2026年8月31日月曜日

新刊紹介・3 タカ類5種の生態と生息状況の推移 埼玉県中央部の丘陵地の50年・1970~ 2019調査記録 比企ワシタカ研究会〔まつやま書房・2026年6月発行・1800円 +税〕

比企丘陵(ひききゅうりょう)は、埼玉県のほぼ中央部に位置し、標高は100メートル前後。植生はコナラやクヌギが中心で、人家付近にはスギ・ヒノキも植えられ、谷津田やため池が点在する、関東地方の典型的な里山といえる場所です。

「比企ワシタカ研究会」は1994年に結成され、東松山市を中心とした20×20㎞・400?を調査の対象として活動している団体です。会員は結成以前から調査・観察していて、本書のサブタイトルの「埼玉県中央部の丘陵地の50年・1970~2019調査記録」にあるように、半世紀における調査・研究の成果をまとめたものです。  

この半世紀における猛禽類の生息・分布状況の変化はだれも予想しなかった事態です。かつては“幻の鷹”といわれ、全国で数か所しかその繁殖記録がなかったツミが、交通量の多い道路沿いの街路樹で子育てしている様子をテレビ番組で視たとき、また、“自然環境のシンボル”といわれていたオオタカの繁殖を、人為的に造られた明治神宮の杜で発見したときの驚きは今も印象に残っています。

ツミは関東地方の各所でその鳴き声を聞き、本会事務所のある埼玉県南部のマンション街の緑地でも4年連続繁殖しています。また、オオタカは東京23区の半分以上の13区で営巣が記録される状況となっています。  

本書はツミやオオタカが23区へ進出する以前の関東地方の状況を知るうえで、重要な文献となるでしょう。またかつては冬鳥だったノスリの動きも興味が持たれます。

とくに、東京近郊の過去の状況を知らない人にとっては「繁殖状況の推移」の章でのサシバとハチクマが当地からの激減の実態、逆にオオタカやツミの隆盛状況などを知ることができ、一連のこの流れの検証や考察する上で貴重な記録や情報を得ることができます。  

“猛禽類は食物連鎖の最上位”という定説は理解できますが、現実に起きている東京近郊でのオオタカ・ツミの実態をみるとき、その「説明」に苦慮している状況です。本書は難問解決の糸口を得る一助になるかもしれません。全国的に見られている“猛禽類の変化”を考えるひとつの資料として手元に置かれることをお勧めします。〔川内 博〕