2021年5月7日金曜日

都市環境下での都市鳥たちの繁殖・カワセミの営巣地2例

  かつては“幻の”ということばがついていたカワセミが、全国的に興隆している昨今です。その一因に人為的な助けが大きくなっています。とくに都市環境ではその度合いが増しています。

 1980年代以降の東京都内でのカワセミの営巣地を見ていると、自然の崖地での営巣は皆無に近く、ほとんどは「人工の崖地」でとなっています。人工崖地のつくりは時代とともに変化が見られ、当初は水辺に土を盛り、壁面を削り垂直な土壁をつくり、カワセミが自力で横穴を掘って巣穴をつくるタイプが主流でした。しかし、その後、河川改修などの際に、擁壁に穴を開けたコンクリートブロックを用いて、営巣ができるというような形が登場し、全国的に広まりました。その後さらに“進化”し、擁壁の穴の奥の育児室となる部分に、最適な土を入れた箱型の「セット巣箱型」が流行っているようです。

  「人工崖地」は、設置当初の利用度合いは高いものの、数年たつと放棄されることが多いのが現状です。理由はさまざまですが、結論的には“巣立ち率が低い”からだと考えられます。営巣しても次代が育たなければ繁殖の意味がありません。

  今春、東京下町の2つの事例を見てきました。1つは古典的な土盛りタイプで、10年前くらいに造成され、数年間は連続して巣立ちが見られましたが、ヘビに襲われ放棄。昨年穴を塞ぎ、新しく壁面を切り出したところで復活し、今年は元気に多数の穴を掘ったりして【写真1】元気に繁殖活動に励んでいましたが、残念なことに、今春もヘビに襲われ全滅したとのことです。

 もう1つは、川岸沿いの人工島に造られたカワセミ用の人工崖。こちらは崖の壁面が鉄板になっていて、ヘビ対策はできているようです。そのためか、巣穴のひとつには、多分無事に巣立ったと思われる“証拠”が残っていました。【写真2】

 東京のカワセミは、東京湾から50㎞も離れた奥多摩近くまで行かないと、その姿は見られないという状況に追い込まれましたが、近年は東京湾の間際まで営巣が見られる状況になっています。今後もその実態を追っていきたいと思っています。(川内 博)


【写真1】土盛りタイプの人工崖地



【写真2】鉄板製の人工壁面