付けない効果があるといわれますが、蟻酸を出さないアリでも利用することから、そう単純な話ではなさそうです。また、アリから出す物質が蚊除けの効果があるという研究もあり、早くその解明が待たれるところです。(柴田佳秀)

ヤマガラと同じような方法で蟻浴をするガビチョウ







2024年5月30日木曜日

内陸部定着が進むイソヒヨドリ

当会事務局のある埼玉県和光市では、これまで2か所での繁殖記録があります。1か所は和光市駅近くの総合スーパー4階の屋上駐車場、もう1か所は同駅から数キロ離れた郊外の産業道路ぞいの大型郵便局の3階です。

今春の状況は、和光市駅周辺では8階建てのホテルの屋上や付近のビルの上で囀る姿や声が5月中旬まで確認できました。しかしそれ以降現在まで姿・声ともなく、生息しなくなったとも思われますが、これまでの経験からすると、突然巣立ちビナが現れるという可能性もあります。街なかでの繁殖確認はなかなか難しい鳥です。

一方、郊外の方は、5月4日に今年始めて、営巣地近くの小川沿いの手すりに止まる雄を見かけました。【写真上】その後、周辺で姿や声を確認していましたが、5月27日、ムカデをくわえた雄が、昨年も繁殖成功した営巣場所の近くに止まっているのを見かけました。【写真下】 雄は餌をくわえて巣穴に飛び込み、空で出てくるのを目撃しました。今のところ雌の姿は確認できていませんが、状況からペアで繁殖にいそしんでことは間違いと思いわれます。

ところで、今月は神奈川県や兵庫県からのイソヒヨドリ観察情報が5件寄せられました。なかには営巣やヒナに関しての観察もあり、この内陸部定着がますます進んでいるようです。〔都市鳥研究会事務局〕




2024年4月15日月曜日

大分県でのミサゴの繁殖・人工物で営巣

 最近内陸部でミサゴ【写真】の生息がよく観察されていますが、大分県大分市在住の会員から「人工物での営巣」の情報が寄せられました。繁殖に関する話ですので詳細はここでは紹介できませんが、身近な場所での子育てが増えてくる兆候があります。“都市鳥・ミサゴ”にご注意ください。


携帯電話のアンテナの天頂部でミサゴが繁殖         鈴木達雄


ミサゴは大分県ではトビに次いでよく見られるタカで、私の家の近くの大分川ではよく水面に飛び込んで魚を捕える姿を観察できます。しかし、巣がどこにあるか長年見つけることができませんでしたが、3年前、探鳥の帰りにたまたま訪れた場所の携帯電話のアンテナの天頂部に枯れ枝を組んだ巣を見つけ、昨年ヒナが1羽巣立つのを確認しました。

巣は海岸から700m内陸の水田を臨む標高30mほどの丘陵にあり、周囲は7~8mほどの針葉樹の二次林に畑が点在するような里山です。

自宅から車で1時間ほどの場所のため、詳しい観察はできませんでしたが、巣の補修や交尾(3月10日)、ヒナ1羽の確認(5月24日)とその巣立ち(6月23日)などを確認できました。今年も3月10日に巣の中の番いを確認しています。

〔より詳しい記録は当会広報誌『都市鳥ニュース』に載せる予定です。・事務局〕




2024年3月28日木曜日

コサギの駅前ねぐら

サギ類は、何羽もの個体が集まって水辺などでねぐらを作る習性が知られています。先日、知人から神奈川県内の駅前にコサギのねぐらがあると教えていただき、見てきました。

ねぐらの場所は、駅のホームのすぐ脇にある樹木で、樹種はセンダンとトウネズミモチでした。この樹木のすぐ隣にはホームを貫くように小河川が流れていて、その川に覆い被さるように生えています。

日没15分前の午後5時15分には、一羽のコサギがこの樹木にとまり、ねぐら入りを開始。その後は約30分にわたって次々とコサギが飛来し、この日は54羽のコサギがここで夜を過ごしました。この光景はホームからとてもよく見え、まるで樹木に白い花が咲いたような感じです。当然のことながら、ホームにいる乗客もこの光景に気がつく人がいて、ちょっと驚いた様子も見られました。しかし、慌ただしい夕方の時間のためか、気がつかないで通り過ぎる人も多く、この無関心さがねぐらの安全を保障しているのかもしれません。

また、樹木がある場所は人の立ち入りができない場所であり、樹木の下は川が流れ、高さも数mはあるため、天敵が近づけない環境でした。そういった点でも、コサギは良い場所にねぐらを見つけたと思います。

さて、このねぐらはいつからあるか気になるところです。近くに常駐していた警備員の方に聞いたところ、1年前にはなったので、今年に入ってからではないかという話でした。その後、私の知人にこの駅を利用している人がいることが判明し、その人の話では2024年1月1日にはねぐらがあったことを確認しているそうです。

おそらくこのねぐらは、コサギの冬だけの利用だと思われるので、そろそろいなくなっているかも知れません。その後、どうなるか継続的に観察してみたいと思います。(柴田佳秀)

頭を体にいれ眠るコサギ

ホームから見たねぐら




2024年3月5日火曜日

内陸部のイソヒヨドリの繁殖生態解明にご協力を

東京・府中市多摩川の左岸の河原を踏査中、河口から約30㎞の是政橋に差しかかると“モズの物真似鳴き”のようなぐぜり声が聞こえてきました。声の主は橋脚の陰に隠れて見えないのでしばらく待っていると奥から出てきました。イソヒヨドリの雄でした【写真上】。のど元が小刻みに震えて、小さな声で囀っていました。3月3日の日曜日朝、ランニングする大学生グループ、ジョギングする年配者、散歩する夫婦がすぐ下を通り過ぎていきます【写真下】。このイソヒヨドリ君にとってはいつもの風景のようで警戒のそぶりはありません。カメラをもって近づくと反応し、うす暗がりの奥へ引っ込むこともありましたが、少し待つとまた縁へと出てきて小声で囀っていました。  

都市鳥研究会ではイソヒヨドリの内陸部進出の意味を調べています。「生息情報」は全国各地から寄せられていますが、「繁殖・営巣情報」はなかなか集まりません。実際この鳥の繁殖期の動きをみていると、「このあたり・この建物で営巣しているようだ」というところまでは明らかにできますが、「巣がどこにある・どんな子育てをしている」ということになると追えない・調べられないことがほとんどです。

“磯にへばりついていた鳥”が市街地や郊外、山間部でというような内陸部で観察される状況が全国的に見られています。何らかの意味があることは確かでしょうが今のところは謎です。繁殖生態の解明にご協力ください。〔都市鳥研究会〕









2024年2月2日金曜日

柏駅ビルのドバト

駅ビルには、よくドバトがいます。テラスや隙間などがたくさんある大きなビルは、本来の生息地にある自然の崖と同じような構造のため、繁殖や寝る場所として利用しているのでしょう。私がよく利用するJR常磐線柏駅の駅ビルにも、数十羽のドバトがいて、ひさしにずらっと並ぶ光景が見られます。

駅ビルにドバトがいるもう一つの理由として、給餌があります。お客さんを待つタクシーのドライバーさんがドバトに餌をやる姿は、一昔前にはよく見られた光景でした。ところが、何年か前から、柏駅前ではそんな光景がすっかり見られなくなり、駅ビルにいるドバトは、だんだんいなくなるのではと予想していたのです。

現在はそれから数年は経過しましたが、予想に反して、駅前のドバトはいっこうに減ることはなく、むしろ増えているのではないかと思えるくらいになりました。それと同時に、この鳥たちは、いったいどこで食べものを得ているのだろうと疑問が生じたのです。

駅ビルにすむドバトの行動を観察していると、数羽の小集団となってどこかへ飛び去る様子が見られます。おそらく食べものを求めて出かけているのでしょう。駅から2kmほど離れたところに小河川が流れているのですが、そこでドバトを見るようになったのもだいたい数年前からです。そこでは、地面に落ちている種子を丹念に探している姿を毎日のように見ます。要するに自然にある食べものを探して得ているのです。

標識や発信器をつけて追跡したのではないので、このハトたちが駅ビルの個体とはいえませんが、その可能性高いと思っています。給餌がなくても、しっかりと自分たちの力で生き抜いているのでしょう。

ドバトの原種であるカワラバトは、ねぐらや繁殖場所となる崖と食べものの種子がある採食場所を毎日、往復して暮らしていました。その習性を利用して伝書鳩が作られたのですが、駅ビルにいるドバトたちは、現在でもまったく同じような暮らしをしてるのだなと思いました。(柴田佳秀)

柏駅ビルのドバト

河川敷でムクドリと採食する




2024年1月20日土曜日

東京都心・日比谷公園でウグイス5羽を

日本初の近代的洋風公園として知られる日比谷公園でウグイス5羽を確認しました。

日比谷公園は東京都心・千代田区の皇居外苑に隣接し、面積は16ha。音楽堂や公会堂、図書館、テニスコート、噴水池などがあり、オープン型で24時間出入り自由な空間です。

ここにいつもいる鳥は、ドバト・スズメ・ヒヨドリ・カルガモなどありふれた種類が中心ですが、冬になるとカワセミ・ツグミ・キセキレイなどとともにウグイスが定着しています。

ウグイスは東京都ではこれまでは完全な漂鳥(ひょうちょう)。市街地では冬鳥で、春先になると奥多摩などの山地へ移動する鳥でした。しかし、ここのところ徐々に繁殖分布を広げ、最近は市街地の23区でも繁殖期に生息しているのが観察されています。そのため、その美しい囀りを街なかの住宅地や公園で5月になっても楽しむことができるようになってきています。数年前には新宿御苑で繁殖期に囀りが長期間聞かれ、その後古巣も発見されたこともありました(子育ては確認されていないようですが)。

1月18日に1時間ほど探鳥したところ心字池・桜田通り沿い・松本楼の付近で各1羽、そして野外音楽堂沿いで2羽と計5羽を確認し、その写真も撮れました。【写真上】

公園はオープン型で、建物敷地以外は人が通れ、彼らが好むようなブッシュは少ないので、園内のほぼ全域に生息しているのは予想外でした。

23区内では公園などの緑地は徐々に増えていますが、彼らが好むような環境が増えたとは思えません。しかしこの事実は、何らかの“理由”があると考えざるをえない状況です。

造成されて120年経ち、都では老朽化とバリアフリーの設置を考え、10年計画で再整備を進めています。【写真下】 新しい“日比谷公園”で、どのような鳥がどう棲むようになるのか、まずは現状の鳥のようすを記録として残しておきたいと思っています。それにしても“都市鳥ウグイス”が誕生するのか目の離せない状況です。〔川内 博〕



 





2023年12月31日日曜日

『都市鳥ニュース』№35・特集「都市の水辺の鳥たちの今」を発行

都市鳥研究会の広報誌・『都市鳥ニュース』を発行しました。【表紙】『都市鳥ニュース』は毎年6月と12月に会員にPDF版をメールでお送りしているものです。

今回の特集は「都市の水辺の鳥たちの今」ということで、東京郊外の緑地、井の頭公園・石神井公園・善福寺公園の池でのサギ類やオオバン・カワウなどの繁殖のようす、また、名古屋市中心部を南北に流れる堀川での越冬水鳥相やカワウのコロニーのようすが報告されています。

さらに、東京都と神奈川県の境を流れる多摩川での、1976(昭和51)年・1986(昭和61)年と2019~21(令和元~2)年の3回実施された「全流調査」を比較した報告書『多摩川鳥類カウント再現』について紹介しています。この調査は、昭和時代に建設省京浜事務所からの委託で実施された調査と、約40年後にほぼ同じ手法で実施されたものの記録が収録されていて、同じような調査を実施されている方にとっては得難いデータ集です。今のところネットにアップされる予定がなく、残部は20冊程度とのこと。その申込み先なども掲載されています。

『都市鳥ニュース』は会員以外にも希望があればメールでお送りしています。興味ある方は当会にメールでその旨ご連絡ください。〔事務局〕




2023年12月7日木曜日

イソシギが千葉県習志野市の公園の芝生で採餌

千葉県習志野市谷津3丁目の谷津公園の芝生広場で、2021年11月12日14時10分に芝生にイソシギが飛来し、採餌をはじめました。飛来した場所から南に約100メートルのところには谷津干潟があります。ちょうどこの日は業者が芝刈りをしていたので昆虫等の小動物が見つけやすかった可能性があります。

イソシギは単独で約10分採餌した後6分ほど芝生で休んでいましたが、人が近づき飛び去ってしまいました。何を食べていたかはわかりませんが、イソシギが公園の芝生で採餌しているのを見るのは珍しいので報告します。(越川重治)





2023年11月23日木曜日

“迷惑鳥”イソヒヨドリ

 昨日当会のメールボックスに「初めてメールします。イソヒヨドリのことを調べていたらこちらに辿りつきました」という奈良県在住の方からの相談が届いていました。文面は「最近イソヒヨドリが家の軒先でねぐらをとるようになった。とくに悪さはしないが、このままでは繁殖期に営巣するのではないかと心配。」そのわけは“鳥が大の苦手”でイソヒヨドリに出てってもらうにはどうすればいいかという内容でした。  

最近市街地に定着した鳥で、“幸福の青い鳥・美声の持ち主”と歓迎の声が多い鳥で、何という鳥かという質問はよくきますが、“困っている”というメールは初めてでした。しかし、当会に相談は来ていませんが、“迷惑”という話もよく聞きます。一番多いのは「自宅のマンション屋上で早朝から大きな声で鳴いてうるさい!」といったものです。次に多いのは餌をねだるなど「図々しい態度」といった行動面です。

この鳥の食性は幅広く、昆虫やトカゲ・ムカデ【写真上:餌を持ってきた雄親】などの小動物から木の実などの植物質のもの、パンやミールワームなど人が与えるもの、果てはごみ箱漁りなどもするという“悪食”の鳥〔本ブログ:2016年2月17日付〕。また、人家での営巣も知られています〔本ブログ:2015年5月13日付・当会広報誌『都市鳥ニュース』№31〕。さらに、給餌などをすると人なれし、餌を要求するような態度も取ります〔本ブログ:2015年5月14日付〕。 

“見た目と囀りが美しい”新参者の都市鳥で、繁殖記録も増えています【写真下:巣立ちビ】。ただ観察を続けていると“ちょっと心配な面”もある“海辺生まれ”の鳥ですので、今後の都市生態系にどんな影響があるか興味深いところです。〔都市鳥研究会・川内博〕







2023年11月11日土曜日

2023年秋・東京都心の緑島を通過していく鳥たち

今夏の酷暑のせいか、私がホームグラウンドとしているJR山手線内側の東京都心のフィールドでは、今年の「秋の渡り」において例年と比較して幾つかの異変が感じられました。

先ずは渡りの開始時期がずれ込んだことです。例年であれば8月中旬位からツツドリ【写真1】・ムシクイ類・キビタキ・サンコウチョウなどが順次観察されるのですが、今季は8月中の観察は皆無でした。9月に入るとともにムシクイ類が通過しはじめ、中旬にはツツドリ・キビタキ・サンコウチョウなどが通過、9月29日にはヤブサメ【写真2】も見られました。これを種別に纏めてみると、ムシクイ類では10日、トケン類では20日、サンコウチョウでは20日、キビタキ・ヤブサメは1カ月の遅れが確認されました。また、キビタキ・コサメビタキ・エゾビタキ・サンコウチョウなどのヒタキ系の通過個体数は減少が感じられました。  

渡りの中盤以降では、逆に例年よりも早く観察されるケースが見られました。例年は10月下旬頃から順次観察される冬鳥ですが、10月11日にはアオジがみられ、17日にはジョウビタキ、27日にはトラツグミが観察されました。アオジ・ジョウビタキにおいては約半月、トラツグミでは1カ月ほど早い飛来でした。

今夏のような高温が繰り返すような場合、鳥類への影響は計り知れないダメージとなるかも知れず、全国的な調査が待たれるところです。〔井上裕由〕

写真1 ツツドリ

写真1 ヤブサメ