2016年6月28日火曜日

自然教育園3年間の記録がまとまりました

201211月から201510月までの丸3年、月1回のセンサス調査結果がまとまり、この6月に発刊された『自然教育園報告 47号』に所収されました。
自然教育園は、東京都心の港区白金台に、いまもなお緑の深い森を形成し、皇居や明治神宮と共に、「緑島(りょくとう)」を形成しています〔写真1〕。
面積は約20haで、戦後宮内庁から文部省に移管され、1949(昭和24)年、「国立自然教育園」として一般公開されるとともに、同園に常駐する技官によって、継続的に生物の記録が残されています。
しかし、ここのところ鳥の記録が途絶えていたため、当会と日本野鳥の会東京で「野鳥調査会」をつくり、月1回のセンサス調査やシジュウカラのテリトリー調査、繁殖調査などを実施しました。〔グラフ〕
この3年間で、大きな変化は「エナガの定着と繁殖」です。都内に分布を広げつつあるエナガが、ついに都心のこの緑島でも繁殖が記録され、巣も発見されました。〔写真2〕

その報告は、下記のWebで見ることができます。ぜひアクセスしてみてください。



写真1 一般立ち入り禁止区域も踏査

写真 笹藪に営巣したエナガの巣


2016年6月10日金曜日

「都市鳥」がテーマのイギリス鳥学会大会に参加してきました

2016457日に、イギリス・レスター大学で開催された「URBAN BIRDS Pressures, Processes and Consequences」をテーマにしたイギリス鳥学会年次大会(BOU2016)に参加して、たいへん刺激を受けて来きました。

 イギリス鳥学会の年次大会(春)・研究集会(秋)は、日本鳥学会大会とは異なり、毎回テーマが決まっており、テーマに沿った発表しかありません。発表のない研究者も年次大会に参加していましたが、大会中に総会もあったものの、参加者は120名程度と日本鳥学会大会に比べると少なかったのが印象的でした(ちなみに2015年末時点の学会員数は1,194名で日本鳥学会と同規模)。しかし、1つの口頭発表会場で皆が全ての講演を聞き、三度の食事も食堂で皆一堂に会するアットホームな雰囲気でした。なお、イギリス国外からの参加者が4割程度あり、全ての大陸(南極大陸を除く)から参加者がある、国際的に注目される会議になったと主催者発表がありました。アジアからはシンガポール2名(?)と私(日本)のおそらく計3名だと思われます。

 口頭発表は28件、トーキング・ポスターが6件、ポスター発表が24件でした。プレナリー講演はアメリカから招待されたカラス研究でも有名なワシントン大学のProf. John Marzluff氏でした。私は名古屋におけるコゲラとキビタキの都市緑地への進出についてポスター発表をしてきました。詳細は近く『都市鳥ニュース』で報告したいと思っていますが、端的に言えば、都市の鳥類に関して適応行動だけでなく生理学・遺伝学の面からの研究も進んできているということと、特に都市では市民を巻き込んだ調査(アメリカではNeighborhood Nestwatch,イギリスではBTOの行うGarden BirdWatchなど)が成果を上げているということを強く感じました。

 なお,イギリス鳥学会のウェブサイトではプログラムと要旨が公開されています(http://www.bou.org.uk/conferences/urban-birds-delegate-pack.pdf)。また、今後、もう少し長い原稿も掲載されるプロシーディングスやIbis誌の特集号が公開される予定です。また,ツイッターでハッシュタグ”#BOU2016”を検索すると、学会公式アカウントによる画像付きの大会の実況中継や参加者の声を拾うことができます。更に大会発表とは異なりますが、Ibis誌では大会に合わせ「都市鳥」を特集した”Virtual Issue”がウェブ公開されています(http://onlinelibrary.wiley.com/journal/10.1111/%28ISSN%291474-919X/homepage/urban_birds__pressures__processes_and_consequences_virtual_issue.htm?campaign=wlytk-42459.2149652778)。これは、 Ibis誌と同じワイリー社から出版されている他雑誌に掲載された近年の「都市鳥」を扱った論文をまとめて、期間限定で無料公開するというものです。関心のある方は是非覗いてみてください。(名城大学・橋本啓史)


〔写真1〕口頭発表会場の様子。
ちなみに右端がオックスフォード大学EGI名誉研究員であるProf. Chris Perrins 氏で、
大会中に Union Medal が授与された。

写真2〕発表会場となったレスター大学オードビー・キャンパスにある
スタンフォード・コート。

2016年5月26日木曜日

東京・明治神宮の森でキビタキが繁殖

明治神宮は、いまから約95年前に、明治天皇を祀る神社として造成された森です。当初からの基本方針として、落葉・落枝も林床に戻すということで、当初の計画より早く“太古の森”といった雰囲気をもつ緑地となっています。
ここでは、1970(昭和45)年半ば以降、森林性の鳥のヒヨドリ・コゲラ・オオタカ・エナガが次々と定着し繁殖するようになっています。そして20112013年にかけて、40年ぶりに実施された「第二次明治神宮境内総合調査」では、キビタキが複数生息し〔写真:亀井ユリ子さん提供〕、餌をくわえ、巣と思われる場所に飛び込み、餌なしで飛び立つのを観察しました。残念ながら、巣の確認はできませんでしたが、昨年6月中旬に苑内をまわり、5か所で雄の囀りを確認しました。今年も5月下旬に、やはり5か所で確認しました。
 最近になって繁殖を始めたのかというと、実は197172(昭和4647)年に実施された第1回の総合調査の時も、「御苑で繁殖したと思われるヒナを連れた親子」が観察されています。しかし、その後も日本野鳥の会東京による探鳥会が毎月実施されていますが、繁殖の兆候を示すような記録がありません。
 近年、平地林でのキビタキの繁殖例が増えています。ぜひ観察例をご報告ください。(川内 博)






2016年4月23日土曜日

吉野山にもイソヒヨドリが~観桜ツアーでの観察から

和歌山県の高野山にイソヒヨドリがという話を、昨秋本ブログで紹介しました(1018日付)が、今春の478日、吉野山と高野山を巡る観桜ツアー中に、両山でイソヒヨドリに出会いました。
奈良の吉野山は、ちょうど「中の千本」が満開で、折からの雨があがり、谷沿いに霧が立ち込め、幻想的な雰囲気のなか〔写真1〕、参道沿いの建物から、イソヒヨドリの囀りが2か所で響き、姿も確認できました。参道沿いは木造家屋が続いていて、全体的にも、とくに岩山の印象はありませんでした。
翌朝5時、高野山の宿坊の窓のすぐそばで鳴くイソヒヨドリの大きな声で目覚めました。同じ個体と思われる雄が、巨木のてっぺんで囀っていました〔写真2〕。昨秋その姿を確認した壇上伽藍の根本大塔に行くと、そこでも1羽の雄が塔の一番高い相輪で。また、商店街の続く通りの屋根や駐車場でもさえずりを聞き、計4か所で確認しました。奥の院も歩きましたが、さすがに苔むした墓石が並ぶ、巨木の森のなかではその声は聞こえませんでした。

今回の観察から感じたことは、内陸部進出が進んでいる西日本の山はどこもチェックが必要ということと、比較のために従来の「磯」での生活ぶりをもっと知りたいということでした。ぜひ海岸沿いでの生態調査にもご協力ください。(川内 博)

〔写真1〕満開の吉野「中の千本桜」のなかで、イソヒヨドリが囀る

〔写真2〕高野山・巨木のてっぺんで囀るイソヒヨドリの雄


2016年4月14日木曜日

都市鳥ニュースNo20号が発行されました

都市鳥ニュースNo.20号が発行されました。
今回は、秋の日本鳥学会大会・自由集会のテーマに予定しています「カラス」を特集しました。
東京の“カラス問題”は改善が見られ、最近はマスコミの話題にもなりませんが、逆に、全国各地の都市では、同質の問題が頻発しているようです。
研究会として全国展開をしています「イソヒヨドリの内陸部進出」の方は、今年から現地調査が始まった「全国鳥類繁殖分布調査」とタイアップして、始動しています。

目次

読み物:札幌のカラスについて 中村眞樹子    2-3
読み物:ミヤマガラス~あらたなカラス問題の発生~ 柴田佳秀  3-4
情報募集:カラスの枝落とし行動のひろがり 和田岳  5-7
研究テーマ:イソヒヨドリはなぜ内陸部に進出するのか 川内博 8-12
ブログ:この現象の奥に何かがあるのでは? 
ブログ:関西地方のイソヒヨドリ・数日間行脚して
ブログ:ゴミ箱のイソヒヨドリ・宮古島と東京での観察
報告:第7回東京都心におけるカラスの集団塒の個体数調査(速報)
日本鳥学会2016年度大会・自由集会のご案内
会からお知らせ 
投稿のお願い
入会のご案内・編集後記 







2016年3月21日月曜日

餌付く野鳥たち・・・ムクドリとカイツブリ

東京23区内の公園を歩いていて、以前にも増して、ヒトを見ると近づいてくる野鳥たちが目立つと感じるのですが、いかがでしょうか。以前からカモやユリカモメではよく目にした行動ですが、最近、ムクドリとカイツブリでそんな姿を目にしました。

ムクドリが「生ごみ漁り」をする姿は、2000年頃から見られていますが、315日、都立光が丘公園でパンくずを捲いている親父さんの周りに、ムクドリ10羽、スズメ20羽、ヒヨドリ1羽が集まっていました〔写真1〕。ムクドリが給餌に集まる姿は、今まであまり見たことがないように思うのですが、観察不足でしょうか。

翌日、練馬区立武蔵関公園の池でのカモに給餌風景を見ていたら、給餌している人の足元までカイツブリが近づきます。なんでと思いながら見ていると、手から何かをもらっていました。聞いてみると魚の切り身とのこと〔写真2〕。

一般の人の餌付けとともに、野鳥カメラマンが、いろいろな鳥に餌付けしていますが、この風潮はどんなことになるのか、興味をもってウオッチングしているところです。(川内 博)

(写真1)

(写真2)

2016年2月22日月曜日

東京新聞夕刊にカラス調査の記事が掲載されました

東京新聞2016年2月22日付け夕刊の一面に、当会が昨年末実施したカラス個体数調査についての記事が掲載されました。
紙面を掲載するにあたり許可をいただきました。

2016年2月17日水曜日

ごみ箱のイソヒヨドリ・宮古島と東京での観察

今年から、イソヒヨドリの全国調査を本格的に始めています。イソヒヨドリはわが国では名前の通り「磯」に執着して生息し、沖縄から北海道の海岸に分布していることが知られています。しかし、そんな鳥が、いま海辺の街だけでなく、海から数十㎞、数百㎞離れた山中でもその姿が頻繁に見られるようになっています。「Why?」ということで、現在具体的な観察情報を広く収集しています。今回はそんな事例を2つ。
ひとつは、イソヒヨドリが“島中”にいるという沖縄・宮古島を初めて訪れ、24日に、中心地の平良(ひらら)の郊外から街なかを探索してみました。情報通り、ショッピングモール、サトウキビ畑、海岸線、公園、学校、官庁通り、商店街といろいろな環境を歩くと、屋上、電線、地面と次々と姿を現します。小雨もふる午前8時~13時までの5時間で、雄13羽・雌10羽の計23羽を確認。そんな中で、久貝地区にある久松中学校のそばを通ると美しいさえずりが聞こえてきました。声だけの確認かと思いながら通り過ぎようとしたとき、ごみ置き場から雄1羽が塀の上に飛び上がってきました〔写真1〕。生ごみを食べていたようです。ゴミとイソヒヨドリといえば、121日、東京・江戸川区の葛西臨海公園を歩いたとき、ごみ箱に出入りするイソヒヨドリの雌を観察しました〔写真2〕。
イソヒヨドリの食べ物のレパートリーは広く、岩場や草地、田んぼなどでの虫類の採食のほか、給餌台や路上でパン・ビスケット類を食べたり、酔っぱらいのげろなども口にします。ごみ箱での餌探しもよく見かける鳥です。そんな食性の幅が広いのも、彼らの分布拡大のひとつと思えますが、「いまなぜ?」というと、現時点では説明ができません。

 ぜひ、具体的な観察情報を、写真・ビデオなどもまじえて、本会へご提供ください。(川内 博)

(写真1)沖縄・宮古島の学校のごみ置き場にいた雄

(写真2)東京・江戸川区の公園の
ごみ箱で出入りする雌

2016年1月28日木曜日

都市鳥研究会誌 URBAN BIRDS Vol.32(通巻第73号)が発行されました。

目次
巻頭言●ヒヨドリを数える(大野正男)

論文
●東京駅を中心とした3㎞四方におけるツバメHirundo rusticaの繁殖状況
―第7回 2015年調査結果―
(川内 博、石井秀夫、金子凱彦、唐沢孝一、川内桂子、越川重治、柴田佳秀)
●成田市におけるツバメの繁殖数の大幅な減少(唐沢孝一)
●伊豆諸島新島におけるツバメ(Hirundo rustica)の採餌環境変化
―繁殖期盛期と繁殖期終期の比較―(山川航平)
短報
●人家から離れて繁殖したツバメ(唐沢孝一・水村春香)
●ツバメの庭木や街路樹などで形成される小規模ねぐらについて(越川重治)
●カラス類の親鳥が長期間にわたりヒナ(幼鳥)へ給餌した観察事例について(中村眞樹子)
●人工構造物に集団ねぐらを形成するスズメ(粕谷和夫・渡辺敬明) 
●住宅地に隣接する池で越冬するコガモの月別羽数変動(粕谷和夫、小張義雄、小張昌子)
会記
●本会主催・共催の集会報告
 1.ツミに関するシンポジウム
 2.イソヒヨドリに関する集会
●2015年の発行・発信物・お知らせ 


2016年1月21日木曜日

東武東上線沿線のムクドリの「駅前ねぐら」・第2報

昨年814日にアップした、「東武東上線沿線のムクドリの駅前集団ねぐら」の続報です。東京・池袋駅から北上し、埼玉県に入って2つ目の急行停車駅、朝霞台駅(JR北朝霞駅との乗換え駅)、3つ目の志木駅、4つ目のふじみ野駅、そして5つ目の川越駅と、現在、急行電車の停車駅前だけで見つかっているムクドリの集団ねぐら。その後のようすをお知らせします。
一般に、関東地方の駅前のムクドリねぐらは、ケヤキ並木に形成することが多く、落葉とともに姿を消し、初冬までにはなくなります。
 東上線沿線では、川越駅前の場合、1129日に立ち寄った際にねぐらがなくなったことに気づきました。川越駅より都心部に近いふじみ野駅は、1127日には4000羽前後がまだ落葉していないケヤキの並木に集まっていて、さらに都心部に近い志木駅前にも500羽前後がねぐらを取っていました。さらに126日にも両駅前にねぐらが残っていましたが、1229日には、志木駅より北に位置するねぐらは全部なくなっていました。しかし、池袋に一番近い朝霞台駅前のねぐらは、落葉後は電線にねぐら場所を移し、3000羽程度が居残っていました〔写真〕。一昨年にも冬中ねぐらがありましたので、今冬もこの状態が続く可能性があり、調査は継続せざるを得ない状態です。
それにしても、「急行停車駅」前の街づくりはさまざまで、共通性があるとは思えません。「乗降客数」が問題であれば、1つ目の急行停車駅の和光市駅が、東上線では池袋駅につぐ多さです。しかし、ここにはムクドリのねぐらはできたことがありません。「ムクドリはなぜ駅前にねぐらをつくるのか」相変わらず“謎”です。      
〔川内 博・桂子〕
 ※ 本調査の範囲は、池袋駅~川越駅まで。ムクドリの数は推定です。 


朝霞台駅のムクドリ塒

2015年12月27日日曜日

「第7回 東京都心におけるカラスの集団塒の個体数調査(速報)」

  都市鳥研究会では30年前の1985年より5年ごとに都心のカラスの個体数を調査してきました。夕方、就眠のために集団塒に集まってくる羽数をカウントしたものです。20151219()に第7回カラス調査を山手線内の3カ所の集団塒~豊島ケ岡墓地(文京区)、明治神宮(渋谷区)、自然教育園(港区)~で実施し、合計4808羽をカウントしました。この羽数は、ピーク時(2000年)18664羽の約1/4であり、74.2%の減少となりました。また、30年前の6727羽の水準を初めて下回り、都心のカラスの減少傾向がみえてきました。

以下は、第7回の調査結果です。

(1)各集団塒でのカウント数と3カ所の合計羽数は次の通りです。
  豊島ケ岡墓地 1607羽、明治神宮 2353羽、 自然教育園 848合計4808

(2)3カ所の合計羽数は、第6回調査(2010)に比べ37.8%の減少となりました。

  1は、「2010年と2015年の増減」を比較したものです。いずれの集団塒でも個体数が20%以上減少しました。中でも自然教育園は60.9%の激減でした。

1. 2010年と比較した個体数の増減


1. 都心カ所のカラスの集団塒における個体数変化

(3)1は、第1回調査(1985)から今回の第7回調査(2015)までの30年間におけるカラスの個体数変化を示したものです。

1985年から2000年にかけて急増しました。
2000年に個体数はピークに達しました。
2000年以降は減少に転じ、今回の調査では30年前(1985)の個体数を初めて下回りました。

(4) 7回調査には合計76名が参加しました。
76の内訳は、栃木県(1)、埼玉線(4)、千葉県(28)、東京都(30)、神奈川県(11)、静岡県(1)、愛知県(1)でした。
今後、調査結果を詳しく精査し、塒への出入りの方位や減少原因等を分析するなどして201612月発行予定の都市鳥研究会会報に報告する予定です。

 2015年12月26日(文責) 唐沢孝一、越川重治、金子凱彦